願う行為(こと)
にこにことしている。どうやら機嫌がいいようだ。
「何かあったんですか? リナさん」
「え、あたしって有名なんだなーと思って。『魔族を滅する者(デモン・スレイヤー)リナ=インバース』ってけっこう有名だからうれしてくって。」
「そのかわり、『盗賊殺し(ロバーズ・キラー)』や『ドラまた』とかも残ってますよ」
「余計なこと言わないっ!!」
前世からの得意技、スリッパアタックがゼロスの頭にキマる。
…余計な茶々を入れるから……
「…相変わらず…いつのまにそんなものを懐にしまい込んでいるんですか……」
「それは…をとめのひ・み・つってやつよ(← エリかいっ?!)」
「あと…昨日、盗賊団が壊滅したといううわさを聞いたんですが……」
「…あ…ははは… (^_^;)
だぁって、ゼロスは働かないし、あたしがお金稼ぐしかないしゃない」
「まぁ、魔族はお金を必要としませんから…
だけど、『もう1人の盗賊殺し(ロバーズ・キラー)』とか『第2のリナ=インバース』って呼ばれてますよ?」
転生しても行動パターンは変わらないらしい。
「……知ってるわよ。
前はもう1人の方と比べられたりして何かと思ってたけどね。まさか昔の自分だとは思わなかったわ」
「あ、もしよかったら、今度僕も連れていってくれません?
きっと夜食にちょうどいいと思うので。
それに魔力関係のものがあればすぐわかりますよ?」
そう言ってにっこり笑う。魔族の食事と言えば負の感情だからだ。
「まぁ、気が向いたらね」
「そうそう、働くといえば…会って欲しい方がいるんですけど…
だめですか? リナさん」
働く、そしてあの方、それでゼロスが指す相手といえば…。
「まさか、獣王(グレーター・ビースト)ゼラス=メタリオム!?」
「当たりです。リナさん。カンがいいですね。
やはり、僕にわざわざリナさんを待たせてくれたのだから、報告しに行きたいと思って…」
「…でも…、魔族はあたしの事、どう考えてるの?
あたしは…あれの呪文を使えるわ。転生した今でも。
もしもそれを利用しようと考えたら…。昔の…あの時のように……。
そしたら………あたしは、どうしたらいいの………?」
隠しきれない不安がリナの顔を曇らせる。
「…僕は…長い間魔族の側を離れていたのでわかりません。
でも…リナさんは僕が護ります。ルナさんとも約束しました。
それに…ゼラス様は僕がリナさんを待つことを許してくれた。
だから、大丈夫だと思うんです」
「そういえば、転生してから初めて会った時、あんた確か元獣神官って言ったわよね。
元って…何があったの?」
いやぁ、しっかり覚えてますねー。ライナちゃんいい記憶力してるわ。
「クビにされちゃいました」
にっこりと笑いながら答える。
「笑いながら言うことっ?! 違うでしょうがっ!」
すっぱぁぁぁぁ…ん!!
スリッパアタック第2弾…なかなかにいい音がしたが…ゼロス様大丈夫だろうか…?
魔族は物理攻撃効かないし平気か。
「ゼラス様は僕のことを思ってしてくれたんですよ。
腑抜けはいらない。そう言われたんだけど、あの時ゼラス様は僕を滅ぼすこともできたんです。でもゼラス様はそれをしなかった。
だから僕はリナさんを待っていられた。あれはあの方なりの優しさなんですよ」
「…そう…なんだ…
……………わかった。じゃあ、一緒に行こう?
でも、結界は昔あたしが壊しちゃったから行けないこともないけど、そんな場所までどうやって行くの?
