「ロザリー」side D
 それは、剣士として充分に修行を積み、上位職であるクルセイダーへの転職試験申込をした時。
「まずクルセイダーになるには、神の敬遠な信者であることが必要だが…どうやらそれは問題ないようだ」
 転職試験官に胸元のロザリーを指差され、納得された。

 なるほどたしかに普段からロザリーを身につけていれば、敬遠な信者だと思われるだろう。
 だがこれは、神を信じる身の証ではなかった。
 自分の心を支えるもの、という意味では同じだろう。だが、支えているのは神の存在ではなく、大事な友人との誓いだ。

 村が魔物に襲われたあの日、神への信仰心は失せた。
 家族を失い何もかもがどうでもよくなっていた自分に、彼女は生きることが大事なのだと教えてくれた。
 自分よりも年下な彼女は、その時の自分よりもよほど大人で。
「いつか私が大きくなったら、この村の人を自分の力で守れるように、助けられるようになりたい」
と語った。
「今は自分が出来る精一杯で、村の人を助けたい」
のだと、彼女だって無傷ではないのに、魔物に襲われ怪我をした人たちの看病をしてまわっていた。
 その時に、思ったのだ。彼女の目標を少しでも手助けしたい、と。
 だからといって、自分と彼女は同じ人間ではない。同じ道を歩もうとは思わなかった。

 そして選んだ道は、クルセイダー。
 この力で村の人を、そして何よりも、彼女を守り助けられるようになりたかった。

 村の受けた傷が少しずつ癒え、落ち着いた頃。
 彼女にだけは、とクルセイダーを目指し村を出ることを告げた。
「じゃあ、これを…」
と彼女が首から外し、自分の首にかけてくれたそれは、彼女がいつも身につけていたロザリー。
「こんなものはもらえない」
と否定すれば、
「貴方の無事と、目標を達成できることを願って」
と頑として返すことを拒まれた。
 彼女は一度決めたことは曲げようとはしない。
 仕方なくその日はそれを受け取り、そして自分は、いくつかの店を回った。
 そうして、別の日。受け取ったロザリーによく似たそれを、彼女に送ったのだ。
「あたしからの、お返し。
 あんたの無事と、目標を達成出来ることを願ってね」
 彼女も後日、プリーストを目指し村を出ることを知っていたから。

 受け取ったその日から、彼女からもらったロザリーを常に装備していた。
 これが自分の目標であり、そして心の支えとなる。だから肌身離さず身につけている。
 苦しいことも悲しいことも、このロザリーがあれば、彼女との誓いを思い出せば耐えることが出来た。そうして、これからも耐えていくことができるだろう。
 いつか、村に帰るその日まで。彼女との約束を、果たす日まで。

 RO2作品目。前回言った通り、ディシアさんサイドの話です。
 場面もタイミングも違いますが、同じロザリーを元にした話ということで。
 あと他にもいくつか共通点はあるんですけどね(笑)
 なかなか書く機会がなくて、前回書いてからだいぶ日がたっていたら、何か最初考えてた話と違ってきてるような気もするのですが…_| ̄|○
 リアさんサイドの話をつくろうかとも考えたのですが、ネタがなくて断念しました。