狂った果実
「みんなには悪いけど…あたし、旅をやめるわ」
 ある日、静かにそう言った彼女はリナ=インバース。
 しかも場所が場所だ。街道を歩いている最中である。
 当然全員が驚き、立ち止まり、リナの方を見る。
「よく、考えたのよ。これでも。
 でも、昨日会って…決めたの。あたしもね、女の子だもん。幸せになりたいの。
 もう、みんなと会うこともできなくなると思うけど…
 ごめんね。バイバイ」
 そう言った彼女の後ろに現れるゼロス。
「僕ももう、みなさんとは会えなくなるでしょうけど…
 それでは」
 リナを抱き寄せ、2人は消える。空間を渡ったのだ。

「…本当に…あれでよかったんですか?」
 ゼロスの指したものは別れ方。
「いいのよ。質問攻めにされるだけだし。長引くほど別れられなくなるでしょ?」
「でも…感傷にひたっていられるもは、あれが最後だったんですよ?
 これからはそんなひまも、なくなる…」
 2人の選んだものは逃亡生活だった。
 裏切り者として…ゼロスは魔族に追われる。全ての魔族から。
「選んだのは、あたしよ。あたしが決めたんだから…ゼロスには文句言わせないわ」
 その別れ方も…共に追われることも。
「そうですね。僕も…選んだんですから」

 かといって、逃亡者らしく生活する2人ではなかった。
 相手が魔族なので、裏通りよりも表通りを選ぶ方が安全だったのだ。
 リナは騒ぎをよく起こす。堂々と人の多い場所を通るため。主に…食堂で。
 当然、長い旅の中でいろんな人に出会うこともある。
 そして、意外な出会いも、ある…

「リナっ!!」
 森の中、聞こえてきたのはなつかしい声。
「ガウリイ…?」
 リナの振り向いた先にあったのは、必死なガウリイの顔。
 別れてから、どれだけたったことだろうか。全然変わっていない。
「リナ…」
 駆け寄るガウリイ。そして………………
 リナが崩れ落ちる。
「………リナ…さん……?」
 ゼロスが呆然と呟く。
 ガウリイは、抜き身の剣を持っている。その刀身を、赤く染めた…
「…おまえが…ゼロスと行っちまうから…」
 ガウリイが呟いている。しかし、ゼロスの耳にも、ましてやこと切れてしまったリナの耳にも、届くことはない。
(大丈夫よ。あたしとゼロスが一緒だったら、よっぽどのことでもない限り、負けないわよ)
 勝ち気に笑ったリナの顔がゼロスの頭に浮かぶ。
 なのに、これは……

                 ――カエッテオイデ――

         ――カエッテ、オイデ…?――

 心の中で聞こえる囁き。
 ゼロスはそれに身を任せる。
 リナの体を抱え、そして…
バシュッ!!
 ゼロスの体が霧散する。

「やっぱり…僕達の願いは、かなうことはないんですね…」
 そんな囁きだけを、風の中に残して…


 ダークなゼロリナっす。俺にしては珍しくガウリイ→リナつき。
 残されたガウリイ完璧無視してます。俺自身どうしようか決めかねたので…。なんか、後追いさせるのも気にくわなかったし…だいたい狂ってるしね。
 リナがなにやら大人っぽくなってるなぁ…気にしないで(^_^;)
 あと、最初はリナに「やっぱり…だめだったのね…」みたいなことを言わせる予定だったのに先に死んじゃったのでゼロスが代わりに言ってます。ちょっと変わっちゃったけど…
 台風で電車が一本止まってる間に思いついたのですが、この時点で俺はダークじゃありませんでした。駅から家まで帰る途中にはダークになっちゃいましたけど…土日の間に(一応)復活し、続きを書いている。つまり、これ書いてる間にダークだったのってないんですよね。
 ちなみにその時の超ダークな気持ちは…別の小説で使ってみようかと…でもストーリーずれちゃう可能性あるから使わないかも。
 …さてどーなることやら…?