きまぐれ
「う、うっわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
 どこからどう見ても、ファンタジーの世界。
 そんなところで少し高めの叫び声が上がるといえば、美少女がモンスターに襲われていると思うだろう。
 しかしここは城の中である。それはありえない。もし仮に城がモンスターに襲われていると仮定すれば、他にも悲鳴が響きわたっているはずである。
 とかし、この城は静かだった。さっきの声が響くまでは。
 では、何が起こったのかというと…
「どうしたっ?! 和宏!!」
 真っ先に飛び込んできたのは、彼の自他共に認める最愛の恋人……
(和:「まてこらっ! オレは認めてないっ!! 訂正しろっ、訂正!」
 星:「おや、なんで作者の空間に和ちゃんいるの?」
 和:「おまえがストーリー作り始めた時にいやな予感がして意識を半分切り離しておいたんだ。正解だったよ。
    いいからっ! その自他共に認める恋人ってのはヤメロ!」
 星:「ちっ…仕方ないわねぇ。
    直せばいいんでしょ!」
 和:「…困った作者…」
 星:「なに? そんなこと言ってると訂正してあげないわよ」
 和:「いーからさっさと直せ!」
 星:「はいはい」)
 と、いうことで、彼の前世の恋人であるアーウィスこと藤木秀人だった。
「何があったの? セラ」
「どうした、早瀬」
 続いて、エリスこと松岡祐里子とハサートこと鈴原靖俊だった。
「か…和宏…?」
 おそるおそる藤木が問いかける。
「そうだよ」
 不機嫌な、そしていつもよりも微妙に高い声。
 その緊急事態に、エリスはいつものメンバーを呼び寄せた。

 そして集合した、美弓、さっちゃん、えっちゃん、橋本、竹内、そしてなぜかフレストルとファリル。
「早瀬…おまえ、さんざん不憫だな…」
「それでも友達なのは変わらないぞ。友達以上は困るけど…」
 本当に不憫だと思っているのだろうか。
「は〜し〜も〜と〜、た〜け〜う〜ち〜」
 恨みがましい声が響く。
「かずちゃん、すっごく似合ってるよ。それ」
「うんうん、全然違和感ないしね」
「今度、いろいろ着せ替えてみたいよね」
「さらに言うと、これでアーウィスとの間になんの問題もないしね」
 さらにエリスが付け加える。
「美弓まで……」
 そして、はたと思い当たる。
「先生…もしかしてみんなを呼んだのは面白かったから、とか見せたいからって理由じゃないでしょうねぇ…」
「おや? ばれちゃったかしら」
 悪びれもなく答えるエリス。
「せんせぇ……」
「で、なんでオレ達まで呼び出されなきゃいけないんだ?
 まぁ、確かに面白いものを見させてはもらったが」
「まぁ、いいじゃないですか、マスター。
 これでまた借りを増やしたんだし、そのうち大きなことで返してもらいましょう」
 相変わらずファリルの方がしっかりしているようである。
「そうだな。
 ホントおまえはいい子だよ、ファー。
 で、どうしてこうなったんだ、セラ?
 オレ達としてはさっさと帰りたいんだが…。
 何があったか話してくれないと対応のしようかないぞ」
 それまでほとんど見せ物同然だった和宏には、天の助けのように思えた。
「俺は別にこのままでも…」
「だまってろ」
 和宏の肘打ちがしっかりと入っている。
「このままでもいいけど、和宏が戻りたいって言うんなら協力するって言おうと思ったのに…」
 殴られた場所を抑えながら藤木が言う。
「戻りたいに決まってるだろーがっ!!」
 叫ぶ和宏。当然である。普通は戻りたいと思うだろう。
「じゃ、楽しませてもらったことだし、そろそろ真面目に対策考えましょう」
 どうやら完全に逃れることができそうだ。
 そして和宏は話し出した。どうしてこんなことになったのかを……。

