残酷な天使が忘れられない
「僕は君が好きだ」
そう言った彼の言葉が忘れられない。
いろんな感情が入り混じって感覚が混乱した。カヲル君をこの手で殺した時に。
彼は使徒だったんだ。僕はエヴァのパイロットとして彼を殺さなければならなかったんだ。
表面ではそう言い訳できる。
けれど心まではどうすることもできなかった。偽りきれなかった。
彼を殺してしまった時に僕の心は死んでしまった。
あの時から僕の心は止まったまま。
カヲル君の言った言葉の意味はあの時の僕には何一つわからなかった。そして今、わかった彼の言葉のうちの一つが忘れられない。
彼だけが僕に素直に示してくれた好意。
愛、と呼べるもの。
カヲル君がいなくなって、初めて僕も同じ気持ちだったのだと気付いた。
けれど、全てはもう遅い。
そして、僕は彼と初めて会った場所に留まり続けている。
もしかしたら、僕は彼の愛という心理攻撃によって、心が壊れているのかもしれない。
けれど、今、感じてるこの気持ちは真実だから。
僕はここに留まり続ける。
抱きしめてた運命のあなたは
季節に咲くまるではかない花
希望のにおいを胸に残して
散り急ぐあざやかな姿で
祈るようにまぶた閉じたときに
世界はただ闇の底に消える
それでも鼓動はまた動きだす
限りある永遠を捜して
私に還りなさい生まれる前に
あなたが過ごした大地へと
この腕に還りなさいめぐり逢うため
奇跡は起こるよ何度でも
私に還りなさい記憶をたどり
優しさと夢の水源へ
あなたも還りなさい愛しあうため
心も体もくりかえす
もいちど星にひかれ生まれるために
「歌はいいね。リリンの生み出した文化の極みだよ。
それにしても……どうしたんだい?こんなところで」
聴きたかった声に驚いて振り向く。その先にあるものは宙に浮く彼の姿。
「……カヲル君………」
夢、だろうか。それとも幻?
だってここは彼と初めて会った場所だから。そして初めての出会いと同じ。
あの時のDE・JA・VUが僕の中で甦る。
「夢でも幻でもないよ。僕はここにいる。
僕の名前は渚 カヲルだ」
まるで心を読んだように答える。ああ、心を読んでも不思議じゃないのかもしれない。彼は使徒だから。でも、僕はもう彼を使徒とは見なせない。彼を殺せない。
失うのは2度といやだ。
「生きて……たんだ……」
安堵の息をつく。
「本当は、僕は1度、死んだ。
でも、僕は使徒としては位が上だったから生き返ることも可能なんだ。1度きりだし、能力もほとんど失ってしまうけどね。今の僕に出来ることは空を飛ぶことぐらいだよ。
それでも僕は生き返ることを選んだ。
シンジ君、君に逢いたかったから」
「たった……それだけのために……?」
「君にとっては、それだけ、かもしれないね。
でも、僕にとっては、それだけ、じゃあなかったんだ。
言っただろう。僕は君が好きだって」
傷ついたような瞳。
それに、ひどく心を打たれた。
「でも……もしシンジ君が僕を使徒だと思って、倒すべき存在だと思ったら、そう言ってくれないか?
そしたら僕は消えるよ。
君に殺してくれ、と言ったら君はまた傷つくだろう。
そんなのは嫌だから。
シンジ君には幸せになって欲しいから」
こんなにも僕のことを想ってくれている。
そんな感情が伝わってくる。
「僕は、ずっとここに留まり続けていた。
この場所が、カヲル君と初めて出会った場所だったから。
カヲル君をこの手で殺してしまったこと、ずっと後悔してた。
逃げちゃダメだ。いつも自分に言い聞かせていたのに、現実から逃げようとしてた。
……仕方ないよ。大事な人を僕自身が殺してしまったんだから。
カヲル君が大事なんだ。カヲル君がいなくなってから気付くなんて遅すぎたけど。でも、こうやって君は戻ってきてくれた。
使徒だなんて思えるはずがない。 そんなことをしたら今度こそ平気じゃいられなくなる。
愛という感情を教えてもらったのに。その感情ごと心を閉ざしてしまいそうになる。
カヲル君が好きだよ。愛してる」
自分の心の中を一つ一つさらけ出してゆく。
何よりも大事な想いを伝えたいと思ったから。
「じゃあ、僕はシンジ君の側にいていいんだね。
僕はあきらめが悪いし、存在理由がシンジ君だから、きっと離れられなくなるよ。
それでも、側にいていいんだね」 最後の確認。そう思った。
だから、はっきりと答える。
「ずっと側にいて欲しいよ。カヲル君が一番だ。
一度失ったからこそ、その大切さがよくわかった。カヲル君がいない間、僕は生きながら死んでいた。君がいなければ、僕は僕じゃいられなくなるんだよ」
あの哀しみを二度と味わいたくない。
「よかった。ずっと側にいるよ。何があっても。
離れない。僕がシンジ君を必ず護る」
「僕だって。あんな思いはもう二度とごめんだよ。
僕もカヲル君を護る。
お互いに護り合おう。全てのことから」
「ねぇ、ミサトさん。僕が使うはずだった部屋ってそのまま残ってるよね。」
「第三新東京市にシンジ君が来た時に1人で住むはずだった第六ブロックの部屋のこと?
