2人のキモチ
「ねぇねぇ、ゼロスの好きな人ってどんな人?」
何でもないようなふりで問いかけるリナ。
もっとも、ゼロスには必要以上にはしゃいでいるように見えたが。
(僕は…それほどまでに、そういう対象としてリナさんに見られていないんでしょうか…)
「魔族が人間を愛した矛盾にそんなに興味あります?
まさか、それをまとめて魔道士協会に売るなんていくらなんでも言いませんよね…」
(ずぇっんぜん違うわよ、ばかぁ…
あたしがそんなに金の亡者に見えるっての?
……人の…人の気も知らないで…)
「個人的な興味よっ。それとも、そんなに神滅斬(ラグナ・ブレード)くらいたい、ゼロス? ふふふ」
妖しげな笑みを浮かべるリナ。
(もちろん冗談だけどさ…。)
(…このまま…リナさんの手で滅ぼされてしまおうか……。
伝えてはいけない想いならばいっそ……。
でも…せめてもうしばらくは一緒に…)
「目が…笑ってないんですけど……。
…………………………そうですね。
人間とは僕らとは逆に生きようとするもの。そう言いましたね。
本当にその通りに生きている人ですよ。いつもいつも精一杯生きる人です。
でも…その分、心の中に大きなものをため込んでしまうんですよ。彼女はそれらしいふるまいは何一つしてませんけどね。
小さなものはいろいろとストレス発散しているようなので平気なようですが、大きなものに限って1人で抱え込んでしまうんです。
出来ることなら僕にもその重さを分けて欲しいんですけどね。
彼女のプライドがそれを許さないんでしょうね…」
言葉の1つ1つに想いがこもっていた。
誰よりも愛おしい相手だけに用意された言葉。
(…かなわないな……)
そう思った。
「それよりもリナさんはどうなんですか?」
「……あたし…は…。
…そうね。進む道は全然違うわ。一緒になれる相手じゃあないの。
でも、いつもいつも助けてもらった。
だけどねあいつの本心はいつもいつも闇に包まれているから全然わかんないの。
誰よりも優しくて…そして残酷な奴だわ。
次にいつ会えるか…ううん、会えるかどうかすらわかんないんだから…」
(…ねぇ、そうでしょう、ゼロス?)
1つ1つ選んだ言葉。
相手に負担をかけさせないために。気付かれないように。
「でも…好きになったらどうしようもないものね」
そう言って微笑む。
いつものまぶしい笑顔とは全然違う。
女らしくきれいな、そして1度見たら忘れられないほど鮮やかな笑顔だった。
(リナさんの好きな相手だけに向けられる笑顔。
いつも僕の前で見せてくれる無邪気な笑顔とは全く違いますね…)
「…さっき、言わなかったことがあるんですよ。
…実は、僕は彼女に振られちゃってるんですよね」
いつもの作った笑顔じゃなく、本心のせつなげな悲しげな笑顔。
(…ゼロスに…こんな顔させて…?)
「どうして? ゼロスが魔族だから?!」
(…あたしは…魔族なのに好きになったのに……)
「…違いますよ。好きな人がいるんです。
だから…リナさんは僕の分まで頑張って下さいね」
(…これが僕に言えるせいいっぱいの言葉だから………)
我慢の限界だった。思わずキレるリナ。
「〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!
ばかっ、ばかばかばか、大ばかっ!!
ちょっとぐらい気付きなさいよっ!
あたしが好きなのは…好きな相手はゼロスなんだからっっ!!」
ついつい叫ぶ。
「……へ?」
「鈍感っ! どうして何にも気付いてくれないのよっ!
ちょっとぐらい気付いてくれてもいいじゃない!」
「リナさん…?」
半信半疑で問いかけるゼロス。
「なによ…」
今さらながらに真っ赤になって答えるリナ。
その顔が今の言葉を現実だと物語っている。
「リナさんだって鈍感ですよ。何にも気付いてくれなかったんですからね」
「……なにそれ…?」
今度はリナがきょとんとする番だった。
「全部、リナさんのことを言っていたんですよ。僕が今言ってたこと全部」
「うそぉ…だって…あたしゼロスのこと振った覚えなんて…」
戸惑いながら答えるリナ。
「リナさんが、好きな人のことを語ってくれたから。だから振られてしまったと思って…」
「全部、ゼロスのことよ…?」
一瞬、お互いに黙ってしまう2人。
「……だから、リナさん。
何でも1人で抱え込まないで下さい。僕でよければ…話して下さい。
進む道は違うけど。優しくて残酷で…次にいつ会えるかわからない僕だけど、それでよかったら…」
「…うん、ゼロス…。
優しくて残酷で次にいつ会えるかわからない。それがゼロスだから…。
進む道が違う、そんなあたしでいいんなら」
こんな自分でいいならば、お互いに大事にし合おう。
やぁっと終わった。長かった。死ぬかと思った。(死なない、死なない(笑))
しかも、これは別として、1〜4はだんだん短くなっていってたし…
シリーズとしては同じかもしれないけど、全然違うような……
ちなみに、5(つまりこれ)は、全部学校の授業中に書いたもの(爆)
これホントに終わんないかと思ったし もう、どうやってくってけていいか悩んで悩んで… で、結局こうなりました。
と、いうわけで、ここまでのおつきあいありがとうございましたーっ m(_ _)m