 夢を見ていた。悲しい少女の夢。
 幸せな恋人同士だったのに、彼女は亡くなってしまった。
 そのまま彼が亡くなっても、未練を持ってしまった彼女は、1人現世に取り残された。
 和宏は、そんな彼女に同情を寄せた。自分たちに似ている、と……。
 そして、目覚めた和宏は、自分の変わり様に叫び声をあげたのだ。
 女となってしまった自分の体を見て。

「よっぽど波長が合ったんでしょうね、彼女と。
 それと同情とが重なって彼女と同化したんだわ。
 きっと、セラの中で眠ってるはずよ。彼女。
 同化のショックでもう少しは目覚めないだろうけど……」
 あっさりと答えを導き出すエリス。
「でも、戻せるかどうかは問題ね。前例のないことだわ」
「方法がないのか?!」
 慌てる藤木。
「いいえ、もっと始末におえないわ。
 前例がないということは、戻せるかどうか以前にその方法があるかないかってことなんだから」
 瞳を伏せて答えるエリス。
「でも、セラ姫の魔力なら出来るんじゃないですか? 白の王も欲しがるほどのその強い魔力なら」
 建設的な考えを言うファリル。
「白の王ほどの魔力なら確実だろうな。しかし、白の王のところに行くわけにもいかない。つかまえてくれと言っているようなもんだ。
 かと言って、オレ達の魔力じゃあ到底かなわない。
 なら不確実とはいえ、セラの魔力に頼るしかないだろう。
 もっとも、オレ達全員の魔力を合わせればどうにかなるかもしれんが…」
 フレストルも真面目な時は真面目らしい。
「というより、同化自体、多分和宏の魔力と関わって出来たんだろうな。なら同じ和宏の魔力で元に戻せることは間違いないはずだ。
 同情がきっかけだったというなら、やはりアーウィスの魔力をベースにして、オレ達の魔力を重ねるか…それとも和宏自身でどうにかするか、だな」
 ハサートが話をまとめる。
「わかった。
 和宏はそのまま動くな。出来れば俺達が送り込んだ魔力に自分の思いと魔力を上乗せしてくれ。
 始めるぞ」
 藤木の表情が真剣なものへと変わる。
「うん」
 和宏は安心してうなずいた。

『ʼn∵∂∃∀¢ΘΨΦ:::』
 呪文の詠唱が響く。
 呪文と魔力を重ね合わせて送っているのだ。
 けれど、和宏はいまだに元に戻っていない。
 そして…
【きゃ〜、すご〜い。あたしに体があるわ〜】
 送り込んだ魔力のせいなのか、和宏の体の中で眠っていた彼女が目覚める。
「これ以上は無理だわ。やっぱりセラの魔力に頼るしかないようね」
 エリスが結論付ける。
 しかし、和宏の魔力はいつもあてになるわけではない。ということは、いつ戻れるかわからないということで……さらには、その間和宏と彼女ははたから見ていれば二重人格にしか見えない。
 彼女の意志が時折感じられて、和宏はパニックに陥っていた。
「ほら、和宏。これでも飲んで落ち着きな」
 いつの間にかハサートが紅茶を持ってくる。ハーブが入れてあるようである。
「うん、ありがとう。靖俊」

