見えない疵痕(きずあと)
『許さない…ユルサナイ…魔術師…』
 闇の中から響いてくる声。いくつも…幾度も……
 まるで、その言葉が言霊だったかのように、言葉の数に比例して傷が増えていく。かまいたちが起こったように。
 それでも身じろぎ一つしない。いや…傷が出来る度に多少顔を歪めてはいるが、それ以外は動かない。
 その人物は、ローブを纏い、手に杖を捧げ持っている。杖は、言うまでもなく、魔導師たる者に与えられる『英知の杖』。
 その少し後に、その杖を中心として光が溢れていく。
 闇が消え、声が消えていく。
「…なんとかなったようですね…」
 呟く。
 残ったものはただ一つの岩。そして…体中の傷。深いものから浅いものまで、いくつもいくつも。
 普段、あかずの部屋といわれるその場所から、体を壁に寄りかからせながら出てくる。
 そして一言、
「…ごくちゃん…」
と呼ぶ。
 この『楽園』には今は誰もいない。料理番ナハトールを引率に4人の弟子達は数日かかるハイキングに行っている。
 そう、エイザードと、その使い魔であるごくちゃん以外は……。
 ちなみに、エイザードは、「面倒だから」と断った。(無責任(^_^;))
 しかし、毛玉は現れない。そのかわり、エイザードとタメを張れるほどの美形が現れる。(単なる俺の趣味です(爆))
 その美形は、壁にもたれかかっているエイザードを引き寄せ、お姫様だっこ(笑)して、彼の部屋へと連れていく。
 エイザードは、あらがいもせず、彼に身をゆだねていた。

(…誰もいないからって見られる心配はないとでも思ったんですか…? そんな傷だらけの姿を見られないと思って…?
 わたしが…心配します…)
 響くものは声ではなく、エイザードのみの心に直接響くもの。
 エイザードの部屋への移動中、そう言って、傷に障らないように抱きしめる。しかし、あれだけの傷なのでひびかないはずがないということだろうか。
「…つっ…痛いですよ…ごくちゃん…」
 顔をしかめ、質問には答えず、痛みだけを訴える。
 もっとも、あれは質問というよりは、エイザードに聞かせるための独り言(なんだそれ…(^_^;))だったのだが…

 ベッドに横たえ、そっと傷口を指先でなぞりながら癒やしていく。特に、深い傷には、なるべく痛みを与えないよう細心の注意を払いながら…
 エイザードの傷を癒やしながら、他の人間が帰ってくるまでにシーツに付いた血を落としておかなければ、と思いながら。
 全ての傷を癒やし終わってから、エイザードの顔をのぞき込む。とりあえず、そこにある顔色は悪くはなかった。
 ほっとしたせいか、その場に崩れ落ちる。
 なにしろ、人形(ひとがた)になるのは数十年ぶりなのだ。体も感覚もうまく追いつかない。
 至近距離にあるエイザードの顔。
「いつまで私の上に倒れてる気ですか。邪魔ですよ」
 あきれるように言うエイザード。
 顔をずらし、そんなことを言う口を塞ぎ、そっと離す。
「…っ…ご…っ…ごくちゃん……?!」
 うろたえるエイザード。
(いくら数十年ぶりだからってたかがキス1つで………
 そんなに驚くこともないでしょう…?)
 そしてもう一度口付ける。さっきよりもさらに深く、激しく。
 肩を押し、抵抗のそぶりを見せるエイザード。
 仕方なく、名残惜しそうに唇を離す。
「いい加減にしなさい、ごくちゃん。あれだけの傷が治ったばかりなのに…
 なんのつもりですか…?」
(傷は完全に治しましたよ?
 数十年ぶりなんですから、いいでしょう?)
 そう言って、エイザードのローブをはだけていき、首筋を、鎖骨を唇でなぞる。
「ごくちゃん!!」
 ついに強い罵声が飛ぶ。無理矢理にでも押しのけようと、実力行使に及ぼうとする。
(愛してますよ、エイザード
 動作を止め、にっこりと笑う。
「…………………………
 ……痕は残さないで下さいね……………」
 抵抗を止め、あきらめたように言うエイザード。
 顔が微妙に赤く染まっていた。
 痕が残せないのを残念に思いながらも、その薄い素肌にさらに口付けていく。愛おしむように、時間をかけて。
 はじめは声を押し殺していたエイザードだったが、行為には次第に応えていき、少しずつ素直になっていた。



「…まったく…ごくちゃんを人形(ひとがた)にするといつもこうなるんですから……
 大食いだからって私まで何度も食べなくても…」
 少々ぐったりとしながら、顔を少し染め、それでも愚痴をこぼすエイザード。
 何か一言、言わなければ気が済まないのか…
(わかってて、それでも人形(ひとがた)にしているということは、本当に拒絶しているわけではないのでしょう?)
 その一言すらこうやって返される。
(まあ、仕方ないですよ。長い時を生きるにはつらすぎますからね。
 全てを知っている伴侶は必要でしょう?
 わたしはずっとあなたといますから…)

 そして2人は幸せな眠りに落ちる。

 『楽園』は今日も平和かもしれない。

 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っっ!  登場人物全員(ってごくちゃんとエイザードだけだけど……(^_^;))壊れてますぅぅ〜(T-T)
 まあ、全ては元凶のいつみゆうさんのせいにして……(笑)
 あ、そうそう、いつみゆうさん、画像ありがとうございますぅ〜
 とりあえず、樹川先生様、勝手に妙なもの作って、
  すみませんでしたぁ!!!!!!!!!!m(; ;)m
 題名は石楠華さん(華さん)から頂きました
 あと、お姫様だっこがポイントだった( ̄ー ̄)んですが、実際にやると大変なんだそうです(これはノルンさんより) 腕疲れるし、落とすわけにもいかないから しかし、俺はごくちゃんはエイザードのための使い魔だからであっさり解決させました(核爆)
 最初は内容もっとすごい予定だったんだけど、きっとみんな読めないだろうなぁ…(^_^;)なんて思って、この程度に落ち着かせました。
 まあ、ホントにだめな人はこの程度でも読めないかもしれないけど…(^_^;)  ってわけで、とりあえずできました
 あぁ、俺ってやっぱり妄想突撃大帝様の直属部下…(笑) なんせ、この程度でそうとうましな方だし…(爆)
 ってわけで、ここまでおつきあいくださった酔狂な方、ありがとでした〜

  (裏)