かつては輪島のような地方においては、各在所(村)や町内に長老がいて、祭りや葬式などの諸行事を取り仕切っていました。 時代とともに社会も移り変わって、行事においてリーダーシップを発揮できる長老的な存在がなくなってしまったように感じます。 また、情報網の発展により、他地方の習慣が伝えられて、それが新時代の合理的な習慣であるかのように輪島に根づきつつあるようにも感じています。 宗教的なリーダーのいない、移り変わりの激しい世の中で、ご門徒にはどうしてよいやら分からないことが多いようで儀式、とりわけ葬儀に関する質問をよくされるようになりました。 同じことを何度も繰り返し説明するうちに、要請もあって、平成7年、数冊の真宗大谷派の葬儀に関する解説書を参考に、輪島における葬儀の基本的なマニュアルを作成し、ご門徒に配布させていただきました。 どこかで読んだ記憶のあるような文章もあるかと思いますが、どの部分をどの本を参考にさせていただいたか分からなくなっていますので、どうかお許しいただきたく思います。 無断盗用で許しがたいという部分がありましたら、申し訳ございませんがご連絡ください。 |
はじめに−仏事としての葬儀を願って− 愛しき方との別れ。避けることは出来ないと知ってはいても、それは本当に悲しいことです。 私たちの人生は様々であり、それぞれに喜びや悲しみに包まれていますが、それがたと しかし私たちは、なかなか人生をそのように受けとめることが出来ません。 私たち真宗門徒は、人生に起こる様々な問題を大事な縁として念仏の教えに遇うことによって、かけがえのない尊き人生に目覚め、生死の苦悩から解放されて、行き詰まることのない精神生活を求めてきました。 葬儀とは、亡き方の人生に対して心からご苦労さまでしたと手を合わせると同時に、遣った私たち自身が念仏の教えに遇う大切な機縁であるのです。 大切な人との別れはつらいことですが、この深い悲しみを正面から受けとめて、念仏の教えに遇うことこそ、亡き方から願われているのでしょう。 |
通夜・葬儀の準備 ■仏壇(お内仏)のおかざり 自宅であれ、病院であれ、ともかく医師から危篤状態を告げられたら、親族やごく親しい友人に連絡し、臨終にたちあってもらうようにします。 そして、臨終を看とったら、まず仏壇をあけて白のローソクをつけ、香(線香)をたきます。 ■死亡通知
故人の臨終の直後に知らせる人は、ごく身近な家族や親戚にかぎられていましたが、その他の人たちについては、通夜や葬儀の日程が決まってから、故人との生前の関係などを判断して連絡をします。 ●お寺にはできるだけ早く連絡・相談を! 昨今では、自分の寺が遠いなどの理由で、お寺に連絡・相談をされないまま、葬儀が準備されたり、勤められてしまうことがありますが、必ず、お寺に連絡をして葬儀のお願いをし、日程などの打ち合わせをして下さい。 ■遺体の安置と枕飾り 遺体を納棺するまでは「北枕」といって頭を北の方に向けて寝かせます。
手は胸のうえに組ませ、念珠(数珠)を手首にかけ、顔は白さらしの面布でおおいます。
枕元に小さな机をおいてそれに白い布をかけ、向かって右にロウソクたて、中央に香炉、左に花立てという三具足を配置します。
なお、枕飾りに水や一膳飯、枕団子をそなえるのは他宗の作法で、浄土真宗では必要ありません。 ■お寺への連絡と臨終勤行 遺体を安置したら、檀那寺に死亡したことを連絡し、葬儀のお願いにあがります。 臨終勤行とは、その言葉どおり、臨終にあたって長年お仕えしてきた仏壇のご本尊に対して行う最後の感謝のおつとめのことで、枕経ともいいます。
通夜・葬儀は檀那寺で行うということでもかまいません。 ■通夜・葬儀のうちあわせ ●喪主の決定 喪主は遺族の代表者であり、葬儀だけでなく、中陰法要や年忌法要なども責任をもってとり行うことになります。 ●世話人代表の決定 喪主や遺族にかわって、葬儀の進行をすべてとりしきってくれるのが世話人代表です。 死亡届や火葬埋葬許可申請の手つづき(これによって出棺時間が決まります)
以上が打ち合わせをする項目ですが、葬儀を営むうえで大切なことは、規模の大小ではなく、心をこめた葬儀かどうかです。 ●葬儀会場、規模の決定 葬儀会場は、予想される会葬者の人数や、葬儀の規模によって決めるようにします。 ●葬儀日程の決定 ふつう、昼間亡くなったときは、その夜を「仮通夜」にして、翌日の夜に 「通夜」を行います。 よく「友引」の日には葬儀を行っていけないといわれますが、これはまったくの迷信で宗教的な根拠があるわけではありません。
浄土真宗の門徒は、南無阿弥陀仏の念仏のなかに、無常の命がいつまでもあると考え、きょうを大切にすることを忘れている私たちを、呼びさまそうとされている如来の呼び声を聞き、きょう一日を貴重な一日として生きていこうとしています。 とはいっても、これは浄土真宗の門徒の考え方であって、私たちが社会生活を営んでいくためには、いろいろな人とかかわりあっていかなければなりません。
要は、この種の迷信に対する姿勢が大事なのです。 ●各世話役の決定 世話人代表は葬儀をスムーズに運営するために、喪主や遺族と相談して、次のような係を設けて協力してもらいます。
進行−葬儀全般の進行をとりしきる進行係は、世話人代表がなるのが一般的です。
