混沌への回帰
紅い髪を持つ、強い心を持った少女。
短い時間の中で、必死に生きようとしている。
その思いをこの手で摘み取りたい。この手で滅ぼしてあげたい。
魔族特有の独占欲。
「冗談じゃないわ。あたしは生きたいの」
想いを告げたらそう断られた。拒絶以外の何物でもない言葉。
わかってはいた。彼女が好きなのは、きっといつも側にいるあの男。
「知っていますか? 魔族って結構わがままなんですよ?」
にっこりとした顔を崩さぬままそう告げる。
彼女から流れ込んでくる負の感情は極上の味だった。
そして彼女は混沌の言葉(カオス・ワーズ)を紡ぎだす。
――悪夢の、王の、一片よ…
世界のいましめ、解き放たれし、
凍れる黒き、虚無の刃よ…
それは全てを切り裂く闇の刃の呪文。…あの方の……。
けれど、その呪文は途切れ途切れ。…なぜ…?
我が力 我が身となりて
共に滅びの道を歩まん……
空間を翔び、彼女の目の前へと行く。
神々の、魂すらも打ち砕き――!
最後の言葉は早口だった。
彼女の前へと翔んだ僕は、その手を彼女の首にかける。
呪文は…発動しなかった。
混沌の言葉は紡いでも、それを解放する言葉そのものは発音されなかったからだ。
いくら首をしめていたとはいえ、それぐらいは唱えられるはずだった。
彼女は自らの意志でそれをしなかったのだ。
疑問符ばかりが僕の頭の中を占めていく。
それでも僕の手は彼女の首に絡みついていた。
「恋や愛と、憎しみとは紙一重ね…」
そう言って鮮やかに笑う。
手に力を込め、彼女が息絶えるのを確認して…。
歓喜の感情のままに笑う。
その瞳からは涙がこぼれていたが、本人は気付いていなかった。
次に翔んだ先は群狼の島だった。
そして1人の美女の前でひざまづく。
「ゼラス様、僕を滅ぼして下さい」
はっきり、きっぱりと言う。
「喜びと…悲しみと切なさと…。ずいぶんいろんな感情が流れ出しているわね…。
確かにそんな感情を持つ部下はいらないわ。
でも……あなたは幸せ者よ、ゼロス。
だって創造主に滅ぼされるんですの」
少し…切なげに言うゼラス。
「………恋や愛と、憎しみとは紙一重…」
ぽつりと呟く。
「どうしたの?」
「最後に…リナさんが言った言葉なんです」
そう言ったゼロスの表情は見えなかったけれど。
「そうね…魔族にとっての愛は人間にとっては憎しみにあたることだから…。
愛と憎しみ、魔族と人、実際には大して変わりないのかもしれない。
いいえ、もしかしたら同じかもしれないわね。感情の方向が違うだけ。
けれど…だからこそお互いに相容れないのかもしれないわね…」
「やっぱり僕は幸せな魔族なんでしょうね」
そう言ってくすりと笑う。
「次に創るときはもっと魔族らしい魔族を創ることにするわ」
ゼラスの力がゼロスの中に流れ込む。
「お先にあの方の元に行かせていただきます。
そのうちいつか、混沌の海で………」
その声が消えたとき、ゼロスは完全に消滅していた。
「……次に部下を創るのは…当分後になりそうだけどね……」
ゼロスが滅んでしまってから、ぽつりと呟く。
この感傷は魔族と人間が同じだからなのか、それともただ人間に感化されたからなのか……。
魔族の望むものは混沌への回帰。
またいつか、混沌の海で巡り会おう……。
…この話、魔族なゼロス様のはずだったのに……
後半なんかはゼラス様による魔族論…(謎笑)
ゼロス様がリナを滅ぼして、で。ゼロス様がゼラス様に滅ぼしてもらうってのが最初からの案で、
とりあえずその通りには進んだけど……なんかゼロリナじゃないかも……
創造主に滅ぼされるのが幸せってのは言わせたくって無理矢理入れてました。あと、愛と憎しみは紙一重ってのも。
話がどこかずれたのはこれを無理矢理入れたせいだろうか……
……なんか、いつも思うんだけど、俺の書く小説って会話文ばっか……はぁ…
……次書く予定がないんだよなー…実は…
他にもやることがないわけじゃないんだけど…
だけど、授業中に原稿やらなくなると暇になるよなー(核爆死)
ではでは、みなさま、またいつか
読んでくれてありがとうございます m(_ _)m