21世紀の活力ある豊かな富山県づくりに向けて
21世紀の活力ある福祉社会研究会報告書
21世紀の活力ある福祉社会研究会
平成11年2月24日


目  次

はじめに

第1章 少子高齢社会と社会・経済システムについて

 第1節 環境の変化と社会経済システム

 第2節 環境の変化が各分野のシステムの変革を要請する 第2章 福祉と経済の関係について

 第1節 福祉サービスは経済にどういう影響を与えるか

1 福祉サービスの経済的波及効果
2 福祉の地域間所得移転効果
3 福祉の消費拡大効果
4 福祉の労働力創出効果
5 福祉は中長期的に経済の活力を削ぐか
 第2節 福祉を効果的・効率的に進める方策はあるか 1 社会保障を効果的に進める視点から見た福祉施策
2 福祉への総合的な視点の導入
3 多様な供給主体の参入の促進と競争の実現
4 予防の視点の重視
5 高齢者や障害者などの活躍が可能な環境づくり
6 高齢社会に応じた効率的な社会・経済システムの形成
第3章 「福祉の視点を核に高齢社会に対応した社会・経済システムの形成 を進めるべきである」

 第1節 介護・保育の社会化と福祉の量的拡大

 第2節 高齢社会に対応するまちづくり  第3節 高齢社会に対応した産業振興政策  第4節 高齢社会に対応した雇用政策  第5節 地域コミュニティの再構築 おわりに

参考資料

(1) 参考文献

(2) 検討経過

(3) 設置要綱

(4) 研究会の構成

(5) 福祉・介護機器用具製品関連県内企業(例示)

(6) 富山県における福祉の経済効果について(北経研報告書)・・・・略




はじめに

 我が国では、世界に例のない速さで高齢化が進んでいる。同時に、核家族化の進行等によって家庭の介護力が低下しつつある。問題は、高齢化だけでなく、核家族化が同時に進んでいることである。この結果、好むと好まざるとに関わらず、福祉分野への資金や人材などの一層の投入が避けられない時代が来ると考えられている。

 その一方で、高齢化の進行と同時に少子化が進み生産年齢人口の減少が進むとともに、経済のグローバル化に伴う国際競争の激化などによって、福祉を支える社会の負担能力の伸びも低減していくと考えられている。これらの大きな変動に対して県民は漠然とした不安を感じている。

 20世紀後半から21世紀の前半に向けて、生産年齢人口(15〜64歳人口)や年少人口(15歳未満人口)が少なく高齢者が多いという新しい人口構造と、高齢者世帯と若い世帯への世帯の分離が進む新しい家族構造(核家族化)を持つ社会が我が国に出現しつつあるのであり、それは、長寿化や経済的な豊かさや高学歴化などに伴う価値観の多様化、経済のグローバル化に伴う国際競争の激化や経済の低成長、高度情報化などと同時に起こっている。

 富山県は、これらの環境の変化に受動的に流されるのではなく、むしろ、これらの環境変化を積極的に活かして、新しい人口や家族構造等に対応した新たな地域社会システム・経済システムの再構築に向けて、(高齢化社会への対応や福祉の視点から)県の社会経済構造の変革を先導していくべきである。


国立社会保障・人口問題研究所平成9年5月推計(1995年は国勢調査)
注)全人口は2010年までに1%強減少するだけであるが、人口の構成は大きく変化する。

 このような視点から、この研究会では、福祉と地域や経済の活性化の関係を中心に検討を行った。


第1章 少子高齢社会と社会経済システムについて

 この章では、本県を取り巻く環境が、社会構造や経済システムにどのような影響を及ぼすかについて俯瞰する。第1節ではそれを要因別に、第2節ではそれを分野別に見る。

 第1節 環境の変化と社会経済システム

 高齢化、核家族化や高度情報化をはじめとする環境の変化は、社会経済システムに大きな影響を与えると考えられる。それを、要因別に整理するとつぎのとおりである。


1 高齢化・長寿化・少子化と核家族化の進行

(1) 高齢化率などの高さが、従来の枠組みを超えた対応を要請する

 高齢化(高齢者の比率が高まること)、長寿化(平均余命が伸びること)や少子化の進行は、年金・医療、家族・地域社会、国の財政等多様な分野での将来の予想や予測などを通じて社会(システム)全体に、既に大きな影響を与えつつある。

 高齢者の比率の上昇は、従来、個別に設計、運用されてきた年金、医療、介護に関する制度あるいは都市や生活環境づくりを、今後統合的に設計、運用することによって効率化していく必要を生じさせている。特に、これを福祉の視点について見れば、社会(経済)全体との関わりの中で福祉を従来より広い視点と枠組みで考える必要のある時代が到来していると考える。

