平成11年度前期アルコール・セミナーたより(No.2) 

(平成11年5月21日)



 6月にはいり半袖姿もそうめずらしいとは思わなくなり、季節も少しづつですが確実 に夏に向かっていることを感じさせるせる頃となりました。  さて、5月21日(金)に行われました、アルコール・セミナー第2回目は、『ア ルコール依存症と家族−共依存・アダルトチルドレン−』をテーマに富山市民病院の 臨床心理士、山野先生に講演をしていただきました。その内容をご紹介します。

アルコール依存症と家族
アルコール依存症は家族病
1.家族は常にバランスを保とうとしている
2.家族はそれぞれ不安や心配をもっていて気付いていても、それに触れようとしないことがある
3.初めは思いやりや愛情から依存症の問題を何とかしようとして、家族は慢性的持続的に頑張る
4.家族が、無理をして、疲れ、傷ついて病気になっていく

共依存とは
1.人間関係のとらわれで、相手の問題をなんとかしようとする
2.相手を自分の思うように動かそうとすることにとりつかれた不健康な行動パターン
3.自分のことを犠牲にしても相手のことにエネルギーを注ぐようになる
4.依存症以外の人間関係でも同じ様なパターンを繰り返してしまう

アルコール依存症者の家族の変化
1.
 
 
 
4つのルール
硬直、沈黙(家の中で起こっていることを外へ向かって言わない、家族同士でも話さない)、孤立(世間から隠そうとする。家族のカプセルに閉じこもる)、否認(本人だけでなく家族にも認められる)
2.
 
 
 
 
規則が変わる
話さない…友達ができても家のことが話せない、話さない
       →友達を作らない、家に閉じこもる
信じない…約束を守らない→信じても仕方がない)
感じない…感情のブレーカーを落とす
3.
 
役割が変わる
妻…親のような世話焼き、子供…母の相談相手
4.
 
しきたりが変わる
酒のために習慣が変わる
5.
 
会話が変わる
会話が変わるか、会話がなくなる

アルコール依存症が進行するように、共依存も進行している

共依存のパターン
1.飲酒を何とかしようとする
 本人でなく家族がする(飲ませないように酒を隠す、捨てる)
2.飲酒の理由を何とかしようとする
 理由を明確にしようとし、その理由を何とか治そうとする。
 本人の飲酒の理由   家族の考える対処 
 妻がうるさい  →  よい妻になろうとする 
 親の育て方が悪い  →  よい親になろうとする 
 会社が嫌だ  →  転職すればよい 

3.飲酒の結果を何とかしようとする
 本人の飲酒の結果   家族のする対処行動 
 部屋を汚す  →  片付ける 
 欠勤する  →  会社に言い訳をする 

本人がしたことへの尻拭いをし、家族が傷つき疲労する。
本人が飲んでいる間に後始末をしてしまうために本人には分からない。
わからないから、再び本人は同じ酒を飲んで問題を起こす。
世話焼き行動の結果
 アルコール依存症が飲酒によって起こる問題に直面せずにすむ。
 家族が世話を焼けば焼くほど手をひけなくなる。


共依存からの回復
 家族も本人が酒を抜いて1年、2年かけないと戻れない。人によって時間も違う。
第1段階:世話焼き行動によっておきる苦痛を認める「依存の病気を認める」
第2段階:共依存を認め、自分自身に目を向ける「酒以外の問題を認める」
第3段階:世話焼き行動が無力であることを認める「対人関係の問題に気付く」
第4段階:生き方を変える努力をする「原家族の問題に気付く」

愛をもってアルコール依存症の問題のとらわれから、離れること

アダルト・チャイルド
 以上のような家族(機能不全家族)で育った人は、アルコールという怪物のなかで育った人であることが多く、社会に出て他の人と接した時にいろいろと弊害が認められる人を言う。
 子供の時に身につけたものを着替えることで、自分を変えれる可能性を持った人でもある。
 子供時代、英雄役、叱られ役、不在役、道化役、慰め役、支え役をやりながら生き延びて大人になった人でもある。
 修羅場を生き抜いた生還者とも言える。

 今回のアルコール・セミナーはいかがだったでしょうか?
 お酒さえ飲まなければなんとかなるといったものではなく、お酒を飲んでいるときの家族の関係や、お酒を止めた後の人間関係をどうしていけばよいのかを、改めて考えさせられる内容だったと思います。
(文責:杉本留美)