冷凍室から シャリシャリシャリ 氷をかく音が聞こえる 今は午前2時 扉がはち切れて 氷の群が飛び散った 台所中に 廊下を這って 階段を滑り上がる 音もなく あなたの眠る寝室の ドアの隙間から雪崩れ込み 愛しいあなたの熱を 癒してあげる 素足の指からふくらはぎ 太股から股間へ 下腹部からおへそをかすめ 背中と胸を擦り上がり 首筋から口の中へ 全身の熱を奪いながら あなたが寝言を言う度に シャリシャリシャリと 噛み砕かれる それもまた心地よく 夢の中まで入り込み 全ての熱を奪い去る 寝苦しい熱帯夜も 息苦しさと共に終わる 気管支から肺胞へ そして毛細管を食い破り 滲み出たあなたの鮮血に染まって 氷イチゴの夜になる