(2) 価値観の多様化、少子化、核家族化の進行が従来の枠組みを超えた対応を要請する

 人口の減少している多くの市町村においても、世帯数は増加している。これは、一つの世帯が複数の世帯に分離していることを意味しており、具体的には、主として高齢者世帯と若い世代の世帯に分かれているのである。価値観の多様化にともなう、このような核家族化や、過疎や生活の場と就労の場の分離に伴う地域共同体の弱体化などを通じて、家庭や地域で子どもの保育や高齢者の介護などを支える力が低下しつつある。

 次の図は、昭和35年を100とした富山県の人口と世帯数の伸び率の比較である。人口の伸びに比較して世帯数が大きく増加(≒核家族化が進行)しているが、それと同時に高齢化が急速に進行しているのである。

注)昭和35年を100とした指数。平成2年までの30年間で人口は8%伸びたのに対して世帯数は47%増加した。

特に、高齢者単独世帯と、夫婦のみの世帯のうち少なくとも一方が65歳以上の世帯の合計は、昭和35年の3,800世帯(35年のみ1%抽出の摘要票による。なお、昭和45年は、5,834世帯))から平成2年には26,357世帯へと6.94倍に増加しており、現在も毎年7%程度の伸びを示している(なお、平成7年は36,864世帯)。

(国勢調査及び平成12年以降人口は国立社会保障・人口問題研究所推計による。)


 従来、3世代世帯に代表される大きな家族内では、高齢者が子育てなどの役割の一部を分担し、一方で、若い世代が高齢者の介護を分担してきた。しかし、世代の分離・核家族化の進行は、このような家庭の機能を低下させつつある。

 また、家庭内の介護は、家族に大きな負荷を与えており、家庭内の人間関係にも影響を及ぼしているとの調査もある。(・・・富士総研平成5年調査)

 そして、介護を要する高齢者の数は、高齢化率の上昇や治療技術の進歩などによって、従来の世代が経験しなかった割合にまで増加しつつある。

 この結果、従来の家族の果たしてきた役割を、社会全体で支える必要のある時代が到来している(=介護の社会化)。また、社会全体で支える在宅介護や施設介護などにおける専門的な介護は、家族による介護よりも効率的であると考えられる。

 世界に例のない速さで進行しつつある高齢化・長寿化と同時に、このような核家族化等が進んでいることが、地域や地域経済のあり方、家族と社会の間の役割分担(「介護の社会化」、「保育の社会化」など)や、男女の役割分担を見直す必要を強めている。

(3) 長寿化と高齢者の増加が地域社会を大きく変える可能性がある

 長寿化に伴って、企業等を定年退職した後、地域で生活の大部分を過ごす高齢者が増加している。(モータリゼーションの発達による生活圏の広域化の一方で、)高齢化などにより、長距離の移動に苦痛を感ずる人々も増加し、人々の活動の地域性が高まる方向にも力が働きつつある。

 この結果、地域における生涯学習ニーズや余暇ニーズ、買い物活動に係わるニーズが変化していく可能性があり、それは、地域の町々において要求される都市機能の水準にも影響を及ぼして行くと考えられる。一方で、このような地域に住む高齢者の増加は、地域共同体の活動にもさらに影響を及ぼしていく可能性がある。

 また、高齢者は相対的に虚弱の傾向があることから、高齢者の増加は、生活環境や移動手段に関わる配慮の必要性を増大させている。

2 ノーマライゼーションの視点の重視など福祉の考え方の発展

(1) ノーマライゼーションの理念は在宅福祉の推進を要請する

 高齢者、障害者をはじめとするすべての県民が将来の不安なく過ごせるような豊かな社会を作るためには、高齢者や障害者などが住み慣れた地域で人生と生活の継続性を維持しながら普通に生活できることを目指す、ノーマライゼーションの理念を一層重視していく必要がある。それは、基本的には、従来の施設中心の福祉から、介護の社会化などを前提とした在宅福祉の拡充を要請する。

(2) 在宅福祉の推進は、多様な分野の「福祉化」を要請する

 高齢者や障害者が入所施設の中で生活していけばよいなら、福祉施策は、施設の中だけの対策が中心となり、福祉分野だけの対応で足りる。しかし、ノーマライゼーションの考え方に従い、地域で高齢者などが普通に暮らせるようにするには、介護の社会化を前提に、在宅の高齢者や障害者などと地域との関わりや、施設と地域との関わり、行政の各部門の施策と在宅の高齢者や障害者との関わりの強化などが重要になる。このため、あらゆる分野の人々や行政の活動に福祉の視点が活かされていかなければならない。

 これらのことから、一般の県民や事業者の協力のもと、地域福祉の強化、福祉の総合化、福祉と、保健・医療をはじめとして土木や建築など他の行政分野との連携や行政の福祉化などを強力に進める必要がある。また、供給者の視点から利用者の視点への転換も重要である。 