このなかで、会計係はお金を扱うため二人以上が必要で、そのうちの一人は遺族の親族にやってもらうのがいいでしょう。 ■死亡届の提出 人が死亡したときは、死亡届を役所に提出しなければなりません。 ■納棺−お寺から棺掛七条をお借りして準備しておきます。 納棺する前に遺体をぬるま湯で浄めますが、最近ではアルコールを含ませたガーゼや脱脂綿でふき浄めることが多くなっています。 ■浄土真宗では死装束は必要ない
浄土真宗では、いわゆる「死装束」はしません。 ■棺書・棺文
ご住職が棺のなかにいれる書き物のことを棺書、または棺文といいます。 ●法名は仏弟子の名告り
法名は、帰敬式を受け、仏弟子となった人が頂く名前です。 |
通夜とは 通夜とは文字どおり、近親者が夜を徹して安置した遺体を見守り、故人をしのぶということです。 ●焼香の作法
焼香の仕方は、宗派によってちがいがありますし、真宗の各派によっても多少のちがいがありますが、ここでは、大谷派(東本願寺)で行われている作法を紹介することにします。 ■通夜ぶるまい
通夜客をもてなす食事のことを「通夜ぶるまい」といいます。 ■葬儀壇の荘厳
真宗の葬儀の基本的な荘厳は、お香・紙花・蛸燭の三具足です。一膳飯を盛って箸を立てたり、コップ水やお茶、お酒、刃物などを置く必要はありません。 ■(通夜)葬儀当日に用意するもの
(通夜)葬儀当日にかならず忘れてならないものに、次のものがあります。
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葬儀と告別式 葬儀とは亡くなった人を葬送する儀式のことで、告別式は親族や知人が故人にわかれを告げる儀式のことをいいますが、現在ではいっしょに営むのがはとんど一般化しているといっていいでしょう。 ■葬儀式次第
喪主・遺族・近親者は定刻より早めに会場にはいります。 開式の辞−世話人代表(葬儀委員長)、または司会者が行いますが、省略する場合もか ■出 棺
葬儀の式次第が終わったら、出棺です。 ■火葬とお骨拾い 火葬場へつくと、棺はかまどの前に安置され、かまの前の卓上にご本尊を安置し、荘厳する場合は三具足(花は樒、ロウソクは白または銀、打敷、水引は白または銀地)にします。 読経、焼香、点火終了後は控え室にさがり、お骨拾いを待ちます。 かまが開かれてお骨がだされると、火葬場の担当者がお骨を集め、骨箱におさめる手配をしてくれます。 一般的に葬儀のあと「清めの塩」を体にふりかけることがありますが、これは日本古来の宗教観に由来しているようです。 ■還骨のお勤め 遺骨と共に帰宅しましたら、お内仏(仏壇) の近くに用意してあいた中陰壇に遺骨を安置し、その前に三具足を置き、お勤め (還骨勤行) を致します。
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葬儀を終えて ■事務のひきつぎ 葬儀のあいだの雑事や事務は、世話役の人たちが処理してくれていましたが、葬儀のあとのことは遺族がしなければなりません。 ■礼 参 り
葬儀が終わると、翌日、お寺に礼参りにうかがいます。
■お 布 施
布施には法施、財施、無畏施の三つがあります。
お布施の上書きには、いくつかの種類がありますので、ここでは葬儀に的するものをとりあげてみましょう。 ■永代経 (祠堂経) 永代経は永代読経ともいい、お経を永久に伝えていただきたいという願いから、故人を縁として懇志金をおさめ、読経をお願いすることをいいます。 ■あいさつ回り
世話人代表をはじめ、故人の恩人や親しかった人、また近所の家、さらに故人の勤務先などへお礼にうかがいますが、これはお寺への礼参りをすませてからにします。 ■会葬礼状 一般会葬者にたいする礼状は、本来、葬儀のあとに郵送するものでしたが、最近では葬 |
中陰について 中陰とは中間的存在という意味で、中有ともいいます。 ■中陰の数え方 死亡した日 (命日)から数えて七日目を初七日、次の七日目を二七日、以下同じように三七日、四七日、五七日、六七日となり、七七日 (四十九日)を満中陰といいます。 中陰の期間、つまり四十九日が三ヵ月にわたると、満中陰を三十五日 (五七日) で切りあげてしまうことがあります。 ■中陰壇のおかざり
お内仏の脇の床の間に、二〜三段の仮壇を花屋のはうで作ってくれます。床の間がない場合は、仏壇の横に小机をおき、白布でおおうか、白い打敷をかけるようにします。 ■四十九日法要
満中陰(四十九日)を迎えたら、身辺の整理はもちろんのこと、悲しみを克服し、新しい生活をはじめる出発点という意味を含め、遺族、親戚などの近親者が集まって法要を営みます。 ■本山への納骨 遺骨のうち胴骨(骨箱)は中陰のあと、比較的早い時期にお墓におさめるようにしますが、分骨されて小さな金欄の袋にはったお骨は、しばらくお内仏に安置し、自分の家の墓所とは別に、宗祖・親鸞聖人の墓所である御廟に納骨するのが真宗門徒のたしなみです。 |
法事をつとめる心がまえ 法事とは、法要とも法会ともいい、三宝供養を意味する仏法の行事です。 ■法 事
法事は亡き方のご命日を機縁として、私たち一人ひとりが仏法に遇わせて頂く仏事です。 |
もう一度焼香の作法
焼香の仕方は、宗派によって違いがあります。ここでは、真宗大谷派の作法を紹介致します。
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