名機にLOCK ON!
TETRIS-テトリス−
(SEGA 1988年)
Written by T.J!&Edited by おたやん…の子弟コンビ(笑)
●ゲームの1つのカテゴリを確立した不朽の名作
オセロや将棋と同じくらい一般認知度が高く、ゲームの1カテゴリーとして成立してしまった不朽のパズルゲーム、テトリス。その日本での初出は、アーケードゲームでのブレイクでした。
このゲームは、黙々とプレイして自分のスキルを向上させていく自己完結の一面、プレイを見守るギャラリーと共に、ブロックの入れ方を考える一体感の一面があり、それは絶妙なランダムパターンによって出現するブロックに、一喜一憂する数奇な人間の生き様を見る様でもあります。
ある人は言いました。
「“赤”は来て欲しい時には現れず、来て欲しくない時に来る。これはプログラムを越えた未知の力が働いているに違いない」
●攻略に至るまでの推移
「操作手数を少なくし、且つフィールドの形を整える」といった方向性から生まれた“回転入れ”などの技。理論は少しずつ確立されていきました。ネクストブロックを考えに入れた合理的積み方、7種類のブロックごとに縦ラインを決めて置いていったら、終わらないのではないかという強引な理論…、色別に統計を取り、ブロックの出現法則の謎に挑んだ者…。
方眼紙の穴が空く程目を凝らし、実際に穴を空けて書き込み、時には地下鉄の通路の模様がブロックに見えたりしながら、而してあらゆる角度でゲームは研究されながらも、結局は理論を如何に実際の操作に追いつかせるか、経験値が物を言うゲームとなっていきました。
そんな中、GOD鈴木氏はプレイしたビデオを何回も見つめた末に呟きます。
「ブロックは1000個でループする。約400ラインでゲームスタート時のパターンに戻る」
こういった地道な研究からも、道は開けていったのです。
地域によって流派も生まれました。大阪の理路整然としたプレイスタイルと、東京の半ば強引にブロックを入れるスタイルを称して
「西に柔のテトリスあれば、東に剛のテトリス有り」
等とも言われました。
●その日、新宿が燃えた…歴史的瞬間
テトリスの難易度は、設定上2種類あります。ノーマル(ハード)設定での最高速と、イージーでの最高速です。ハイスコア集計も当然、2部門で行われました。
ゲームの発売からプレイヤーの腕も上がっていきましたが、それでも最高速でどれだけ耐えられるか、がある種プレイレベルの目安だった当時、限界は上手い人(運の良い人?)でも最高速になるレベル15を越えてから数10レベルまで、といった所でした。
そこに彗星の如く現れたその人こそ、日本で最初のノーマル設定オールカウンターストップ(レベル・ライン・スコアのいずれもがカウンター打ち止めとなる、表示上のゲームの終焉)達成者、SPREAM-DIG氏こと川島名人(アウトランやSDIのコーナーで紹介したSPREAM-SOL氏の実兄)でした。伝説ともなったその瞬間は新宿キャロットで達成され、スコア・レベル・ラインの全ての数字が9を示した時、店内にいたギャラリー全員から拍手喝采が起こったといいます。
以後、DIG氏の後を追うように続々とオールカンストが達成されはじめ、巣鴨キャロットあたりでは、スーパープレイヤー達が見守るプレッシャーを背中で受けながら、オールカンストを達成できれば一人前とまで言われるようになりました。
ハイスコアはその後、スコアカンスト時のライン数の少なさで競われ、400ライン台のプレイヤーが現れるまでに至り、またオールカンストの回数をステイタスとする考えで、ゲーメスト編集部内でも私(T.J!)を含め、GOD鈴木氏、バイオなどがこぞって競い合いました。また、相方を気遣いながら二人同時プレイでオールカンストを達成したり、ハイスコアを全て9で埋める「真のオールカンスト計画」なども行われました。
●探求心はどこまでも…電源パターン
一方、理論の詰めとは別に、ゲームの解析をする動きもありました。当時、ゲーメスト編集部のハイスコア担当者だった山河悠理(通称:魔王)が発見した
「バックアップ電池の切れた基盤での電源投入後最初のプレイは、ブロックの出現パターンが決まっている」