3 経済のグローバル化など経済的な環境の変化

(1) 企業の福祉を支える余力が低下していく

 経済のグローバル化、低成長経済への移行に伴って、企業の余力が低下し、(家庭の力の低下とともに)従来のいわゆる日本型福祉を支える社会の構造が弱まりつつある。

(2) 産業の高付加価値化の要請は介護や保育の社会化を必要とする

 その一方で、国際競争の激化や成長業種の変化等に伴って、本県の産業構造の高付加価値化、ソフト化、サービス化などが求められるようになってきているが、それには優れた人材の育成と活用が欠かせない。このためには、従来の労働力源だけでなく、能力のある女性の活用や意欲のある高齢者や障害者の活用が不可欠となりつつある。しかし、現状は、女性が、結婚、出産、子育て、高齢者介護などの期間を乗り越えて能力を活かし発展させ続け得る環境とはなっていない。高齢者や障害者についても同様である。

 このような課題の解決策は、福祉面からの、介護や保育の社会化の要請に対する対策と一致する点が多い。また、少子化による労働力の供給の減少への対応策としての女性や高齢者の戦力化に必要な対策も同様である。

 これらのことからも、介護や保育の社会化の推進や、多様な分野の連携などをはじめとする効果的・効率的な対策により、福祉をさらに充実、向上させていくことが必要になってきていると考える。


4 地域経済活性化の要請

(1) 富山県経済の重要な要素として福祉は重要な役割を果たさざるを得ない

 現在、地方経済を支えている公共投資をはじめとする建設事業については、次の点などから、今後大幅な伸びは期待できないと考えられる。

ア 我が国の国内総支出に占める公的固定資本形成の割合が、先進諸国(2〜3%台)の中で異常に高い水準(8〜9%台)にあることや、国の財政上の問題などから、今後、全国レベルの公共投資のウエイトは、中長期的に伸びが期待できないと考えられる。

イ 大都市圏の住民から、地方への公共投資について、投資効果などの視点から根強い批判がある。このことなどを背景に、地方圏への公共投資の割合が現在の水準を引き続き維持できるかどうかは予断を許さない。自治省の行政投資実績調査によれば、次図のように、すでに国による地方圏への行政投資の割合は昭和40年代後半から60年代前半にかけての時代に比べれば低くなっている。

 これに対して、福祉部門では、地方圏は一般に高齢化率が高く、また過疎地域と高齢化率が高い地域が概ね一致している。福祉サービスについては、ナショナルミニマムとして、全国で等しい水準の給付が行われるべきだとする国民的な合意があると考えられるが、であるとするなら、それに係る支出は、全国レベルで地域間の所得移転効果(地方に厚い配分)があり、それは地方における地域経済にプラスの効果を持たらす。

(2) 商店街活性化において広義の福祉対策は重要な役割を果たしていく

 モータリゼーションの発達に伴って、商圏の広域化と郊外型店の集客力が上昇し、既存商店街、中心市街地の衰退の傾向が強まっている。

 しかし、一方で、地域には、在宅で生活し活動の範囲に制約のある高齢者が増加しつつある。特に、高齢化の進行の速い本県では、今後、高齢者による大きな消費層が地域に出現していくと考えられる。したがって、それに対応することは、今後の小売店や商店街などの活性化に不可欠の条件になると考えられる。

 このことを活かすには、商店街自身の配達サービスなどのサービス面の対応、商品の品揃えなどの対応や商店街のバリアフリー化などが要請される。


5 高度情報化などの科学技術の発展やまちづくりの進展

(1) 高度情報化など科学技術の発展は、障害の概念を変え、制約を取り除いていく

 従来、両方の手に障害のある人が、文筆で身を立てることはほとんどあり得ないと考えられてきた。同様に、障害のために話すことが不自由な人は自分の意見を正確に説明することが難しかった。しかし、今、パソコンやワープロがその障害を取り除いている。

 また、中途から失明した視覚障害者は、点字の習得に多大の努力と時間を要してきた。その一方で、点字で読める本や情報には、点字化に必要な労力のために時間的、量的な限界があった。今日の最新のニュースは(点字では間に合わず)、ラジオやテレビの音声を聞くことに頼らざるを得ず、新聞などのニュースの内容を掘り下げた解説記事を読むことはなかなかできなかった。

 しかし、あらゆる情報やニュースが電子化されつつある今、パソコンによる安価な音声読み上げソフトが出現し、障害のない人々と同様のレベルの情報を得られる環境ができつつある。

 また、現在、パソコンレベルでも、音声の文字情報への変換入力が実用になりつつあるが、将来、雑音と変換速度の問題が解決され、携帯情報端末などで利用できるようになれば(近い将来に実現の可能性がある)、聴覚障害者の情報の障壁は一挙に小さくなる可能性もある。

