平成10年度前期アルコール・セミナーたより(No.3) 

(平成10年6月19日)



 梅雨の季節。雨が降り続くなか、あじさいが美しさく咲いているのに見とれてしまいますが、いかがお過ごしでしょうか。
 さて、平成10年6月19日に平成10年度前期アルコール・セミナ−第3回が行われました。今回は、富山市民病院の臨床心理士 山野先生に、『アルコール依存症と家族−共依存とアダルト・チャイルド』をテーマにロールプレイ(演習)を交えて、講演をしていただきましたので、ご紹介いたします。

ロールプレイ(演習)
設 定
飲酒者本人…子供の誕生日のケーキを買いにいく約束をして仕事に行く。
妻、母…子供の誕生日の食事の準備をしている。
子供…ケーキが来るのを楽しみに待っている。
 しかし、何時になっても、ケーキを買って帰ってこない。先に食事をしようという話になったところで、本人帰宅。しかし、飲酒しており、ケーキも買ってきていない。もめてきたところで、騒ぎをききつけて、隣のおばさんがやってくる。
 以上の設定を参加者のみなさんに演じてもらいました。

感 想
 演じられた方からは、自分の家では、飲んでいる人を交えずに誕生会をした、飲酒者がいたので、誕生会はしなかった、やりたくなかった等、それぞれの家庭での思い出を交えて、感想が出ました。
 また、それぞれの役割を演じた方は、自分の立場ではない役割だったので、難しかった、自分の子供もそうだったのかなあなど、振り返りながら、家族のことを思いやっておられました。

共 依 存 と は
 人間関係のとらわれで、やめようとしてもやめられない、不健康な行動パターン。
 相手の問題をなんとかしようとしたり、相手を自分の思うように動かそうとするこ  とにとりつかれた状態。
 そのため、自分自身のことを犠牲にしても相手のことにエネルギーを注ぐようにな  る。

アルコール依存症者の家族
 アルコ−ル依存症者の家族システムは、家族のバランスを保とうと常に動いている。
 アルコール依存症者に対する愛情
    ↓    
 問題をなんとかしよう(共依存のはじまり)
    ↓    
 依存症者の崩したバランスを保つために家族が頑張る
    ↓    
 無理をして、疲れ、傷つく

共依存のパターン
・飲酒をなんとかしようとする。
・飲酒の理由を何とかしようとする。
・飲酒の結果をなんとかしようとする。
 →世話焼き行動の結果、ア症者が飲酒によって起こる問題に直面せずにすむ。
 →傷つかないですむ。

共依存からの回復
第1段階: 世話焼き行動によって起きる苦痛を認める。
第2段階:共依存を認め、自分自身に目を向ける。
第3段階:世話焼き行動が無力であることを認める。
第4段階:生き方を変える努力をする。

補:共依存
◎必要とされることは大事なこと。
◎ただし、とらわれ過ぎるといけない。
◎極端から極端にはしらないこと。
◎自分自身の生き方を大事にすること。
◎そうすれば、相手も大事にできる。
◎感情もあるので簡単にはいかないけれど、学ぶことで人間的に成長する。

ア ダ ル ト ・ チ ャ イ ル ド
問題を持った人ではなく、また、人より劣っているということでもない。
どこかうまくいかないと感じる生きにくさを持つ。
力があるけれど十分に力を発揮できない。自分を正当に評価できない。
そこまでする必要がないくらい義理固い。
何が正しいのか判断できない。決定できない。

我慢して、我慢して爆発してしまう−−−適度に出す練習が必要


 今回のアルコール・セミナ−はいかがだったでしょうか。
 今回のテーマについては、参加者の方からの希望が多かったものです。
 共依存、アダルト・チルドレンについて、いろんな本も出版されていますが、元は、アルコール依存症の家族に関わっている人たちからでてきた言葉です。生きにくさを感じている人が多いのでしょうか。

(文責:杉本留美)