最近,夜半はどうもモデムの通信速度が遅いので,土曜の朝などは早起きしてテレビを見ながらインターネットをやっています.フジテレビ朝のワイドショウ(花やしき)では,最近東京育ちの出演者の散歩にレポーターが同行して,東京下町を中心に近郊の風情を探索する特集が組まれています.基本的にはその人の子供の頃遊び回った範囲,あるいは住み始めてからの好きな散歩道を,思い出話を交えながら取材するのです.
とにかくテレビなので,偶然なつかしい店主に会うとかは「やらせ」的だと思いますが,古き良き時代の回顧談,何十年変わらない町の一角(小さな神社)など,インターネットを中断してついつい見聞してしまいます.一般の人の場合もありますがほとんどは有名人で,この前は鈴木清順監督(紳士服の宣伝に出ているじいさん)でした.場所は蔵前,両国とか国技館周辺でしたが,監督の散歩は趣深く進み,なんと途中には高級鰻重など食されるのである(1ヶ月に一度らしい).監督は,万歩計をつけて出歩くのが流行っているようだがそれは散歩ではない,健康的な意味合いなどを持たせるならそれは運動の範疇であるとのご指摘でした.当方も同感です.散歩の理想的パターンは,気晴らし,回顧,思索のみとし,ガキを同行させたり歩数のノルマなど当然課すものではない.さらに出来ればお金を使いたくなるようなところは歩かない方が良いと思いました.
東京下町へは行ったことがなく,なにかあこがれがありますが,実際はTV,雑誌,小説などで得た表面的な概念(とらさんの映画的な所)が脳裏にこびりついて貧困題材しかありません.昔はさだまさしの歌から影響されたのかどうか,湯島の聖堂,ひじり橋など行ってみたいなと考えたこともありました(若かったなあ).でも旅情を期待して自分で行ってみても,恐らくそこらの排ガスくさいゴミゴミした街角しか視野に入らないのでしょう.
やはり視聴率を稼ぐため張り切っておられる名TVカメラマンが,絶妙のアングルとタイミングで撮ったTV映像には,東京下町界隈の町並み景観が季節感豊かな風物誌として描かれており,そこに,日常的でしかも極私的な個人の思い出,散策グセ,つい納得させられるような気晴らし的言語がうまくマッチされているので,いなかものの当方にとっては十分堪能させられる特集らしいです.やはり散歩の醍醐味は他人の散歩をTVで拝見するに限るようです.....
98年10月