 同じく、これまでは、歩行に障害のある人々も図書館や行政の窓口などに通うことは大変であり、障害者は、障害のない人々に比べてはるかに限定された情報しか得られなかったし、発言することにも限界があった。しかし、パソコンなどの情報機器の活用がその限界を打ち破りつつある。

 同様に、高度情報化の進展により障害者が在宅で働く可能性も開けつつある。

 一方、歩くことが困難な障害者も、電動車いすや電動スクーターにより、活動の範囲が広がりつつある。また、福祉のまちづくりなど生活環境面の取り組みも効果を現していくと考えられる。

 これらの例のように、高度情報化など科学技術の発展は、すべてのハンディを解消するものではないが、障害者の活動の制約を徐々に取り除きつつあると考える。

(2) 福祉の効率化の要請は、福祉のまちづくりや高度情報化の推進を要請する

 福祉用具の進歩・普及や高度情報化など障害を補う技術が発展し、福祉のまちづくりが進展することによって、高齢者や障害者などの日常生活上の障害が軽減されるようになり、より多くの高齢者や障害者が自立して生活していける時代が来る可能性が増しつつある。高齢者や障害者の自立は、これらの人々に要する社会的な援護のニーズを低下させる。

 福祉を効率的に進めるためにも、高度情報化時代への対応や福祉のまちづくりのより一層の積極的な推進が必要とされる。

 第2節 高齢化や核家族化が各分野のシステムの変革を要請する

 高齢化や核家族化の進行などは、以下のように社会システムに大きな影響を与え、それに対応する視点で社会全体のシステムを再編成することを不可欠にする。これを対象分野別に整理すると概ね次のとおりである。

1 福祉サービスの再編成

○ 核家族化の福祉のあり方への影響(保育や介護の社会化)

 核家族化は、従来、多世代家族の中で、高齢者が子育てを補完し、若い世代が高齢者の介護などを支える家族の養育力や介護力の低下をもたらす。すなわち核家族化により、保育や介護を社会で支える保育や介護の「社会化」が必要とされるようになっていく。また、高齢者や障害者が障害のない人々と同じように地域の中で暮らせることを目指すノーマライゼーションの理念の実現は、同じく介護の社会化や在宅福祉などを要請する。


2 地域経済の再編成

(1) 高齢者の増加による消費経済への影響

 高齢者の増加は、消費構造に大きな影響を及ぼす。社会保障政策が老後の安心を生めば、高齢者の消費性向は本来的に高いため、高齢者の消費が社会全体の消費に占める割合はますます高くなる。

 この結果、製造分野では、高齢者に対応したバリアフリーデザイン・ユニバーサルデザインの商品等の開発製造が新たな事業機会を生んでいく。住宅や店舗の建設においても、バリアフリーの視点に基づいた設計施工のニーズが増加していく。また、商業分野では、売り上げの確保対策に高齢者に対応した品揃えが必要となっていく。
_ 高齢者の増加による商店街等の構造への影響
高齢者による消費の拡大のためには、高齢者などに対応した店舗や商店街づくりが必要とされるようになる。


3 都市構造の再編成

(1) 移動制約者の増加によるまちづくりへの影響

 高齢者は、元気な高齢者といえども、歩行や階段の昇降の負担を重く感じている。これに、障害者や妊婦、3歳未満などの小さな子どもをかかえる若い世帯、けが人などを加えると、2010年時点で、人口の3分の1から4分の1は移動に何らかの配慮を要する人々と考えられる。しかし、現在の街や商店街、駅の構造などは、必ずしもこれに対応したものとなっておらず、それがまちのにぎわいにも影響を与えるようになっていくと考えられる。この結果、まちのバリアフリー化のニーズは一層高まっていく。

(2) 高齢者の増加による都市機能の広域的な配置への影響

 農業分野では工業化の進展による企業の雇用吸収により、また、商業分野でもモータリゼーションの発達に伴う既存商店街の地盤沈下により、戦後、自営業者から被雇用者への就労形態の大規模な転換が続いてきた。この結果、かつては一致していた生活と就労の場が分離し、それを基盤としていた地域共同体の弱体化が進んできた。しかし、今、そのような動きの先駆けとなった昭和30年代に新卒で被雇用者となった人々が、定年を迎えて地域に帰りつつある。

 一方、経済的な豊かさや文化的環境の進展などを背景に、高齢者などの知的な嗜好・文化志向や自然志向などが強まっている。このようなことは、その他のライフスタイルにかかわる分野においても起きつつあると考えられる。

