平成9年度前期アルコール・セミナーたより(No.1)
(平成9年4月18日)
優しい春の日ざしが、少しづつ強くなり、初夏を思わせるような日もありますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
さて、平成9年度前期アルコール・セミナ−が、新保健所にてスタートしました。皆さん、新しい保健所の場所には戸惑われたようですが、真新しい場所での講座は、気分が新たになったのではないでしょうか。
記念すべき新保健所での第一回の講座は富山市民病院、吉本先生による、『アルコール依存とは』をテーマに行われました。ではその内容についてご紹介します。
■人類とアルコールの関わり
人類の発生以前に、猿が果実の発酵した酒を飲んでいた。
人類の発生とともにアルコールとの関係があったと思われる。
アルコールは、最初は宗教的儀式、医療に使用されるが、次第に嗜好品となる。
その後、アルコ−ルは一部の特権階級のみが日常的に飲酒(問題を持った人もごく一部の人に限られる)。
産業革命後、アルコールの大量生産により消費が増大、アルコールでの問題も大衆化。
現代は、ある海外の精神科医は、「アルコールがあるからこそ現代社会が成り立っている。」というほど、ストレスフルな時代である。好きな生き方が出来るようで、出来ない(価値観の多様化、複雑化)社会となっている。アルコ−ル依存症蔓延する土壌がととのったのである。
■アルコ−ル依存が形成される要因
3つの要素が複雑に絡み合って発生
@人の要素
アルコ−ルの摂取によって快感効果をもたらす強さの個人差
性格傾向
成育過程の影響
A環境の要素
アルコ−ルの値段など
アルコ−ルの影響についての情報を得る機会があったか
B薬物の要素
依存になりやすい薬物としてのアルコ−ル(サルによる実験では、カフェインによる精神依存よりも32〜64倍以上の強さがあるという報告がある)
■依存とは
@次第に増量しないときかなくなる
A薬が切れると激烈な禁断症状が出現(身体依存)
B薬を得るためには犯罪も犯すという強烈な欲求が生じる
以上3つを満たすと依存という
■依存と中毒の違い
依 存→自分の意志でかつ特定の状況のもとで、アルコール性飲料などその急性の薬物の効果を求めて、繰り返し飲むこと
中 毒→自分の意志とは関係なく、体内に吸収された結果生じる中毒状態
■アルコ−ルという薬物の特性
依存性薬物の中でも、アルコールは大変な薬物
依存になるには長時間かかるが、一度依存になってしまうと麻薬などの薬物と大差ない影響(身体依存や精神依存)がある。
■逃避的な飲み方
@リラックスするため
A緊張した時に必要
Bすべてを忘れるため
C心配事を忘れるため
D気分をよくするため
*アルコ−ル依存と、不安・葛藤・抑うつとの関係が強い
■アルコ−ル依存症は新生への入り口
アルコール依存症の治療の過程のなかで、人間的に成長する場ともなる。
依存症になったことは、アンラッキーだったが、深みのある人間となるチャンスであり、違った人生も開けてくる。
病気を逆手に、前向きの人生開拓を。
さて、平成9年前期第1回アルコール・セミナ−はいかがだったでしょうか?
今後も、引き続き受講し、アルコールの害について学び、自分の生き方について考えてみませんか?
先日、アルコール・セミナ−を受講しておられる方が、「お酒のことで相談に来られた方に…」と少し、恥ずかしそうにかわいい本を持って来られました。 娘さんが小さい頃の体験をもとに書かれたものを、ご両親が自費出版されたものでした。
童話「涙がくれたおくりもの----お酒とたたかっためぐのお父さん」
横田 映代 著で、『めぐのお父さんはアルコール依存症とい病気で、お酒ばかり飲んでいました。…… (中略)20年後、めぐのお父さんは、病気とたたかう決心を自分でしました。
そしてめぐは、同じ悩みをかかえている人のためにあるお話を書き始めたのです』あらすじより。
吉本先生のお話の中にもありましたが、確かに、依存症となったことはアンラッキーだったかもしれませんが、一言で言えないようなつらい体験を乗り越えたあとにくるごほうびは、なんて素敵なものだったでしょう。
とってもすてきなお話でした。ぜひ、皆さんにも読んで頂きたいと思います。 保健所に数冊ありますので、ご希望される方は是非、お知らせください。
(文責:杉本留美)