癒やし
――たったひとり、残されたのは私だけ、ですか……――
 彼を残し、彼の師匠は死んでしまった。
――結局、いつも私だけ取り残される。皆、先に死んでしまう…――
 いつも、そうだった。
 けれど、今回、いつもと違ったのは…
 それは、彼が大事にしていた相手だったということだろう…

(………エイザード、大丈夫ですか…?)
「………ごくちゃんですか…勝手に人形(ひとがた)をとらないで下さいよ…」
 声は、届いている。それに対する反応も返す。
 しかし…感情がかけらもこもっていない声。
 何かを見ているようで、何も見ていない瞳。
 まるで、人形(にんぎょう)のような…
(…エイザード…)
 さらに語りかける。
「…なにか…?」
 全てを瞳にも心にも映さずに…
 結局、彼らはそのまま数日を過ごす。

(…エイザード…)
 何度目、いや、何十度目にもなる呟き。
「はい…」
 返ってくるのは、やはり、虚無的な答え。
 そんなエイザードを抱きしめ、そしてくちづける。
「…え…? あ……」
 さすがにこれには驚いたのか、エイザードが戸惑っていた。
「………ごくちゃん……?!」
 それは驚きに彩られてはいたものの、間違いなく感情で彩られた声。
(エイザード…よかった……)
 ほっとした声。そして、強く抱きしめる。
「…いきなり何を…??」
 それとは裏腹にパニックになっているエイザード。
(これ以上、あんなあなたを見ていられなかった…)
 エイザードを離し、目をそらしながら、自嘲気味に、呟くように話す。
「…だからってあんな方法で戻そうとすることもないでしょう?」
 エイザードは、少々、怒っているようにも見える。
(限界…だったんですよ…本当に……
 私は、あなたが一番大事だから…
 その目も、その心も、何も映さないなんて…私を映さないなんて耐えられなかった…!)
 苦しげに吐き出される言葉。
「ごくちゃん…?」
 なんだかわからず、きょとんとしているエイザード。
 そんなエイザードをまっすぐに見つめ、ごくちゃんは話し始める。
(愛しているんです。エイザード…
 私は、今までずっとあなたの側にいた。だから…いろいろ知っている。
 心配なんです。あなた、すぐに壊れてしまいそうで……
 あなたが自分自身を殺そうした時…私がどんな想いをしたと思っているんですか…?
 私は…あなたを愛しているんです。エイザード)
「けれど、私は……幸せになることは……!」
 否定するエイザード。
 エイザードがそう言うだろうということは、ごくちゃんには予想はついていた。
(わかっています。あなたの背負っているもの、抱えているもの。
 わかっているから言ってるんです。
 私は、たいしてことはしてあげられないかもしれない。けれど…せめてあなたの側にいたいんです。精神安定剤でもいいから…
 あなたを愛していたいんです)
 予想はついていたからこそ、想いを伝えていなかった。
 けれど、それももう限界だったのだ。
 何度も壊れそうになるエイザードをだまって見ていられなかった。どうしても。
 それが…たとえ、禁忌であっても…
「……私で、いいんですか…?
 そんなこと言われたら、私はすぐ甘えてしまいますよ? うっとおしく思われるようになる頃には、私はもう、自制できなくなっているかもしれませんよ?」
 多分、不安なのだろう。精神的に弱くなれば、後でつらくなる。
(好きなだけ甘えて下さい。私はそれを望んでいるんですから。
 1人で抱え込まないで…私はずっと、あなたのために存在するんですから)
 それが限界だったのだろう。張りつめた糸が切れたように、急にごくちゃんにしがみつく。
「ずっと、私を支えていて下さい! 私を、見捨てないで下さい!
 お願い、ですから……独りに、しないで…!」
 いつも、そうだった。心の中の本音をひたすら隠して、平気なふりをする。けれど、実際に心の奥に眠っている感情は、誰よりも強い、寂しさ。
 抱きしめ、そして、ささやく。なだめるように…
「あなたを、護ります。全てのものから…」
 寂しさも、悲しみも、そしてあなたに害をなそうとする全てのものから…」
 そして、もう一度、くちづける。
 優しく、優しく、そして深く。
 しがみつかれた腕をそっとはずし、ローブをはだけていく。
 思ったよりも白い肌にドキリとする。
 しかし、その肌に無惨に残る刺青を見て、不快な感情がよぎる。
 それに気付いたか、エイザードが告げる。
「ごくちゃんのせいじゃないですよ。それは私自身の行いの代償、その烙印なんですから」
 ばかなことをしましたよねぇ…。そう呟くエイザード。
(…確かに私のせいではないかもしれない。けれど…あの時、私はあなたを止められなかった。エイザードの背負うものを増やしてしまった…)
 後悔の言葉。
「でも、ごくちゃんが一緒に背負ってくれるんでしょう?
 だから私は耐えることができる」
「当然です」
 一言答え、押し倒し、その刺青を唇でなぞる。(刺青の形知らないのにこんなこと書いてていいのだろうか…(^_^;) あとでどうなろうと知らないよ(笑))
 刺青の上に、赤い跡がいくつも散っていく。
 他にも、刺青の上だけでなく、その白い肌にも、いくつか。
「……んっ…ぅ………」
 快楽に耐えきれずあがる、甘い、エイザードの声。行為に慣れていないせいか、敏感なようである。
 色っぽいというよりも、艶っぽい美しさ。
 そんな声がもっと聞きたくて、体に眠る快楽をさぐりあてていく。
 そして、最も敏感な部分に触れる。
「…ちょっ…と、ごくちゃん……!」
 顔を赤く染めながら抗議の声をあげるエイザード。
 けれど、唇でふれると、途端、それは嬌声に変わり、かき消される。
(あなたを傷つけるようなことはしませんから…安心して下さい)
 さっきの抗議の答えともつかない言葉を返し、さらにその奥へと唇を移動させる。
 そしてその固く閉じた部分をほぐしていく。
「…ぁ……!」
 再び、唇にキスを落とし、そして体を重ねていく。
 ごくちゃんにしがみつくエイザード。
「ずっと…離さないで下さいね…」
――私には、あなたしかいないのだから…――