 交通基盤の整備、モータリゼーションの発展は、より大きな都市への都市機能の集中を促進してきた。しかし、高齢者が、定年退職後、生活と活動の拠点を(従来は帰宅しても寝るだけだった)地域に移し、しかも長距離の移動に負担を感じるようになれば、身近な地域の町々が持つべきと感ずる都市の機能も、より高次の都市機能へと変化していくと考えられる。この結果、県内の町々の都市機能の分担も変化していく可能性がある。

 また、余暇需要などに対応したスポーツ施設など各種の施設の立地についても、地域への分散の必要性が高まる可能性がある。

4 地域の就業構造の再編成

(1) 高齢者の増加による就業形態への影響

 高齢者の増加は、就業者の構成の変化を通じて、短時間労働や在宅勤務などの就業形態など雇用のあり方にも大きな影響を与えていく。

(2) 介護の社会化による地域雇用への影響

 男女の役割分担の見直しや核家族化に伴う保育や介護の社会化の要請は、地域における福祉分野の就業者の増加をもたらし、地域の就業者の構成にも影響を与える。

 また、福祉サービスが、その場の、その時点で消費されるサービスとしての特性を持つことから、福祉サービスの拡充は、地域に密着した若者の雇用を生みだす。



5 地域共同体の再編成

○ 高齢者の増加による地域コミュニティへの影響

 定年退職などにより、地域で比較的自由な時間を持つ在宅の高齢者が増加することは、生活の場が生産・就業の場と分離することによって戦後弱体化を続けてきた地域共同体のあり方にも影響を与え、福祉に係るコミュニティ活動や、地域スポーツ活動などを核に地域共同体が復活していく可能性がある。



6 社会を構成する主体の再編成

 福祉に関連するNPOなどボランティア団体の意義の高まり、公的介護保険制度の導入や、現在、国、中央社会福祉審議会で検討が進められている社会福祉基礎構造改革に伴う民間企業の位置づけの強化によって、行政と民間団体、民間企業の関係が変化するとともに、福祉サービス全般の量的な拡大により、地域経済や地域における主要な活動団体の構成と、その位置づけに大きな変化が起きる可能性がある。


7 県民の新しいライフスタイルにかかわる分野の再編成

(1) 高齢化と長寿化による余暇活動等への影響

 長寿化は、それに伴うライフサイクルの変化の中で、高齢者を中心に長い余暇時間を持つ人々を生みだす。一方で、経済的な豊かさなどの進行により価値観が多様化し、文化指向や自然志向などが強まっている。このことは、生涯学習やスポーツ・文化活動、余暇活動のあり方に大きな影響を与え、それに対応した行政サービスや産業分野のあり方に大きな影響を与える。しかも、定年退職などにより、高齢者が地域で生活するようになることから、そのようなサービスについては、より地域に密着したニーズが増加していく。

(2) ボランティア活動の場による人づくりへの影響

 福祉ニーズへの対応を中心に、ボランティア活動やNPO活動の重要性が増していく。そのことは、高学歴化が進む中で、現在の仕事の場で十分な能力を発揮できていないと感ずる多くの県民が、自らの創意と工夫によって活躍できる場すなわち自己実現の場を得ることにつながる。自らの能力を活かせる経験を得ることは、能力の開発に重要な意義がある。このことは、本県における人づくり推進の重要な契機になるとも考えられる。


8 行政の再編成

(1) 行政の福祉化

 ノーマライゼーションの理念に基づく在宅福祉、地域福祉充実の要請は、ハード・ソフトの生活環境の整備や、人々の理解と支持の必要性などを通じて、福祉分野だけでなくあらゆる行政分野の対応を要請する。

(2) 市町村の役割の増大

 高齢者など地域で活動する人口の増加や、地域に密着した在宅福祉サービスの実現に対応するため、より地域に密着した市町村の役割が、一層増大していく。

 

第2章 福祉と経済の関係について

−福祉への資源の投入が地域経済に及ぼす影響はどうか−

「経済審議会建議『6分野の経済構造改革』」(平成8年12月3日)では、福祉についてつぎのように触れている。

「3.福祉
我が国の福祉はとても十分とは言えない。福祉の役割を医療が担い、残りの多くは家族の役割とされてきた。福祉分野は民間マーケットの拡充が期待されており、その意義を経済的にも積極的に評価すべきである。  」

(参考)国民所得に対する社会保障給付費の構成割合
(国立社会保障・人口問題研究所による)
 高齢化と核家族化が、福祉の充実を不可避のものとするなら、福祉は経済にどのような影響を及ぼすだろうか。第2章では、福祉と地域経済の関係を中心に、主に次の三つの課題について検討を行った。

