Starting・Legent
その光景を見た途端、珍しく俺は呆れていた。いつもならば、説教をするところなのだが…。
「やっと見つけたと思ったら…何、ごたごたに巻き込まれてるんですか……?」
どうやら、復讐がどうこうと言われてるらしい。
ゼルフェ様の前に立ちはだかっている、2人の女。その側には、もう1人、少女が倒れていた。どうやら、ひどく衰弱しているらしい。
(まさか、ゼルフェ様が…?!
そんなはずはない。この人はそういう人じゃない。なら、なぜ…?)
とにかく、話を聞く必要があった。
「よく、わかりませんが、俺にも説明してくれませんか?」
「説明もなにもあるか!
その男が衰弱した妹を抱えてここに来た!!
理由などいるものか! あたし達は絶対に許さない!!」
「そうだ。
呪も使わずに、空間を渡ってきた。つまり、お前らは魔族だろう!
お前も、殺す!!」
「だから、これにはワケがあるんだ。聞いてくれ!!」
「必要ない、殺す!!」
見事な二重唱。
そして、突然、術を打ち出す。
(ただの人じゃない…!?)
「サフィア、気を付けろ!
こいつらの術は魔法とは違うんだ!!」
もちろん、今の術はよけてある。
(力としてはたいしたことはない。この程度なら耐えられる。
ゼルフェ様に手出しはさせない!)
弱い、殺さない程度の魔力球を、その手に創り出す。
そして女達は、今度は呪をつむぎだす。
「†‡¶ξφψДЖЙФХЦЧЩЪЫЬЭЮЯбгдеёжзйфцъыьэюя……」
弱い魔力球は、力をセーブするため、集中を伴う。そのため、こちらの技よりも先に、向こうの術が完成する。
(今は、こっちに集中する。あの程度なら、大丈夫なはずだ)
「惑い血!」
女達がにやりと笑う。
「さあ、同士討ちを始めるがいい!!」
どうやら、誘惑系の術だったらしい。
しかし、魔力の強さと魔族としての耐性とが、妙な風に相互干渉を引き起こしたのか、それは自分自身への誘惑を誘った。油断していたせいもあるかもしれない。
体中に、かすかな熱が帯び始める。
「ふざ…けるなっ!」
魔力球は、まだ完全にコントロールしていなかったため、わざと外して放つ。
「サフィア!」
それは俺への呼びかけだったのか、相手に危害を与えようとしたせいか。
「大…丈夫…。ちゃんと、外してあります…威嚇ですよ……」
「見ればわかる!
それよりもおまえは大丈夫なのか!?」
熱が欲望を刺激し始めていた。こんな状態を続けていれば、やばいだろう。
しかし、ゼルフェ様に心配をかけるわけにはいかないのだ。
「一応、平気ですよ。術にはかかっていませんから…。ただ、変に相互干渉を起こしていて…。
あと…は、お願いします。事の次第も聞きたいので、ちゃんと戻ってきて下さいよ…」
「わかった。だから、早く休んでおけ」
その言葉を聞いた途端、空間を渡る。
これ以上側にいると、本当にやばかったから。
自覚したのはずいぶん前。自分という存在が出来た時から、ずっと側にいた。
だから、ゼルフェ様が人間界にふらりと出掛けた時は、とても不安になったのだ。
そう、一緒にいるのが当然だと思っていた。
それが、自覚のし始めだった。
でもまだ、あの頃は突然のことに戸惑っているだけだと思っていた。
そして、必死になって探して、人間界での噂をいろいろ聞いた。ゼルフェ様と魔族が人間に敵対されていると知ったのは、その時だった。心配がどんどん募っていった。
やっと、完全に自覚して、どうしようかとも迷った。けれど、今のままでもいいと思っていた。
平気なフリさえしていればいい。ずっと隠していこうと。
たまに、表情や仕草にドキリとしたが、抑えることぐらい出来た。 けれど、この誘惑はひどく強かった。少しずつ、少しずつ熱を抑えていく。
「サフィア、もう平気か?」
空間が揺らぎ、ゼルフェ様が現れる。
「もう…終わったの…ですか……?」
「ああ、ある知り合いに頼んで、彼女を治してもらうようにした。
それに、少しましになった彼女も俺が悪くないことを主張してくれたしな。
それで解決したんだ」
「そう…ですか……。
俺は、しばらくほっておいてもらえば、すぐに治ります…。
今回のこと、そもそも…どういうこと…だったんですか……?」
体中をめぐる熱のせいで、声が掠れていた。これは理性を保てるようになるまでは直らないだろう。
「まあ、ちょっとしたことで、彼女を助けたんだが、その後ついてくるようになったんだ。お礼をするっていってな。
だけど、多分俺の闇の気が強すぎたんだろ。彼女はどんどん弱っていってな。
で、慌てた俺が彼女の故郷に連れていったら、あんなことになったんだ。
で、思ったんだが、俺は俺自身の力をある程度封印しようと思う」
(確かに、その力は強大だろう。
そばにいた人に害を及ぼすほど。でも……)
「でも、そんなことしたら……」
「ああ、その力を利用されたりするし、魔力も弱くなってしまう。
まあ、それは覚悟の上だな。
誰かが死ぬのを見るよりはいいさ」
「そうですね。あなたの人間好きは人間よりも凄いかもしれませんね。
そんなあなたにやめろと言っても無理でしょう」
「ま、そういうこった。
適当に人間界のどこかに捨てておくさ。人間がどうにかしてくれるだろう」
そして、力のほとんどを切り離す。凝縮された、その力のかけらは、人間界のどこかへと飛ばされる。
魔法珠に関する伝説は、ここから始まる。
DARK・SOULを出そうと思ったけど、ページ数が少なすぎたので作った作品です
即興ネタと言ってもいいでしょう
ちなみに、言っておきますがゼルフェ様(リアール)が受です サフィアは攻だったりします(爆)
この2人もっとらぶらぶにしたいなぁ…(核爆)
(裏)