「どうしたんですか? ごくちゃん。沈んでいるように見えますけど…
 やっぱり…迷惑でした…? 後悔、しているんですか…?」
 不安げに問いかけるエイザード。
(違います! そうじゃない!!
 けれど…私はあなたの弱みにつけこむようにしてあなたを手に入れた。
 すみません……)
 後悔しているわけではない。けれど…ある意味、これも後悔しているといえるかもしれない。
「…まさか…私の方が後悔しているとでも…?
 冗談じゃありませんよ。いくら精神的にもろくなっていたからって…私があんなこと、許すとおもっていたんですか?」
 怒ったようにいうエイザード。
「ごくちゃんだから! だから許したんです。
 確かに…そういう相手として考えたことは一度もありません。なにしろ私は、あの時から…自ら幸せになることを禁忌としていましたから…
 でも…そういう相手として…許せるのはごくちゃんだけだって…気付きましたから。
 …………………まったく………なんてこと言わせるんですか……」
 赤くなりながら言うエイザード。
(愛してますよ
 くすくす笑いながらくちづける。
(たとえ禁忌によって…何があっても…)
 再びエイザードをベッドに沈める。
「え?! ちょっと待…」
(待てません

 そうして2人はしばらくの間、蜜月をすごす。
 2人だけのために…
 そこには禁忌など存在しなかったかのように…


 終わった…妖しいシーン書いてるあたりからスランプに入っちゃって…このまま終わらないかと思いました
 なにより…妖しいシーンは脳味噌がけっこう壊れてないと難しいんですね(爆) まぁ、なら書くなってカンジですが…期待してくれた人もいるようなので(おひ)
 禁忌がどーのこーのは想像です。過去にナニがあってもおかしくなさそうだし…エイザード。背負うもの等は…なんとなくエイザードが人外のような気がして…その種族の中でも特殊なのかなぁ…と。ここらへんはリル・ディーンのイメージが…(爆)(わかる人いるかな?) 禁忌ってのは、エイザードが何かして…それで自分に枷をはめたというか…そんなイメージです。…一番最初の三日月様のイメージかもしんない…(爆)(なおさらわかる人少ないかな(爆)) 性格もちょっと三日月様入ってるみたいだし… ごくちゃんは、アルフィージとゼロス様とサフィアさん(オリキャラ)を足して4で割ったような… ああ、今回ごくちゃんはちょっと押しが強いです。第1,2弾のごくちゃんは押しが強いようで弱く、弱いようで強いのですが…今回はちょっとがんばってもらったんです。
 さて…イメージ破壊にいそしんだところで……
 苦情大募集中っ!!
 ……さて、逃げるか…………

おまけ?

 その蜜月を破ったのは、偶然訪問してきたナハトールで、ごくちゃんは人の気配を感じたのかいつもの毛玉に戻っていた。
 ナハトールはと言うと、声をかけても返答がなかったので、勝手知ったるなんとやらで、エイザードの部屋まで上っていった。
 もちろんそのエイザードは惰眠をむさぼっていたが…
 そのエイザードを起こそうとして、体中に散っているキスマークを見つけ、そうとうばつの悪い思いをしたらしい。
「あ、すみません…」
「いや、悪かった…」
 お互いに謝り、ナハトールは部屋を出、エイザードはローブを身につけた。

「恋人、いたのか…」
 驚いたように言うナハトール。
「いえ、まあ…一応そうなりますね」
 苦笑するエイザード。
「幸せになるのを自ら拒んでいるようだったが…いいのか?」
 ナハトールは勘がいい。だからこそ渡り剣士としてやっていけたのかもしれないが。
「気付いてたんですか…
 そんなもの、全部壊してくれたんですよ」
 にっこり笑いながら言うエイザード。
 ごくちゃんを見るその目が、前よりも優しくなっていた。

 ナハトールの口調おかしいですね…(^_^;)
 おまけとゆーかなんとゆーか…なんとなく オチを付けたかったのかもしれません(笑)
 どーゆー反応するかと思ったけど……大人ですねー 慌てず騒がず まあ、少し焦ってはいたみたいだけど
 …書いて何があるのだろうか…(^_^;)
 ってよく考えたら俺の小説ってみんなそうだな……(爆死)
  (裏)