(1) 福祉分野への資源の投入は本県の活力を削ぐことになるのか

 我が国では、世界に例のない急速な高齢化が進んでいる。この結果、好むと好まざるとに関わらず、福祉分野への資金や人材などの資源の投入が避けられないと考えられている。その一方で、高齢化の進行と同時に少子化が進み、福祉を支える社会の負担能力も低下していくと考えられている。このような方向は、我が国、特に本県の活力にどのような影響を与えるのか。

(2) 福祉ニーズの増大に効果的、効率的に応える方策はあるのか

 福祉サービスの需要量は、保健・医療をはじめとする予防や治療との関係や、道路、建築や福祉機器などの生活・活動環境などによって大きく影響を受けると考えられる。このような点を踏まえて、福祉サービスの供給を効果的に行うためには、どうすればよいか。

(3) 福祉による地域の活性化方策はあるのか

 福祉分野への資源の投入が避けられないとすれば、これを地域の活性化に直接つなげ活かしていく方策はあるのか。福祉サービスと社会の活力の関係を踏まえた方策は、どうあるべきか。
その結果、上記の国際比較のグラフのように我が国が低福祉の国であること(国情の違いはあるにせよ)を前提に考えれば、我が国・本県における福祉の充実は、むしろ、経済的な活性化の効果が大きいのではないかと考える。


第1節 福祉は経済にどのような影響を与えるのか

 福祉の充実は経済にどのような影響を与えるのかについて、次の点を検討した。

(1) 福祉サービスの経済的波及効果

(2) 福祉の地域間所得移転効果

(3) 福祉の消費拡大効果

(4) 福祉の労働力創出効果

(5) 福祉は中長期的に経済の活力を削ぐのか

 その結果、福祉の充実は、福祉サービス本来の目的である福祉の向上に加えて、地域経済の活性化など経済的にも重要な意義を持つことを認識したと考える。


1 福祉サービスの経済的波及効果

 経済的波及効果の試算が公表される例としては、公共(建設)投資がある。ここでは、それにならって、福祉サービスの経済的な波及効果の試算を行った。

 しかし、この試算は、福祉サービスそのものの価値を表すものではないという点に留意する必要がある。ここでの試算は、福祉サービスが行われることによって付随的に発生する経済的な波及効果を計算するものである。

 この点を公共投資について見てみると、例えば、道路事業では、道路ができること自体によって、輸送の効率が向上し、交通量も増加し、経済的な活動が活発化する。これは、道路事業そのものの目的に基づく経済的な効果であるが、これは、この項で行う経済的な「波及効果」の計算には含まれない。このような事業本来の目的に経済的な効果を含む事業としては、潅漑、発電、水道、港湾、耕地整理などの事業がある。

 しかし、この事業本来の目的による経済的な効果は、例えば道路事業であっても、例えば、拡幅なのか直線化なのか歩行者の安全の向上なのかなどによっても異なることや、地域ごと、個々の路線ごと、さらに区間ごとでも異なり、効果を測定する期間の取り方によっても異なるなど、客観的な評価が難しい。一方で、公共事業であっても、河川・砂防・海岸などの治水、治山、公園事業などは、事業本来の目的に直接的な経済的効果を含まない(このことは、福祉サービスでも同様である)。また、道路事業であっても、事業の目的に含まれると考えられる安全性や快適性の向上などに関する部分は、直接的な経済波及効果はない(経済面以外の意義を目的とする)。

 つまり、一般にいう公共投資の経済的な波及効果は、上記のように評価の難しい事業本来の目的に含まれる経済的な効果ではなく、建設事業に伴って発生する、セメント、鋼材、建設機械の需要や雇用の増加による生産誘発効果を「客観的に」計算しているものである。

 したがって、逆に、経済的な波及効果について、建設事業と福祉サービスを比較する場合には、建設事業のなかには事業本来の目的として経済的な効果を含む事業があり、それらの経済的な効果は、産業連関表を使った今回のような波及効果の計算にはカウントされないことを考慮する必要がある。

(1) 福祉サービスの経済的波及効果(北陸経済研究所の試算による(詳細は資料編(略))

 富山県における福祉の経済的効果について、産業連関表による分析を行った。その結果、経済的な意味で、福祉サービスは社会に対する負担ばかりではなく、建設投資と同様の経済的波及効果があることを確認した。

(一部略)

(2) 福祉の経済波及効果評価の留意点について

 福祉の経済波及効果の評価については、次の点に留意する必要がある。

 ア 社会保障部門の範囲

 この計算のうち「社会保障(福祉)部門」についての数値は、ソフトの福祉サービスに関するものである。したがって、例えば特別養護老人ホームの建設の波及効果などは、「建設」部門で計算することになる。

 イ 福祉の経済波及効果の意義

 福祉の経済波及効果を建設部門など他の部門と比較する場合には、留意すべき点として次の3点等があると思われる。しかし、高齢化率の高い地域が過疎地域と一致している点などを考えると、公的介護保険制度の導入などの福祉施策の拡充が今後の地域経済に与える影響は決して小さくないと考えられる。