という法則から、ブロックの組み方を予め組み立てておけば、点数が10倍入る“全消し”が何回でもできるのでは、という考えが生まれ、世に言う電源パターンの作成が始まりました。この図面は「ザ・ベストゲーム」というゲーメスト増刊号に記され、2000年に発売されたアーケードゲーム「セガテトリス」でも、倍速の全消しデモプレイ及び、300ライン後の再スタートのブロックパターンとして再現されています。
その後、電源パターンはゲームスタートの条件が改良されていき、100を切るライン数でスコアカンストが成されるまでに至りました。
●多種多様な遊び方、そして…
普通に遊ぶだけでは物足りなくなったプレイヤーは、プレイに条件を設けました。以下にいくつかの例を紹介しましよう。
・回転ボタン使用不可でどこまでいけるかルール
・第一ブロック以外を最下段に付けたら「負け」(何に対する負けなのかは依然不明…)の海面上縛りルール(通称:NIXルール)
・右下(左下)からわざと空洞を作り階段状に繋げていく、段位認定ルール
・テトリス(赤ブロックの4ライン消し)を禁止する、もどかしさ爆発ルール
・オールカンストまで、片手でプレイするルール
・黄色以外のブロックは絶対に1回転以上させなければいけないルール
・2P同時を一人でやってしまう、ダブルプレイ
等々…。
ですが、所詮これらは最高速のスピードに慣れきったプレイヤーの誤魔化しにしか過ぎませんでした。
「もっと、スピードを上げる事はできないのか…」こんなマニアの要望が囁かれ、遂にその改造バージョンが日の目を見ました。それこそが「テトリスVer.1.6」です。詳しい説明は控えますが、システムボード+クリスタルの相性・基板とモニターの相性という、二つの壁を乗り越え、クロックアップを施した1.6倍速のテトリスが生まれたのです。
単純に早さが1.6倍になるという事は、操作を1.6倍早めなければならないという事です。快適なプレイができる為に、「テトリスVer.1.6」には回転ボタンが3つ設けてあります。元々、テトリスはボタンを3つまで別々に繋げる事ができるので、これで使用頻度の高い水色やオレンジの3回転を、スムーズに行う事ができるのです。
ちなみにこのゲームで最高難易度となるのは、何を隠そうネームレジスト。1.6倍のスピードでレバーを入れないと、最後まで入力できません(爆)。尚、現在更に速度を増した「テトリスVer.2.06」も開発(!?)中です。
この他にも遊び心として、1コイン2クレジットにして、2つのフィールドを一つのコンパネに繋げてプレイできる様になっています。これで理論上、2つのフィールドに全く同じブロックが形成されていくはずなのですが、何故か不思議な力によってズレる事があります。これは1.6倍でなくともできるので、基盤をお持ちの方は試していただきたいと思います。
●続編・亜流
アーケードで純粋に続編として制作されたものは2つあります。特定のラインを消して面クリアシステムを採用し、ゲーメスト編集部も一部制作に関わった第2作“フラッシュポイント”。対戦やアイテムをテトリスのルールに加え、ロケテストでオールカンストが出された為に鬼の難易度で発売された(笑)大作“ブロクシード”です。
周知の通り、そのバリエーションやメディアは多岐に渡り、ここで紹介しきれるものではありません。が、最も完成度の高いアーケードバージョンを、ほぼ完全に踏襲したと言われたるX68000版テトリス(通称:清水テトリス)だけをピックアップして紹介しておきましょう。
このテトリスは回転法則等のシステムこそアーケード版を移植しているのですが、細かい設定を変更でき、例えば落下スピードを従来の最高速の20倍にできたり、接着時間を変更できたり、フィールドの幅を変えられたり、と当時アーケード以外の場でプレイできるテトリスとしては最高の出来を誇ったのでした。
中でも編集部で好評だったのが、20倍速+横4ラインのセッティング。ブロックが落ちてからでないと回転できないので、先の先を読んだ積み方が要求されます。この為、敢えて見た目にはとんでもない積み方が、結果正解になったりしました。又、開幕直後の黄色/青/オレンジ×2や赤でいきなり全消しになってしまう辺り、男のマロンもといロマンがあったりもしました。
未だにそれを越えるバージョンが存在しない、唯一にして最高の完成度を誇る、セガアーケード版テトリスに改めて敬意を称してこの項を締めくくらせていただきます。