NEXT終了後のドタバタコメディ(後編)
シルフィールの言いたいことはわかる。が、
「認めたくはないけど、ゼロスと本気で戦ったらあたし達に勝ち目はないわ。
まさか、重破斬使うわけにもいかないし、竜破斬なんかいくら連発したってたいして効かないし」
ホント、認めたくなんかないけどさ。
「……そんな………」
シルフィールのそれを何もなかったように聞き流して、あたしは続ける。
「で、この娘がシルフィール=ネルス=ラーダ。サイラーグでは巫女をしていたこともあるの。
んでもって、こっちがナーガ。ある意味、とても恐ろしい奴よ」
「シルフィールさんにナーガさん、ですね。
おや、ナーガって聞き覚えのある名前なんですが……思い出せませんねぇ。
僕ももう年ですかねぇ」
相変わらずニコニコと喋る奴である。言葉と表情が合っていない。
「で、シルフィール、ナーガとの関係は?」
これが聞きたかったのよねぇ。
楽しみ、楽しみ。
「え、ああ、私が巫女だった頃の同僚だったんです。すごい魔力をもっていたんですけど、どうやら巫女が性に合わなかったらしくて、神殿を飛び出して旅に出た、って聞いてたんですが」
まだゼロスの強さに呆けていたのか、シルフィールは、急に話を振られて一瞬戸惑った。
それにしても……
「ナ……ナーガが巫女………?!似合わなすぎるっっ!」
でもそういえば、けっこう白魔術扱えるのよね、こいつってば。
そう考えれば納得いくけど……ホンットに似合わないわ。この組み合わせ。
「あ、そしたら神殿でも以外と魔力のコントロール下手だったんじゃないの? 術、暴走したりとか制御出来なかったりしてない?」
ナーガのそれで、あたしがどれだけ迷惑かけられたか。
「暴走とかはなかったようですが、たまに治癒をかけたら復活くらいの効果がでたことがあったみたいですけど」
運のいい奴ら。まぁ、攻撃呪文使うことが少ないせいかもしれないけど。
「ああ、思い出しました。
ナーガさん、ですよね。
どうりで聞き覚えがあるはずです。
この人は人間と高位魔族の混血ですよ。この人の父親が海王ダルフィン様の神官、つまり海神官で僕の元同僚だったんですけど人間の魔導師と恋に落ちちゃって。
それを知ってもその人間が受け入れてくれて、それでそのまま人間のフリして人間界で暮らしてたんです。 その娘さんの名前が確かナーガさんと言いました。
水か氷系の術が得意でしょう?」
確かに……。どんなに寒い時でもすぐ氷系の術使われて迷惑した覚えがある。
「ですから強い魔力があって当然ですよ。
コントロールできないというのは、ちょっと情けないのですが」
冗……談……。ただ者じゃあないとは思ってはいたけどさ、あれだけ変だったから。
しっかし、ゼロスといいナーガといい、高位魔族っては変人の集まりなのか、おい……。
「あ、そういえば昔よく、父さんとかくれんぼしたけど、その時、いつも見つからなくて、後から聞いたら精神世界に隠れてたって言ってた覚えがあるわ。すっかり忘れてたわね」
のんきに言っているナーガ。でもその内容は……。
人のことは言えないけど、何て親子なんだ。おい……。
んな堂々と魔族だってバラさんでもいいだろうに。しかも、子供とのかくれんぼ程度で……。何考えてんだ一体………。
ゼルもアメリアもシルフィールもあまりのことに絶句している。
さすがのゼロスも驚いてたようだ。
何もわかってないガウリイと当のナーガだけがのほほんとしている。
「なーに、深刻な顔してんのよ」
そう言ってあたしの背中を叩いたのは、
「げげ!マルチナ!」
「オレもいるぜ」
「ザングルスまで!何でこんなところにいるのよ!!」
「あんた達を見掛けたから来てみただけよ。
それに何なのよ、その『げげ』ってのは。人を何だと思ってるのよ。
まあ、いいわ。あたしは今、幸せですもの。
幸せついでに見掛けたからおごってもらおうと思って」
「あら、あなたもリナにおごってもらうの?
気が合うわね。わたしもリナにたかるのが生きがいなのよ。
これからは2人でリナにたかりましょう。
というわけでリナ、あなたはわたし達にたかられる運命なのよ。
ほーっほっほっ」
「オーッホッホッホッ。我がゾアメルグスター様の呪い、その身にしかと受けるがいい」
この2人、そっくり……。
それにしても……。
「ナーガ、勝手に人の、いいえ、あたしの運命を決めるなんて許さないわよ。
マルチナ、そんなもの呪いじゃないでしょうが。
しまいにゃ、全員、ぶっ飛ばすわよ!!」
「ひどーい、リナさん。あたしは関係ありませんよ」
「わたしもですわ」
慌てて言うシルフィール。
「そうだ。オレの知ったこっちゃない」
「オレもリナに飛ばされるのはごめんだぞ」
「……僕は平気ですが……。でも嫌ですので」
「ほーっほっほっ、そんなものでこの『白蛇』のナーガがどうにかなると思って?」
「あたしにはゾアメルグスター様の加護がついてますわ。
ダーリンにもね」
「ああ、まあな。
でもやっぱ、あいつにぶっ飛ばされるのは、あんま気が進まねぇな」
確かにみんな、一発や二発ぶっ飛ばしたところで、どうにかなる相手じゃないわ。
くっそ、くやしい。
いっそ、ゼフィーリアに帰って、郷里の姉ちゃんにぶっ飛ばしてもらおうかしら。
いや、その前にあたしが危ないか。
「わかったわよ。で?
結局今までのは何だったわけ。
騒いでただけじゃない。
これから何すんのよ。やっぱ、何か食べに行く?」
「そう言うからには、やっぱりリナのおごりね。決定〜〜」
「さすが、ゾアメルグスター様。
さ、いきましょ、ダーリン」
これ以上言っても埒があきそうにないわね。
「しゃーない。全部あたしがおごるわよ。
そのかわり、ガウリイ、明日1日は止めないでね」
ふふふ、お宝ぶんどりまくってやる。盗賊いぢめしまくってやる。
盗賊殺しの由来をとくと思い知らせてやるわ。
うふふふふ。
「なあ、今のってやっぱ、あれだよな」
「多分な。オレは止めんぞ。
痛い目に遭うのはごめんだ」
2人ともわかってるみたいね。
「悪が滅びるのならそれでかまいませんけど」
「僕もそれがリナさんだと思いますし」
この2人はやっぱ、論点ズレてるわ。
「よっしゃー。食べまくるまよ。
このわたしの食欲を甘く見たのが運のツキよ、リナ」
「リナのおごりだって。
ダーリン、いっぱい食べましょうね」
「…そうだな。
おごってもらって、明日は止めないようにしておこう」
そして明日には盗賊達の叫びが響きわたることだろう。
おわり
終わりました
ちなみに、これを書いた当時、ナーガ = グレイシア という説を知りませんでした
のため、こんな物が出来たのです
知ったからって後から書き直すのもめんどうだったし……
俺はそーいう人間なもので…(いや、某所では魔族名乗ってるけど…)
じゃ、そんなわけで
ここまで読んでいただいて、ありがとうございましたっ