言い争い?
 殿下ことダナティアが、扉を壊すような勢いで、ドアを力一杯閉めて出ていく。
『なぜわざわざ誤解を招くような発言をするんだい?』
 頭の中で響くその声に、
(……これは幻聴というものだろうな…)
と納得する。
『あんた、こないだあたしを認めたくせに幻聴って言い切る気?』
 そう、これはサラのもう1つの人格の声。通称B(ブラック)サラと呼ばれている。
 このサラが、頭に強いショックを与える・深く酔わせる、などといった行為で意識をなくした場合に出てくる。
 その頭の中で沈黙したサラに向かって、Bサラは言葉を続ける。
『わざわざ冗談めかして言うからなおさら怒るんだよ。
 いっそのこと、素直に本音を言ったらどうなんだい?』
(しかし…こんな時にどういった言葉を言っていいのか、よくわからない。それに…もし受け入れてもらえなかった時に、私はどうしたらいいか、その対処の仕方も…
 忘れ方すら、私は知らないんだ)
 その言葉にBサラは少々考え込んだが、
『夕食の時にちょっとあたしに代わりな。
 あたしがどうにでもしてやるよ』
と言った。

「殿下、ちょっと聞いて欲しいことがあるんだが…」
 夕食の席でそう言ったサラに対してダナティアは
「何かしら? あたくしは聞いているから、どうぞ勝手に言って頂戴」
と、そっけない。もっとも、普段からこんなものだが。
 言うことを言ったサラは、そこで意識をBサラにバトンタッチした。
 サラの体を使えるようになったBサラはがたん、と席を立ち、
「殿下! とっととあたしのものになりな!!」
と叫ぶ。
 その瞬間、全てが止まった。全員の動きも思考も。
 そして更に、熱いという理由で魔術の練習と称して殿下が吹かせていた涼風も、殿下の意識の影響を受けたのか、ぴたりと止まる。
 あのごくちゃんでさえ、転がる惰性運動を止めていた。
「私の別人格に素直になれと言われて…わからなかったので彼女にまかせたのだが……これが彼女の意見らしい」
 さすがのサラもこれは予想外で、体を取り返した後、言葉を綴る。
 その時、全員の心の中で思ったことは同じだった。
(………Bサラ(ちゃん)って一体…!?)
「…その…出来れば今の言葉は忘れて欲しいんだが…
 あと、すまないが先に休ませてはもらえないだろうか」
 もちろんあんな衝撃的なセリフは忘れられるはずもないが、とりあえずそれに頷く。
 そしてエイザードは、もちろんサラにその許可を与えた。

 そのまま退出したサラは知らないが…
 この後、マリアが
「殿下ってサラちゃんに愛されてるんだね」
と言い、殿下はそれが聞こえた様子もなく放心して、風が暴走していたりした。


 ふっふっふ ついにやったわ! Bサラ×殿下 …何か違うような気もするが……(^_^;)
 内容的にはサラ×殿下を応援するBサラだし… 言い争いにならない……でもBサラはああいう愛情表現をしたわけです。やっぱり、サラもBサラも元は同じだし、感覚(←何の?(笑)←ちなみに深読み可(死))とか共有してるから、サラが殿下とくっつけば、自分もそのおすそわけがあるというか…そんな感じかな?
 性格がかなり狂ってるうえ、長らくお待たせしてすみませんでした…m(_ _)m

  (裏)