悲しみを乗り越えて
「楽にして上げるわ、ゼロス」
 ゼラスが静かに告げる。
「あの方の元へと還してあげる…」
 さらり、と衣擦れの音を立て、ゼロスに近寄る。
 そして、力をゼロスに流し込んで……
「不出来な部下ですみません、ゼラス様」
 一言謝るゼロス。
「いや、おまえはよくやってくれた。 …リナ=インバースのこと以外は…
 おまえは私の自慢の部下だったよ、ゼロス」
 過去形なのがあまりにもせつない…
「では…な、ゼロス。……………永遠に…………」
 そして最後のとどめとなる力を流し込む。
 そして、その最後の瞬間ゼロスが考えていたのは……
 言うまでもなくリナのことだった。
「ゼロス…私の唯一の部下…
 ………ばかなこ………」
 そう言いながら、ゼロスの亡骸を抱え上げ、抱きしめる。
「本当に………ばかなこ………」
 そう言って、涙をひとしずく落とす。
 抱えていたその亡骸はさらさらと地理のように崩れ去っていき、そして完全に消滅した。

 一方、ゼロスが最後まで思い続けていたリナはというと…
 指にはめていた指環が、一度歪み、しかし元に戻る。
 思わず立ち止まってその指環をながめ、そして感じ取る。
 ……………ゼロスの死を……………
「どうしたんだ、リナ? いきなり立ち止まって…」
 そなにリナをいぶかしげに思って、ガウリイがたずねる。
「なんでもないわ。早く次の町に行きましょう。今日はそこで宿をとるわ」
 溢れそうになる涙をこらえ、泣き言を言いそうになる心を叱咤し、平然としたふりで答える。
 ……早く1人になりたかった……

 宿に着いたリナはずっと部屋にこもって、声を押し殺して泣き続けた。勝手に流れ続ける涙が止まらなくなるまで。
 こんなのはあたしらしくない。だけど……今だけ、明日になったらいつもの自分に戻るために。
 そう思いながら、1つの決意をする。
「せめて…このことをゼロスに伝えたかったわね…」
 ぽつりと呟く。
 もとっとも、年に1度しか会わないのだから、それは無理なことだったが…

 次の日、宿を出てから、とある分かれ道にさしかかった時、リナはガウリイにもちかける。
「いい加減、一緒に旅をするの、やめない?
 あたし…久々に自由気ままな1人旅がしたくなっちゃった」
「あまえさんの場合、いつも自由気ままだろ」
 すかさずガウリイのつっこみ。だてに長年一緒に旅をしたわけではない。
「いいじゃない! 別に!
 1人で旅したいったらしたいんだから!!」
 リナ必殺、わがまま(笑)
「………それは…ゼロスが理由か……?
 あいつになにかあったんだろう……?」
 ……さすがは本能で生きる男…どうやったら気付けるんだ、そんなこと…。
「なあ、リナ…オレじゃあゼロスのかわりになれないのか?
 ずっと…独りで生きていくつもりなのか…?」
 それは真剣なガウリイの想い。はぐらかすことは許されない。
「…ホントのことを言うわ。
 ゼロスは滅んだわ。最後まであたしの心配してくれた。この指環がゼロスの意志を伝えてくれたわ。
 たしかにたとしゼロスは愛し合っていた。その想いを、嘘だということにしてまで。
 でもあたし、ゼロスに伝えられなかったことがあるの。ゼロスだけじゃなく、誰にも、ね」
「……まさかリナ…っ! ゼロスの後を追うつもりじゃ……!!」
 最悪の事態を想像して青ざめるガウリイ。
「やんない、やんない。そんなこと」
 そう言って手をぱたぱたとふる。
「あたし、それほど悲観主義じゃないし、そんなことしたら、ゼロスが悲しむか怒るかするだろうし。
 そうじゃなくてね、あたし郷里に帰ることにするわ。
 そこでゼロスの子供を産むの。ずっと2人で暮らしていくわ。
 それに郷里にはあたしの家族もいるし、ね」
 しばしの沈黙が訪れる。長いようで短い時間。
「そ、か。 リナが自分で決めたんならきっと大丈夫だな。
 そしたらオレは、また傭兵稼業にでも戻るさ。
 そのうち遊びにいくよ。ゼフィーリアだろ?」
「うん、じゃあね。ガウリイ」

 ずっと同じ道を歩いてきた2人は、この道のように別れ、別々の道を歩むことになる。
 また、いつか出会うこともあるかもしれない。
 ――交わりたくて交われなかった、大事な道もある
    そうして新たな道を歩むことになる
    悲しみを乗り越えて――


あーあ、ゼロス様滅ぼしちゃいました 一体何度目だ……((((((^_^;)
まあ、前からそう決めてたけど…(爆)
思うんだけど、いつも最後の締めがうまくいかない……
誰か教えてへるぷみぃ……