平成ウソップ物語第1話

 

<太郎>

いやあ、不景気なときに景気の良い話きいたぞ。

 

<次郎>

どんな話や、宝くじでも当たった話か?

 

<太郎>

このまえ自主廃業した山一証券の社員に、年末ボーナスが廃業前の2割引で出たそうや。
やっぱり大きい所は違うもんや。

 

<次郎>

そうやなあ、おらっちゃ会社つぶれんでもボーナスでんもんな。

 

<三郎>

わらっちゃダラやなあ、そんな昔の話に感心しとるんかいや。
しかもこの話にはきたない裏話があるがも知らんがだろ!

 

<太郎>

裏話ちゃなんや?

 

<三郎>

そんならゆうて聞かせてやる。
そもそも潰れた会社でボーナス出るっちゅう話は、本当は変な話やがい。
一番始めに、山一が潰れる約1ヶ月前に役員が社員みんなに
「会社の株をみんなで買い支えてほしい。株価が上がって含み益が出来れば苦境を乗り越えられる」
とかゆうて、会社が金を貸して社員に自社株を購入させたんや。

 

<次郎>

社員預金みたいなもんか?

 

<三郎>

その話だけならなんとなく危なそうやから、買ったもんもおったけど、半分躊躇しとった訳や。
実際そのころの山一株ちゅうたら58円前後で、クズ株状態やったさけな。
そこで11月20日の日本経済新聞で富士銀行の小倉専務が
「2000年まで、山一に資金協力する。山一のリストラ案に納得した」
ちゅう談話をだいたがや。

 

<太郎>

そやさけ11月20日の朝から山一の株だけ58円から108円になったがか・・・・。

 

<三郎>

社員らちは二の足ふんどったけど、一斉に会社から借金して株を買ったわい。
それが最後の金曜日のことやぞ。
そして、その社員が買った株ちゃ、山一の役員やら富士銀行のもっとった株ねんぞ!。
役員らちと銀行は20億円も儲けたげ。

 

<次郎>

そんで土曜日に報知新聞のスッパヌキで「山一自主廃業?」やから社員はビックリ仰天か・・・・。

 

<三郎>

株を買った社員は退職金も給料も会社への返済金に取られて、2割引のボーナスだけで正月せんなんげぞ。

 

<太郎、次郎>

おっとろしい話ねんな。
そやけど山一証券ちゃ、ひでえ会社やがいえ。
そんなんちゃ告訴できんがか?

 

<三郎>

行平前会長や参考人招致されたけど、今のところそれどまりや。
まあ役員はインサイダー取引や立証できるかもしれんけど、日本ちゃ経済犯罪に対して甘い国やさけ、どんなになるかなあ。

 

 

作 者
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高峰 朗  square@quartz.ocn.ne.jp
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