平成10年度後期アルコール・セミナーたより(No.3) 

(平成10年12月18日)



 平成10年ももう残すところ、あとわずかとなってしまいました。今年の冬は今のところ暖かい日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
 さて、平成10年最後のアルコール・セミナーが12月18日に行われました。
 講師に、富山市民病院 臨床心理士 山野さんをお迎えして『アルコール依存症と家族−共依存・アダルトチルドレン−』をテーマに講演していただきました。では、その内容について御紹介します。

アルコール依存症者の家族
 家族はバランスを保とうと常に動いている。
   →家族が頑張ることで、依存症者の崩したバランスを保っていく。
      →家族は慢性的、持続的に無理をする。……疲れ、傷つく。

共依存とは
1.人間関係への「とらわれ」でやめようとしてもやめられない不健康な行動パターン。
2.相手の問題をなんとかしようとしたり、相手も自分の思うように動かそうとすることにとりつかれた状態。
3.自分自身のことを犠牲にしても相手のことにエネルギーを注ぐようになる。

共依存の家族とは
 アルコール依存症の妻は夫に一生懸命で、子供にどう接してきたのか思い出せないという。子供は親に手を煩わせないおとなしいよい子になる。

アルコール依存症者の家族の変化
1.4つのルール
 硬直、沈黙(家の中で起こっていることを外へ向かって言わない、家族同士でも話さない)、否認(本人だけでなく家族にも認められる)、孤立(世間から隠そうとする。家族のカプセルに閉じこもる)
2.規則が変わる
 話さない…友達ができても家のことが話せない、話さない
       →友達を作らない、家に閉じこもる
 信じない…約束を守らない→信じても仕方がない)
 感じない…感情のブレーカーを落とす
3.役割が変わる
 妻…親のような世話焼き、子供…母の相談相手
4.しきたりが変わる
 酒のために習慣が変わる
5.会話が変わる
 会話が変わるか、会話がなくなる

共依存のパターン
1.飲酒を何とかしようとする
 本人でなく家族がする(酒を隠す、捨てる)
2.飲酒の理由を何とかしようとする
 飲む理由を何とかすれば飲まなくなるのではないか
 本人の飲酒の理由   家族の考える対処 
 妻がうるさい  →  よい妻になろうとする 
 親の育て方が悪い  →  よい親になろうとする 
 会社が嫌だ  →  転職すればよい 

3.飲酒の結果を何とかしようとする
 本人の飲酒の結果   家族のする対処行動 
 部屋を汚す  →  片付ける 
 欠勤する  →  会社に言い訳をする 

本人がしたことへの尻拭いをし、家族が傷つき疲労する。
本人が飲んでいる間に後始末をしてしまうために本人には分からない。
わからないから、再び本人は同じ酒を飲んで問題を起こす。
世話焼き行動の結果
 アルコール依存症が飲酒によって起こる問題に直面せずにすむ。
 家族が世話を焼けば焼くほど手をひけなくなる。


共依存からの回復
 家族も本人が酒を抜いて1年2年かけないと戻れない。人によって時間も違う。
第1段階:世話焼き行動によっておきる苦痛を認める
第2段階:共依存を認め、自分自身に目を向ける
第3段階:世話焼き行動が無力であることを認める
第4段階:生き方を変える努力をする

愛をもってアルコール依存症の問題のとらわれから、離れること

アダルト・チャイルド
 以上のような家族(機能不全家族)で育った人は、アルコールという怪物のなかで育った人であることが多く、社会に出て他の人と接した時にいろいろと弊害が認められる人を言う。
 子供の時に身につけたものを着替えることで、自分を変えれる可能性を持った人でもある。
 子供時代、英雄役、叱られ役、不在役、道化役、慰め役、支え役をやりながら生き延びて大人になった人でもある。

 「アダルト・チルドレン」という言葉はここ数年でかなりブームになりましたが、いつの間にか「大人になりきれない」「甘えている」といった偏見をともなった言葉になってしまいました。元々はアルコール依存症の親をどうにかしようとして、自分のことを後回しにして頑張ってきた人達のこと。今回の講演でもう一度アルコール依存症の家族とはどういったことをせざるをえなかった人たちなのか。そのことから、どう回復していけばよいのかということをもう一度考えてみませんか。
(文責:杉本留美)