・ 社会保障(福祉)と異なり、例えば建設投資は、投資の結果として道路などの社会資本が残るのであり、それによる運輸・交通や地域経済などの効率化、活発化などの大きな効果がある(=事業本来の目的)。しかし、この部分は、産業連関表による分析では表に出てこない。社会保障(福祉)に関して、これに相当するものは、本来の目的である福祉サービスとして提供、消費される。それに、次の3、4項の消費拡大効果や労働力創出効果などがあると考えられる。

・ 建設投資については、景気変動に対してある程度弾力的な運用が可能であるが、社会保障部門等では一般に弾力的な運用は困難である。

 福祉部門は、他の部門に比較すると県内生産額に占めるウエイトが小さい。(経済的な受け皿としての福祉部門の能力には現状としては限界がある。)

 ・ 社会保障部門       (404億円)・・(福祉)

 ・ 医療・保険部門    (2,184億円)

 ・ 建設部門       (9,618億円)

注)括弧内は平成2年産業連関表における県内生産額の規模

(3) 各県の状況

 複数の県が、福祉による経済的波及効果の試算をしている(比較のために建設部門も試算)。その結果を見ると、次の表のように、各県の産業構造等の違いによって若干の異同があるが、各県とも共通して、生産誘発効果については建設と概ね同レベル、雇用誘発効果については建設を上回るという傾向となっている。

 

2 福祉の地域間所得移転効果

 福祉サービスは、対象となる(対象者として大きなウエイトを占める)高齢者の分布が地域的に遍在していることから、地域間の所得移転の効果があると考えられる。特に、過疎地域は、高齢化率の高い地域とおおむね一致する傾向がある。

 この観点から、要介護高齢者・虚弱の高齢者数についておおまかな試算をしたところ、建設投資に準ずるような大都市圏から地方圏への所得の移転効果があることが明らかとなった。

 次の表は、年人口の年齢階層別の推計値に、現在の要介護高齢者等の出現率などを機械的に当てはめ、推計したものであるが、介護サービスの提供が要介護高齢者や虚弱高齢者の要介護などの程度や人数に比例して行われるべきものと考えると、大都市圏に比較して、おおむね地方圏で介護費用の支出が高くなると考えられ、その全国平均からの乖離の程度は、行政投資実績(=概ね行政による建設投資)と同様の傾向があることがわかる。

 なお、留意すべき点として、地域間の所得移転はサービス量に応じた結果として生ずるという点がある。すなわち、高齢化率が高くても、当該市町村で十分な福祉サービスの提供が行われなければ、地域間の所得移転効果もそれに応じて小さくなる。逆に、介護サービスに熱心な市町村には、より多い(地域間の)所得の移転があると考えられる。

(参考) (虚弱高齢者については、(厚生白書の数値を基礎に)研究会で推定)



3 福祉の消費拡大効果

 福祉サービスが、経済的な波及効果を持つことについては、「1 福祉サービスの経済的波及効果」で明らかにしたが、それとは別に、福祉サービスが充実することによって、高齢者や県民が安心して消費を行うことができるようになることから、消費の拡大効果があると考えられる。

 特に、我が国は、貯蓄率が高く、消費性向が先進諸国に比較して著しく低い状況にある。この結果、国内消費の不足から輸出への依存度が高くなりやすく、経済摩擦を生みやすい構造となっているとも考えられる。その一方で国内での消費が不足することから国内の生産設備に対する投資先が限定され、海外投資が促進されがちな構造があり、この結果、ますます国内の需要が不足するともされている。

 我が国で消費性向がこのように低い理由の一つとして、いわゆる老後に対する不安をはじめとする将来への不安があるとされている。福祉サービスの制度的な充実は、その意味で、国民の安心を生むことにより消費を拡大し、経済の活性化に寄与すると考えられる。

 これを市町村レベルの地域経済で見れば、移動を嫌う傾向のある高齢者の地元での消費が増大することにより、地域の商店街の活性化にも寄与すると考えられる。


4 福祉の労働力創出効果

(1) 介護の社会化、保育の社会化による効果

 福祉の充実は、介護の社会化や保育の社会化を通じて、家庭内で主として女性により無償で行われてきた介護や保育などを社会全体で支えるものであり、それにより、次のような効果があると考えられる。