 そしてそのまま数日が過ぎる。
 和宏も、どうやら慣れてきてしまったようだ。
 もっとも、慣れてどうするのかとも思うが……。
【ねぇねぇ、藤木君って恋人なの? けっこういい男よね】
「はぁ???」
 唐突な意見に和宏は驚く。
 ちなみにここはエリスの城の和宏の部屋なので、誰にも聞かれる心配はない。
(和:「オーブで見られたらどうするんだよ。
    先生だったら隠しカメラ代わりにやりかねないぞ」
 星:「またしても…
    エリスがそれをするんなら、そのセリフ聞かれてもしらないよ?」
 和:「うっ…(ぎくっ)」
 星:「とりあえず、そういうことにはしてないから安心しとけば」
 和:「(ほっ…)」)
【今度体使わせてもらおうかしら。
 それでせまってみるの♪】
「絶っっ対に嫌だ!」
 あわてて反対する。
 その時浮かんだのは、いつものはじらいと………………嫉妬??
【いいじゃない。善は急げよね♪
 行ってこようっと♪】
 そのまま和宏の体を乗っ取って、藤木の部屋へと向かう。
 ちなみに、彼女と和宏が同化してからは何かあった時のために、みんなエリスの城に泊まり込んでいる。
 もっとも、フレストルは「なんでオレ達が…」などとぼやいていたが…。
 藤木の部屋の前に立ち、扉をこんこんと叩く。
【あたしだけど、いい?】
「開いてる。どうかしたのか?」
 そっと扉を開け、藤木の側に行く。
 和宏にはあまり出来ない芸当である。(笑)
【あのね、あたし………】
「いやだっっっ!!!」
 心を襲ったのは、強い嫉妬。
 気が付けば、和宏と彼女は分離していて、和宏の体は元に戻っていた。
 彼女は側には見当たらなかったが、浄化したようでなかった。またさまよっているのだろうか……?
「和宏? 元に戻ったのか?」
「藤木…ごめん、心配かけて。
 いつも…オレ、藤木に迷惑かけてばっかりだから…」
 すまなそうに謝る。
「俺は和宏にかけられる迷惑なら全然かまわない」
 そう言って抱きしめる。
 しかし、しょっちゅうくる、その後の殴りが来ない。(殴られ慣れた悲しい男…)
「…かずひろ……?」
「オレ…彼女に同情してた。なのに…彼女に嫉妬して……
 自分がわからない…っ…!
 でも……オレは…藤木が好きだ…」
「和宏っ!」
 その言葉を聞いたとたん、激しく口付ける。
「…ふ…藤木…」
 その激しさにとまどう和宏。
「愛してる…愛してる、和宏…」
 呟いて、抱擁をきつくしていく。
 そしてそのまま押し倒す。
 1300年の間を埋めるように、深く、深く口づけながら。
「…んっ…」
 こぼれ落ちる甘い声。
 愛おしむように、何度も何度も口付けて…
 そして藤木の手は和宏の体をまさぐりはじめる。
「…っ…あ……」
 声をあげしてまった後で、真っ赤になる和宏。
 そんな和宏を見て、くすりと笑うアーウィス。
「大丈夫。俺以外誰にも聞こえないから。
 でも、俺には声を聞かせて…?」
 そう言って、さらに愛撫を加える。
 ほてる体をもてあます和宏。
 藤木は、和宏の体中に口付けていく。特に敏感な部分を集中的に。
 一番敏感な部分に口付けられて、和宏は限界を感じていた。
 けれど、和宏にそんなことも言えるはずがなく、必死で藤木にしがみつく。
 それに気付いた藤木は、愛撫をゆるめ、そっと体を重ねていった。
 和宏の体が傷付かないように、慣らしながらゆっくりと。
 和宏が完全に限界に達した時、和宏の意識ははじけ飛んでいた。
 それと同時に藤木自身も……。

 次の朝、目が覚めた和宏は、顔から火を噴き出しそうなほど赤面した。
 ゆうべのことはしっかり記憶に残っていて、隣で眠っていた藤木を見てさらにそのことを実感したからだ。
 そしてタイミング良く(悪く?)藤木も目覚める。
「おはよう、和宏」
 極上の笑みだった。

 結局、和宏はその日、ふて寝した。
 あとでみんなにからかわれたのは言うまでもないだろう。

 題名の意味わかりませんね…(^_^;)
 一応、幽霊の彼女の気まぐれでって感じのつもりだったんだけど、実際に書いてみたらあんなことになってしまいました。
 だいたい自分は何が書きたかったんだぁ〜!(俺のことだから、きっとやらせたかっただけ(核爆))
 でも書くのに時間かかりました とくにああいうシーンは…((((((^_^;)
 キャラが何人もいっぺんに出ると動かしにくくて大変でした。…のでどこがで動いてないキャラもあったり……(T-T)
 まだまだ未熟です はい  ……昔からだけど…

  (裏)