と言っても場所までは知らないけど…」
「空間を渡ります。一応人間を連れてアストラル・サイドを出入りすることもできますから。
…だからって利用しないで下さいね…」
「…ちっ…読まれてたか…。
まぁ、必要になったらお願いするわ」
…うーん、ライナちゃんの性格、ゼロス様よく把握してるわ…。
「じゃあ、いきますよ」
そう言って、ライナの体をマントで包み込む。
わかってはいてもどきどきするライナ。
不思議な違和感を感じた後に出た場所は群狼の島。闇に覆われた城(多分ホントは違うと思う)の中。
閉じていた目を開いたが、あたりは闇だった。
「………あれが……獣王(グレーター・ビースト)ゼラス=メタリオム………?
かわいい〜〜〜〜〜〜〜〜〜っゥゥ」
そう、そこには獣姿のゼラス様が寝そべっていた。
「…ゼラス様…何してらっしゃるんですか?」
「ああ、ゼロスか。
最近、といってもここ数百年だが、暇でな。
フィブリゾもガーヴも滅んでしまったし、赤眼の魔王(ルビーアイ)様は未だカタートで氷漬けだし、おまえもいないからな。
たまにディープ・シーやグラウシェラーのところに遊びには行ってるんだが、そうそういつも行くわけにもいくまい。
だから眠っていた。運が良ければけっこういい夢も見れるぞ」
と、いっても魔族である。いい夢とは、滅びの夢とか、まぁ、昔のこととかはあるかもしれないけど…。 まぁ、そんな夢である。
「で、ゼロス、そこにいるのが望んでいた娘か?」
「ええ、おかげで巡り会うことが出来ました。ありがとうございます」
言って、礼をするゼロス。
「…別に私は何もしていないぞ…」
「僕をクビにしたでしょう」
「使いものにならないが、滅ぼすには惜しかったし、かといっておまえのことだ。戻ってくることもないだろうからな。
まぁ、巡り会えたのなら良かったではないか」
少々照れながら言うゼラス様。かわいいかもゥ
「はいゥ だから、とりあえずお礼だけでも…と、思いまして」
「だから何もしていないというのに…」
「僕がそうしたかっただけです。ゼラス様。
それに…下手をすると敵同士に分かれる可能性もありますから……
いくらなくでも敵同士で会って終わりってのも嫌ですし」
おちゃらけて言ってはいるけれど、かすかに浮かぶ悲しみ。
「……そう…だな……」
それに答えるゼラスもあいまいな笑みを返すだけだった。
「では、僕はこれで…」
しんみりした雰囲気を断ち切るように言い、きびすを返す。
「…私が言うのも何だが、気を付けてな。
リナ=インバース、ゼロスをよろしく頼む」
その言葉を聞きながら、ゼロスはライナを連れて空間を渡る。
降り立った場所はどこかの荒野。
ゼロスは…そっと涙を流していた。
その顔を見ないように、そっと抱きしめるライナ。
そして呟く。
「……出来れば…敵としては出会いたくないわね…」
「…はい」
「…また、そのうち遊びに行こう?」
「…はい」
「だから、その為にはしっかり生きなくちゃ、ね。
しっかり前を見て」
「はい」
顔を上げてにっこり笑う。
そして2人は歩き出す。
自分自身として生きるために、前だけを見つめて。
なーんか、会話文ばっか……
ゼラス様出したあたりなんか、全然ライナちゃん動いてないし……(爆)
あ、このストーリー、ナレーションの部分と作者(そんなたいそうなもんじゃないだろっ!(殴))のつぶやき(つぶやきか? あれ)が入ってます。
そこらへん混同しないで下さいねー
とりあえず、シリーズとしては終わってないんだけど…
本っ当に続き書けないかも…(冗談抜きで)
基本的に1話完結形式だから、ここでやめても問題はないんだけど…ね…
今、魔族なゼロス様書きたくて、このシリーズじゃ無理ですからねー
ほんっとに魔族じゃないもん。リナのセリフにダメージ喰らってないし(特に最後のあたりなんか) ほぼ人間してますから…
そんじゃ、次は魔族なゼロス様でも書くかぁゥ
ではではーっ ここまでおつきあい下さりありがとうございますぅ m(_ _)m