(05/1/3)

非常勤裁判官日誌[


平成16年11月26日 第23回近畿弁護士会連合会人権擁護大会における司法問題意見交換会での私の発言

私は現在、京都簡易裁判所で民事調停官をしております。ところで、私は十数年前、裁判官になろうとして新任拒否をされたものです。その年、ちょうど下村・花田両裁判官が再任を拒否されるという事件がありました。その当時も、再任拒否、新任拒否ともに不利益処分だから、告知・聴聞の機会の保障が不可欠であるという議論をしておりました。本日の議論を聞いておりますと、未だに、本年なされた裁判官の再任拒否で同じ議論がなされています。その点では、司法改革は何も進んでいない。しかし、本年再び再任拒否がなされたとき、今度は私は非常勤裁判官に採用されました。この点では、司法改革が少しは前進したと言えるでしょう(笑)。

 さて、京都簡易裁判所では現在、火水木と一人ずつ民事調停官が朝9時半から夕方5時まで執務して事件を担当しています。家裁でも家事調停官が1名執務しています。もし来年非常勤裁判官100人体制ということになれば、京都では全部で6名が執務することになりますが、それでも本庁にわずか6名ですから、非常に微々たる勢力です。しかし、裁判所の中では非常に楽しく仕事をさせていただいていますので、是非とも後に大勢の方が続いていただきたいと思います。

 調停では、調停委員とのチームワークが大切だと言われます。私自身調停委員の経験がありませんので、うまくできているかどうか自信はありません。とりわけ、私が十数年前新任拒否されたときの理由の一つが「協調性がない」ということでしたから、うまくできているのでしょうか(笑)。しかし、私が担当した事件では、成立率が半分程度ですから、それなりに裁判所にも貢献しているのではないかと思っています。

 調停官は、給料は少ないと言われていますが、それでも調停委員の報酬よりも高額ですし、給与所得で所得控除が大きいことを考えると、実質的には割高の報酬をもらえていると思います。ですので、是非とも後に続いてください。そうでないと、私の任期も来年末までですが、後に続く方がいらっしゃらないと、私が再任しなければならないことになり、そのとき今度は再任拒否なんていうことになるのも嫌ですから(笑)。


 さて、これからの非常勤裁判官の課題ということですが、先ほど明賀先生は「(非常勤裁判官の実現は)大いなる前進」と評価されましたが、実はこの調停官制度というのは、昭和30年代、40年代に、最高裁の方から既に「調停主任官」として提案された制度であって、当時の日弁連がそれに反対したというものです。ようやく今それを実現しただけですから、「前進」でも何でもない。むしろ、これから調停官を非常勤裁判官に育てていかなければならりません。

 実は、「法律の広場」という雑誌の11月号に、私の経験談を書いておきました。これは、北野先生が小川達雄先生と一緒になって編集部からとってきた原稿の枠なのですが、調停官は弁護士との共同執筆はだめ、運動論を書くのはまかりならん、体験談・報告のみにするようにという指示が編集部にあったそうで、北野先生の原稿はなくなりました。それで、「調停官から非常勤裁判官へ」というのも、運動論としてはだめだと言いうことでしたので、私はこんな思いで執務している、なんて書いておきました。

 調停官を非常勤裁判官にするためには、今は地家裁本庁の併設簡裁に調停官がいますが、裁判官はノンキャリアの方ですので、キャリア裁判官への影響というのも全くありませんから、一つは、司法委員制度を地裁にも導入するということが考えられるのではないか。司法委員の役割は和解勧試と法廷立会ですが、和解勧試といっても、昔の弁論兼和解のような形で事実上の弁論はできるし、法廷立会をして裁判官に意見を言うこともできるわけです。

 もう一つは、これは私の希望ですが、地家裁本庁ではなく、地家裁支部や支部すらもないところの独立簡裁で執務したい。私は、京都に来る前は福井にいましたが、やはり地方にいると、ちゃんとした調停委員がほしい、また裁判官が多忙で成立時にすら立会ができないために次回に続行されると言う経験もあり、是非とも支部や独立簡裁で調停官を実現したいと思っています。


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