(05/1/3)
12月28日 年間の新件の割当は70件(但し、事件によっては相手方が複数あるので事実上分離して期日指定しているものがあり、私はそれは2件とカウントしているので、実際の統計としてはそれ以下となる。)、月に6件ほどの割当ペースであった。 事件の種類としては、ノ号事件(一般)が41件、ユ号事件(宅地建物)が15件、メ号事件(商事)が4件、交通事件(物損のみを除く)が8件、公害事件が2件となっている。興味深い事件としては、医療過誤、証券取引、自動車や脚立の製造物責任、中高層マンション建築問題(周辺住民が申し立てる損害賠償や、自治会・町内会が申立人となる管理請求事件もあった)、都市公園や小学校校庭の騒音問題、銀行の貸し手責任問題、風致地区条例違反の是正申立事件等があった。要は、訴訟での解決になじまないような、時代の最先端を行く事件も多数担当させてもらった。 そのうち54件が終結し、16件が未済となっている。 次に、成立事件の成立までに要した期日数を見ると、第1回期日で成立したものが5件、第2回が9件、第3回が3件、第4回が6件、第5回が2件となっている。私自身感慨深く思うのは、成立事件のうち半分以上が第2回期日までに成立していることもさることながら、4回、5回と期日を重ねることで成立している事件が何件もあるということである。期日を重ねているのは、決してだらだら調停を進行させていたからではなく、幾度ももうだめかと思われながら、ねばり強く解決策を模索し、一方当事者が調停案に乗ってきてくれるのを待っていた事件である。その意味では、少しでも諦めたり、手を抜いていたら何時でも不調となった事件を、ひたすら当事者の言い分を聞き、提案と説得を繰り返したことにより成立にまで持ち込んだ。回数を重ねた事件はどの事件を見ても、必ず、当事者双方に大幅な譲歩をお願いしている。100万円以上の建物建築被害請求を求めている事件で5万円の解決金で納得してもらったり、50万円の損害賠償請求を求めている医療関係事件で総額25万の月5000円の分割支払でまとめた事件は、特に印象深い。いずれも申立人の気持ちはよく分かりながらも、訴訟では極めて困難であることが予想され、そのため相手方の対応も堅い中での、ぎりぎりの解決策の模索であった。 京都という土地柄は、和解の成立率が低いと言われている。実際に、調停事件の統計を見ても、成立率は全国ワースト2位となっている。しかし、私の調停官としての経験によれば、調停主任がちゃんと事件に立ち会えれば、京都という土地柄においても、調停制度は非常に効率的で有効な紛争解決手段であることが実証されているということができよう。 代理人のつかない本人事件の方が成立率が高く、要は、当事者、特に代理人(弁護士)が紛争解決の意欲を持つかどうかが調停成立のキーポイントとなっている。本人事件の場合は、調停が不調になって訴訟に移行した場合の損得を説明すれば、たいていの場合は調停が成立している(別に弁護士費用がかかるとか言って訴訟をあきらめさせている訳ではないが。)。 それに対して、代理人がついているときは、代理人としての事件の判断や訴訟の帰趨の見込みがあり、さっさと調停を打ち切られる傾向があるように思う。しかし、私自身の代理人経験を振り返っても思うことだが、代理人の場合は、一方当事者の言い分のみを聞き、一方当事者の利益を守る視点からのみ物事を判断し、しかも(これが最も重要だが)相手方の言い分を直接聞いて吟味する機会がないために、代理人の判断が必ずしも正しいとは思われない場合がある。調停を打ち切る前に、調停委員会の見解(別に調停委員会の結論が訴訟になっても維持されるとは思わないが)を聴いて、代理人の主張立証の弱点を再考してはどうだろうか。 逆に、代理人が早期紛争解決こそが当事者の利益になると考えて行動されるときは、調停委員会が間に入ることにより、極めて速やかに、妥当な結論に至っている(証券外務員が顧客の保護預かり証券を担保差入れして無断で顧客名義で借入をした事件においても、第3回期日で、顧客が一定の金銭を解決金として支払うことで保護預かり証券を返還するという調停が成立した。また、プレス機に誤って親指を挟まれ傷害を受けた元従業員からの損害賠償申立事件でも、安全配慮義務違反の有無、過失相殺、損害額など争点が多数あったにもかかわらず、第4回期日で調停が成立した。)。こうやって振り返ってみると、自分が代理人となって訴訟を遂行している事件においても、どうして私が調停官として担当している事件のように速やかに解決しないのか、どうして事件が1年も2年もかかるのかと訝しく、かつもどかしく思えるものが多数ある。 |