本日、福井地方裁判所において、市民オンブズマン福井が提訴した福井県カラ出張17億円返還訴訟が却下されました。私たちはこれに対して直ちに名古屋高裁金沢支部に控訴しました。
1,福井県カラ出張17億円返還訴訟とは?
福井県庁では、平成6年度から9年12月までの間に、21億6000万円ものカラ出張が行われていました。しかし、県は、このうち4億6800万円(22%)を管理職などでつくる旅費返還会から返還させただけで、残りの17億円もの巨額のお金は、「公務遂行上の経費」に充てたという理由で、返還を求めないということにしました。「公務遂行上の経費」に充てたと言いますが、何を買ったのか、何に使ったのかは、闇の中です。肝心の栗田知事は、6ヶ月間の50%減給(給料は月130万円)処分を受けただけで、県に対しては減給分たったの390万円を返還しただけです。そこで、福井県庁の責任者である栗田知事個人に対して、その返還を求めて住民訴訟を提起しました。
2,却下って?どうして却下なの?
却下というのは、いわゆる門前払い判決のことです。福井地裁は、住民監査請求の対象が特定できていない等という理由で、カラ出張の適否についての中身の審理に入ることなく、訴訟の要件を満たしていないという理由で、門前払いの判決をしました。
でも、考えてみて下さい。県では、旅費調査委員会による全庁調査を行い、その結果1円単位で「事務処理上不適切な支出」、「公務遂行上の経費に充てた額」、「不適正な支出」を特定しているのです。ということは、県にはどれがカラ出張なのかは明らかに特定されているということです。
ところが、県は、旅費調査委員会の調査結果の裏付け資料の公開すら拒否しました。県は、カラ出張があったということは認めても、その内容は県民に一切知らせようとせず、その責任をとろうともしないのです。
今回の判決は、裁判所もその尻馬に乗ったということです。カラ出張の実体について栗田知事に釈明を求めることもしない、その審理にも入ろうともしないのでは、何のための裁判所なのか、憲法の番人としての職責を放棄するものではないかと言わざるを得ません。
3,カラ出張の実態―東京事務所、農林水産部農村整備課
東京事務所では、驚くことに、事務所職員のうち四人以上が福井へ出張という日がざらであり、しかも一人あたり月に3〜5回も、事務連絡の用という名目で、福井への出張を繰り返しています。その中には、自動車運転手や事務所補助員も含まれています。一人あたりの出張回数は年間2、30回で、延べ日数に換算すると5〜70日にも及んでいます。こんなに多くの職員が頻繁に福井に帰って、東京事務所としての職務を遂行できるのでしょうか。東京事務所の旅費予算額が平成8年度1645万円、平成9年度1470万円なのに対し、カラ出張が発覚した後の平成10年度は、その半分以下の700万円であったこともカラ出張の証拠です!
次は農村整備課です。ここでも、ほぼ毎日のように、複数名の職員が東京、金沢に出張しています。旅費支出額のうち、東京出張の占める割合は71%、金沢出張の占める割合は14%です。東京都には農林水産省本省が、金沢には農林水産省北陸農政局がそれぞれ存在するので、そこでの用務のための出張であると推測されますが、農水省での用務のためであれば北陸農政局への出張で十分ではないでしょうか。逆に、本省にこれほど頻繁に出張するのであれば、北陸農政局へ出張する必要はないと思われます。
はたしてどの支出が本物で、どれがカラだったのでしょうか。真実はすべて闇の中です。
4,今カラ出張は?
栗田知事は、カラ出張の実態は一切ほおかむりをしたまま、カラ出張に含まれていた国の補助金4億1000万円とこれに対する加算金(利息)1億4000万円の合計5億5000万円を国に返還する6月補正予算を組みました。この中には、「公務遂行上の経費に充てられた分」も含まれていますし、加算金の支払は明らかに県民の負担となっています。どうして県職員が違法に使った分を県民の税金で返さなければならないのでしょうか。栗田知事の説明は、「やむを得ない」の一言です。これで納得できますか!
しかも、県議会でも、「早急に国に返還すべき。これ以上釈明をしてもらうつもりはない」「予算上の縛りが強くて、不適切な使用になるのも仕方がない」(5日の総務教育常任委員会)などと県のあり方を追認しているだけです。それもそのはず、5日の常任委員会終了後、議員各位はコンパニオンをあげて県理事者と懇親会をしているのですから、同じ穴の狢(むじな)です。
知事も議員も、選挙が終わるまではカラ出張の国庫補助金返還の話はおくびにも出さず、選挙が終わったとたん、カラ出張の尻拭いだけを県民に押しつけて一丁上がりを決め込んでいるのです。このようなことが許せますか!このままでは、きっとこれまでの繰り返しです。
カラ出張用語辞典
その中に「公務遂行上の経費に充てた」ものと「不適正な支出」がある。 「公務遂行上の経費に充てた」=パソコン購入等の経費。しかし、台帳もないから、私物になっていても分からない。
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