悪魔はタチが悪い?!
 忘れなければいけない、いや、忘れざるをえない想いを抱いてしまったイオス。
 しかし、それは容易ではなかった。それは、感覚をも同時に覚えてしまったから。

 気付くつもりはなかった。気付きたくなかった。
 その想いを突きつけられて…どうしようもなくなったソード。
 どうすれば…いいというのか。


 イオスも、ソードも…感情を持て余していた。
 それでも表向きはいつもと変わりなく、すごしていた。
 まるで、何事も、なかったように…
 けれど、中身は…お互いに困惑し続けていた。
 想いを…封印し続けるべきなのかもしれない。けれど…それでいられるのか。
 心の中では関係は変わってしまった。いつまで…耐えていられるのか。
「貴方しか…望んでいないのに…」
「オレに…どうしろっていうんだよ…」
 お互いに、1人で呟く言葉。

 ソードが偶然イオスの部屋を訪れた時に、イオスが尋ねる。
「私達の決着、いつになったらつけられるんでしょうね?」
「さあ、な。お互いに元の体に戻って…。でも、そしたらサタンを倒しちまって、天界との戦争も終わるかもしれねぇな。でも…おまえとの決着はつけておかねぇと…。お互い、すっきりしないだろ?」
 イオスにとっては、そんなことはなかった。いや、むしろ…それを望んではいなかった。ソードを傷つけたくはないのだ。
 それを伝えようか言いあぐね、ソードの方を振り向く。
 そんなイオスの目に映ったのは、ソードの首筋と…その部分に付いた、薄くなってしまった、痕。数日前にイオスがつけたものである。
「っ…あなたは…っ! 強姦されたいんですか…っ!」
 変わらない無防備さは残酷だった。
 押し倒し、その部分に再び印を付ける。
「てめえは…っ!!」
 それ以上は驚きで言えないソードのその目つきから憶測してイオスが言う。
「天使が何を、ですか?」
 そうだと言うように、ソードがイオスをにらみつける。
「私は…あなたに狂わされ、堕ちてしまった天使なんですよ…!
 だから、そうそう止められない。
 それに…覚えていなくとも、あなたがそうさせたんですよ!?」
 その視線からは、普段の穏やかなイオスのかけらも感じられない。
 ソードを見つめながら、
「あなただから…堕ちたんです。
 あなただから、堕ちてもいいと思ったんです」
 真剣な瞳と口調で語りかける。
 イオスのその様子に、ソードも少しずつ落ち着いてくる。
「ソード…あなたは、なぜ、私にあんなことを言ったんですか…?」
 しかし、ソードは今度はイオスの態度ではなく、言葉に再び動揺しはじめる。それを知られたくなくて顔を背けるソード。
 そんなソードの態度に、イオスはさっきの印の場所強く吸い上げ、軽く噛む。
 びくり、と反応し、熱い息を吐くソード。
「止められないと、言ったでしょう…?」
 ソードの素肌に手を忍ばせる。しかし、声音にはそれを止めて欲しいような色が潜んでいる。奔放な悪魔の体を手に入れても、どうにもならない。だから、本当に求めているものは、体より言葉なのだ。
 さすがに抵抗しはじめるソード。しかし、その体はイオスを押しのけるだけの力がない。
「イオスっ…!」
 その声が聞こえていないはずがないのに、イオスはやめようとはしない。
「あなたを、愛しているんです…」
 そう言って、なお行為を深めようとする。
「こんなこと、され…て、たら…何、も、言えね…だろ…」
 乱れる息の合間に必死に言葉を紡ぐソード。
 その言葉に、やっとイオスはその手を止める。けれどソードを放そうとはしない。
「答えて、くれるんですね?」
 ソードを抱きしめたまま、問いかける。
「あの晩のこと、だろ?
 オレにだってプライドってもんがあんだよ。言うつもりは、なかったんだぜ。
 って言うよりは…そんなことあるはずがないって否定してたしな。だから、これからも言うつもりはなかったのに…てめぇが実力行使にでるから…」
 ぼそぼそとしゃべるソード。
「悪魔だろうと、嫌いな奴に身をゆだねるほど欲望に素直じゃねぇよ。
 ったく…まさかこの体がこんなにも酒に弱いとは思わなかったぜ…」
 文句を言いながらしゃべり続ける。イオスはずっとだまってそれを聞いている。
「だから、だ! あれはオレの本心で…
 オレもおまえが好きなんだよっ!」
 ヤケになったようにいい、それでも腕をイオスの首に絡める。
「っとに…なんでこんな天使に惚れちまったんだか…」
 まるで失態だったように言う。
「でも…なってしまったものは仕方ないでしょう?」
 ソードを抱いていた力を強くして囁く。
 そのイオスの手が妖しく蠢きはじめる。
「…っ…その…、やんのかよ…?」
 ソードの問いに、
「あなたに、堕ちてしまいましたからね。あなたに関することは歯止めが効かなくなるんです」
と答え、唇に軽くキスを落とす。
「今さら、だしな…勝手にしやがれ」
 首に回した手はそのままに、それでもヤケの口調で言うソード。
「愛してますよ」
 そう囁きながら、余すことなく、体中にキスを降らしていく。
「……イオス…イオス…っ」
 ソードは快楽に耐えながら、イオスの名を呼び続ける。
 行為が深くなる度にソードの声は感極まっていく。
 その声が求めるままに、イオスはその証をソードの中に注ぎ込んだ。


「人は酔っぱらいを達が悪いと言いますが……私からしてみれば、あなたという悪魔の方がタチが悪いですね。
 何しろ…ここまで私を狂わせるんですから…
 つまり、悪魔で酔っぱらいだったあなたは一番タチが悪いわけですか…」
 小さく呟き、くすっと笑うイオス。
 その一番タチの悪い悪魔は何も知らず眠っていた。
 もしかしたら、この無防備な寝顔もタチの悪さの一つかもしれない。などと思いながらも、イオスはソードの寝顔を見つめ続けていた。

 うあ〜〜っ!! 最終更新から約1ヶ月! そのうえ話は続編だというのに1ヶ月以上開いてどーするーっ!!(死)
 いちおー、これでも時々数行ずつ書いてたんですけど…やっぱり物書くには授業中が最適だったなぁ… 家にいるとついつい他の事に気が散っちゃって…(爆)
 まあ、ここ1週間は突発本の〆切で死にかけててできなかったんだけど……
 待っててくれた方、ごめんなさーいっ!!m(_ _)m

  (裏)