そのままシンジ君の名義になってるはずだから空いてると思うけど、何のつもり?
どうして急にそんなこと」
「……うん、自立してみようかと思って。使徒はもう来ないから平和だし、NERVも後始末が仕事のほとんどだから、EVA‐01(エヴァンゲリオン初号期)のパイロットの僕はあまり必要ないでしょう。
大丈夫ですよ。必要になったら連絡をくれれば、ちゃんと行きますから」
本当はカヲル君と2人で暮らすつもりなんだけどさ。だって、カヲル君にも帰る家があればいいと思うから。
かといって、NERV(もしくはゼーレ)に相談(交渉?)するわけにもいかないし。NERVやゼーレの関係者、カヲル君が使徒だったということを知っている人達にバレたらやっばりまずいと思う。
気の回しすぎかもしれないけど、それでも避けられる危険は避けていきたい。お互いに護ると誓ったから。
「アスカは……どうするつもり?あの子、まだ完全に立ち直っていないのよ。
まあ、学校ならあそこからでも通えないこともないけど、引っ越しなんていろいろ大変じゃない?」
「平気ですよ。元々僕の荷物は少ないですし。
アスカにもちゃんと見舞いに行きます。アスカは確かにうるさいし、けっこう厳しいこと言うけど、それがなくなるとちょっと張り合いがないっていうか……。
だから、僕もアスカに早く治ってほしいと思ってます。そのための協力も惜しまないつもりです」
「…………………………。
そう、止めても無駄なのね。
私達の前じゃ、最近なくなってきたけど、シンジ君ってどこかで1歩引いてることが多いの。でも、こうと決めたら頑固なのよね。
そういえば、碇司令も頑固なところがあるものね。やっぱり親子って似るものね。……たとえ、そう望んでいなくても。
そして、2人とも、頑固なだけじゃなくて、本当に決めた信念は曲げずに貫こうとするの。表面ではどう言っていてもね。
でも、それってすごいことだと思うわ」
ミサトさんって私生活がひどい割には、結構いろんなこと見てるんだ。 だから作戦指揮担当していられるのかな。
まぁ、父さんと似てるっていうのはちょっと嫌だけど。だけどここに来てからはいろんなことがあって、その反発も少しは薄れてきて。実際、どんな手段を使っても、信念を貫こうとしてた。でも、長年こうだと、そうそうわだかまりも解けないよな。
「じゃあ、明日本部に行ったらそう申請しておくから。
また、いつでも遊びに来なさいよ。私達は家族なんだから。ここは、あなたの家なんだからね」
「ありがとうございます。ミサトさん」
丁重にお礼を言う。たまに、こうやって嬉しい言葉をくれる。そんな気遣いが心に暖かかった。
今まで一緒にいられなかった分、ずっと一緒にいよう。
2人だけの新しい生活はきっと楽しいものになるだろう。
エヴァです。有名なエヴァです。ついにやりました。もっとも、書いたのはもう少し前。昔の原稿から引っぱり出して…(- -;;;;)
って、ずいぶんたったけど。でも、ここらで入ったのが4月頃だし、最終話は9月頃だったはず。週1だったから。しかも深夜。まあ、他のアニメがそれより30分ほど遅い時間帯で入ってたから、それを見るために起きてたけど。で、テレビ版全部見たら、気が済んで、冷めちゃった。
ちなみに、一番好きなキャラはカヲル君。かっこいいってわめきまくってたし。見事にはまってた。
あと、青葉君と日向君も好きだった。声も好きだけど、キャラとしても好き。出番少なくて残念……。
あと、停電の時のゲンドウと冬月も好き。
ゲンドウも冷たい人ってわけでもないんだなって思いました。あのシーンは。笑かしてもらいました。
どうでしたでしょうか。
って、ホントはちょっと失敗してるんですけどね。
ホントは、まだ続く予定だったんだけど、途中で書き詰まって、かけないものだから、キリがいいし、これでもいいか、と思って、終わらせちゃったわけです。
エヴァにも冷めちゃったし、で、続きを書こうにも書けない状態で、じゃあ何で出したのかというと、せっかくかいたのだから。それが理由です。
お蔵入りしちゃったら同人はもう2度と無理だしね。 ってわけで出したんです。…ちょっと卑怯かも……。
やっぱ、書いたの途中のまんまってのもやだしね。
いちおう、終わらせておこうかと思って、ちょっとばかり変えたりしてなんとか終わらせました。それでもなんか半端な気もしますけど。まあ、出来れば目をつぶって下さい。もし、文句があるならどうぞメールでも何でも、苦情受け付けます(^_^;)。1人で勝手にやってるサークルなので、出来る限り何とかします。もちろんいつでも応対します。
(裏)