平成10年度前期アルコール・セミナーたより(No.1) 

(平成10年4月17日)



 街路樹の葉も少しずつ緑が増し、新緑の季節に近づいていますが皆さん、いかがお過ごしでしょうか。
 さて、平成10年4月17日から平成10年度前期アルコール・セミナ−がいよいよ始まりました。今回は第1回目として、富山市民病院の吉本先生に、『アルコール依存とは』をテーマに人とアルコールの関わりから、依存についてまでの話をしていただきましたので、ご紹介いたします。

人類とアルコールの関わり
 アルコール古 代宗教的儀式、医療などに使われる
    ↓    
近 代嗜好品へ(産業革命後、アルコールの生産、消費の拡大)
    ↓    
現 代アルコール関連問題の大衆化
依 存 と は
 次の、@〜Bを認めた場合を依存とされてきた。
@〈耐性の獲得〉 次第に増量しないと酔わなくなる。酔わなくなってくるので、多く飲むよ
うになり、強くなる。
A〈身体的依存〉薬(アルコール)が切れると、強烈な禁断症状(手が震える、汗をかく
等)が生じる。
B〈精神的依存〉薬(アルコール)を手に入れるためにはどんな手段でもとろうとするな
ど、強烈な要求が生じる。隠れ飲みも該当する。
 最近は身体依存の症状がなくても、依存とみなすようになってきている。

中毒と依存の違い
中  毒本人の意思とは必ずしも関係なく、体内に吸収された結果生じる中毒状態
依  存本人の意思で、特定の状況のもとでアルコールなど、その効果を求めて繰り返し飲むこと

依存が成立する要因
 依存薬(アルコールなど)があること、それを受け入れる人がいること、依存薬(アルコールなど)と人を結びつける場があること

■依存になりやすい薬物
アルコール  
覚醒剤 ニコチンカフェイン
ペンタゾシン  
 依存 大 ←  → 小

■人の要素
 薬物摂取によって快感効果をもたらす強さの個人差がある。
 性格傾向(単一の性格特徴はなく、いくつかの性格類型がある)。

■環境の要素 
 1 家族因子(特に成育期の環境)
  父  頑固で権威的、冷たい。
  母  優しく心配しすぎる。
  教育方針に調和と統一性が欠ける。
  不安定な養育環境(情緒的、物質環境に恵まれない)が発症を早める。
  第一子、意外に末子、一人っ子、一人息子が多い。
 2 社会・文化因子
  日本  酩酊に関して寛容
      晩酌の一般化
      儀式の時に飲む、子供や女性は飲まないといった風習はなくなってきた。
 3 職業因子
   水商売、酒類製造業、販売業----アルコールを安く手に入れられる職場
   営業マン、ジャーナリスト、医師、芸能人----仕事上での拘束が少なく、酒との接触が多い職業

 アルコール依存とは、単にその人個人がアルコールを飲むということだけではなく、アルコールの持っている依存しやすい特性や、その人自身の持っている特性や環境、職業など、複雑に絡みあって生じる問題です。
 まずは、飲酒の害がどういうことなのか、それによって自分の心や体、また家族にどのような影響を与えるのか、どのように回復していくのかなどについて、これからもアルコール・セミナ−のなかでみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

(文責:杉本留美)