名機にロックオン
Out Run
(1986 SEGA)
★ ドライブゲーム=アウトラン=レースゲーム ??
セガの体感ゲームシリーズ第4弾として発売されたアウトラン。そのリアルなグラフィックとスピード感はドライブゲームファンというかレースゲームファンを
魅了しました。このゲームをドライブゲームというかレースゲームというかは意見の分かれるところ(中には「こ
のタイミングでここに敵車がいたら負け」とかいう要素があるので「詰め将棋かパス゜ルゲームだ」という人もいる)でしょうが、このページで
はタイムアタックに関する逸話をメインにすすめていくつもりなので、とりあえずレースゲームということにしておきましよう。
★ ゲーム中のサウンドが選択できるなんて!!
アウトランの魅力はそのサウンドにもあります。なんとプレイ中のBGMが三種類の中から自由に選択でき、それぞれがすばらしいVGMでした。マジカルサウ
ンドシャワー、スプラッシュウエーヴ、パッシングブリーズ----タイトルを聞いただけで頭の中に音楽が流れてくる人も多いことでしょう。このページの
バックで流れるアウトランサウンド。十分堪能していただいているでしょうか?
★ コースももちろん選べます
サウンドだけでなく、コースももちろん選べます。マップ形式になった15コースを駆け抜けるため、一度クリアしてもまた次のコースを----という気にさ
せてしまう演出----アウトランが超ロングセラーとなったのはこのへんにも理由があったようです。ゴールはAからEの5種類。全部のエンディングを見ま
したか!?
★ ゲーム雑誌対抗アウトラン大会から----
アウトランが発売されてまもなくのころ。セガゲームミュージック発売記念として雑誌社対抗のアウトラン大会なるものが開催されました。当然ビデオゲーム専
門誌ゲーメストとしては他の一般雑誌に負けるわけにはいきません。当時はドライブ・レースゲームのエキスパートが編集部には不足していたというものの、
JUP阿部氏が全国レベル付近のタイムを出しており、「優勝はもらった!!」という雰囲気でした。事実、他誌ではプレイヤーの確保ができず、助っ人を街で
スカウトしてきたとかいう話も聞こえていました。
しかし、軽視していたコンシューマーゲーム誌に最大のライバルがいたのです。M勝F誌に出入りしていたY氏は当時すでに全国トップを爆走しており、JUP
も「Yさんには勝てない」といつもいっていたのですが、なんとマルKファミコン誌(結局伏せ字になってない
し----^^;;)の選手はYさん!!さあ編集部あせったあせった----とりあえず「Yさん以外には負けるなよ」と応援ともあきらめと
もつかない声でJUPを送り出したのでした。
さて大会当日。なんと1回戦から当のYさんとあたってしまうヒキの弱いJUP。しかしYさんも「ここで勝て
ば10万円」(優勝賞金10万円だった)とあせってしまったのでしよう。コケてしまい、JUPの勝ち!!----しかし、JUPは準決勝で
同じ事をやってしまい、結局10万円は水の泡ときえてしまったのでした----^^;;;;)
★ 究極の走法ギアガチャ!!
アウトランといえばそのタイムアタックが熱かったのはあまりにも有名。タイム短縮の走法が発見されるたびに、アウトランナーズ達は100円玉をマシンに
じゃんじゃん投入したものでした。なかでもタイム短縮の効果が大きかったのはギアガチ技。ギアガチャについては賛否両論わかれることと思いますが、実車が
ホイールスピンやハイドロプレーニング現象でスピードがなかなか落ちないことを考えると、ある意味ギアガチャも忠実な再現だった----という説も??
----ギアガチャとは何か?わからない方のために少し補足説明しましょう----
ギアをハイ→ロー→ハイとシフトすると、自車(テスタロッサ)は約1〜2秒煙をはきます。この状態だと路肩にのりあげてもスピードが落ちません。さらに、
煙が出た状態で路肩に車体半分乗り上げて、ハイ→ロー→ハイ----これを1〜2回くりかえすと、なんとこの状態を約7秒間キープできるのです。その間は
やはり路肩にのりあげても草原を走ってもスピードは落ちません。これによってコースをショートカットすること等により、大幅にタイムが短縮できるのでし
た。
★ 究極テクの発祥地は福島!!
1987年4月。ゲーメスト編集部に届いた個人申請のアウトランのタイム----それは当時のトップレベルといわれていたタイムを軽く上回るものでした。
差出人は福島のスーパープレイヤーSPREAM−SOL氏。その時点で新走法の予感が---
-。そしてゴールデンウイーク----巣鴨キャロットのアウトランに黒山の人だかりができました。ざわめくギャラリー、目をまるくするアウトランナーズ達
----。その中心には遠征してきたSOL氏の姿がありました。回数は確かに多いけれども、なめらかでテク
ニカルなギアチェンジ。目の前でくりひろげられた一連のギアガチャに全てのプレイヤーがカルチャーショックをうけていました。そして彼はそ
のテクニックを隠すことなく、トップランナーズ達に方法を伝授していきました。新テクニックをあみだしながらも、おごることなく潔い態度をとるSOL氏に
誰もが敬意の念を表しました。
この技なくして4分40秒をきることは不可能とまでいわれたギアガチャ。それは東
北の一青年の探求心から生まれ、フェアプレーの精神から全国に広がったのでした。
★ アウトランのタイマーの秘密と偽りの申請タイム
タイムアタックに熱中するあまり、実際に出してもいないタイムをファーストラップとして申請してしまうアウトランナーズ(こういう輩をアウトランナーズっ
て表現すると、ほんとにやりこんでいた人はたいがい激怒しますから、この項では以降「へんなタイムの人」と
表現します)も中にはいました。タイムに関する情報は(とくに上級者ほど)ものすごい速さでとびかっており、(といっても具体的な走法についてまでは、お
互い牽制しあってあまり教え合わなかったようですが----)今日名古屋で出たタイム情報が翌日には東京で周知の事実となるのも日常茶飯事でした。
トップアウトランナーズにいわせれば「へんなタイムの人」のタイムは「××ステージで○○秒
のラップをだせるといっているけど、その走りができるなら△△ステージで○○秒しか出せないのは(たとえ得手不得手があろうとも)おかしい」とまで断言す
るのです。それだけハイレベルな次元では各ステージのラップさえも均衡してくるのでした。
そしてなによりのタイム真偽判断の鍵は「タイムの秒単位未満の数値」でした。アウトランにお
いては1秒未満のタイムは1/32秒単位で計測されているため、32種類の数値しか出現しないのです。具体例でいえば、「4分46秒62は出るが、4分46秒63は出
ない」といった感じです。「へんなタイムの人」は実際にはやりこんでいないために、このから
くりにひっかかっているケースが散見されていました。
当時のゲーム雑誌のハイスコア担当者は常にこの末尾の数値に目を光らせており、何回もいいかげんな申請が続くようであれば、以後どんなスコアを出そうとも
集計から除外する「ブラックリスト」にのせていたというのは一部以外ではあまり知られていなかった事実です。ちなみに私の把握しているだけでも「ブラック
リスト」には数名の「へんなタイムの人」がリストアップされていました----。