ア 就業上のキャリアの中断をなくすことにより女性の能力の向上と経験の蓄積を妨げない。

イ 家庭内の介護や保育に縛られていた女性等の能力が社会で活用できるようになる。

(2) 福祉サービスによる高齢者・障害者の職業能力の発揮

 福祉の充実により、情報機器を含む福祉用具の活用等が促進され、高齢者や障害者の職業能力の発揮が可能となる。

(3) 広義の福祉対策による高齢者・障害者の職業能力の発揮

 高齢者や障害者の自己実現を図るために推進される高齢者や障害者に適した短時間労働などの労働・雇用形態、就労環境の整備や、通勤環境のバリアフリー化、情報機器を活用した在宅勤務などの普及促進などにより、高齢者や障害者が職業能力をより効果的に発揮できるようになり、経済の活性化に寄与する。

 

5 福祉は中長期的に経済の活力を削ぐか

 上記のとおり、短期的あるいは地域レベルでは、福祉分野への資金や人材の投入は、経済の活性化に寄与することは明らかであると考えられる。

 一方、福祉分野への資金や人材の投入が、中長期的に、あるいはマクロ的に、経済にどういう影響を与えるか、すなわち福祉分野への資源の投入によって、中長期的に経済システム全体の効率が低下するかどうかなどについては、結論が出ていないと考える。これらについては、おおむねつぎのような議論などがあると考えられる。

ア 労働生産性の低い(労働集約的な)福祉分野への労働力の移動を引き起こすことによって、経済の効率性を低下させるという意見がある。

 これについては、従来、家庭内で非効率で行われていた無償の介護サービスなどが専門的かつ効率的に行われること、またそれによって家庭内の潜在労働力が有用な労働力として社会に開放されることから、経済と経済外を含めた社会全体の効率はむしろ増加するとも考えられる。

 しかし、留意すべき点として、現在の介護者のかなりは高齢者であり、介護が社会化されても、その労働力は社会には出てこないのではないかという点がある。ただし、平成4年の国民生活基礎調査によれば、要介護高齢者のいる世帯の30〜40代の女性の就業率は、要介護者のいない世帯に比べて20〜30%低くなっている。また、平成2年の高齢者実態調査報告書(富山県高齢福祉課)によれば、主な介護者のうち38.8%は配偶者であるのに対し、嫁・息子・娘などの1世代以上若い世代は56.6%となっている。

イ 福祉分野において国民が安心して生活できるようになることにより、消費性向が高まり(貯蓄性向が低下し)、投資資金が不足する結果、経済成長が制約されるという見方がある。

 しかし、我が国は、極めて消費性向が低い国(アメリカが100%前後であるのに対して日本は70%前後)であり、そのことが、国内需要の不足を生み、多くの経済的な問題を生んでいるという考え方もある。また、国内の需要に見合う(必要な)国内の投資額を大きく超える貯蓄は投資先を求めて海外投資に向かっており、わが国の過剰な貯蓄は、世界経済に大きな影響を与えているとも言われている。

 なお、これらに関連して、「経済審議会行動計画委員会 医療・福祉ワーキング・グループ報告書」(平成8年10月9日)に次の記述がある。

「1.問題の所在
1) 福祉の経済的な意味
 ・・・現在でも「福祉は経済を傾ける」といった議論が見られるが、福祉分野の規制緩和を進めることにより、民間マーケットの拡充が期待されるとともに、福祉には日本社会を支える面があり、経済的側面を多分に有することを積極的に評価すべきである。すなわち、高齢化により負担のみがもたらされるわけではない。高齢化により介護サービスなどの新規需要が創り出されるという考え方も必要である。

 福祉は、ヒトがヒトを介護するから最も労務集約的であり、雇用創出効果が大きい。医療・福祉は多くの雇用を支え、日本経済の根幹の一つを形成していることの意義は、他の産業分野と同じである。現に、平成7年11月に経済審議会から発表され、12月1日に閣議決定された「新経済計画」では、平成5年(1993年)から平成12年(2000年)までに、新規に創出が展望されている421万人の雇用のうち、医療・福祉部門で約114万人と大きく期待されている。ここで、医療・福祉部門といっても、その大部分は福祉部門であろう。

 また、老親の介護のために、職を辞めたり、パート労働を余儀なくされているといった家族は実に多い。現在の要援護の高齢者は200万人を超え、平成22年(2010年)には400万人に近づくとみられ、まさに福祉は、橋や道路と同じで産業基盤の性格も有してきた。福祉がなければ、家族は老親の介護に追われて職場に行けないからである。これに加え、保育所の増設、充実等の保育対策の充実も女性の就業率向上、出生率向上を通じ労働力供給に資することとなる。    」

 なお、「高齢社会と経済活力に関する調査研究」(平成9年3月 野村総研)では、「国民負担率または国民給付率が、経済成長に与える影響については、未だ定説はなく、・・・」としつつ、OECD諸国の統計資料を用いた分析を行い、「両者の間に負の相関関係が存在する可能性がある。」としている。

第2節 福祉を効果的・効率的に進める方策はあるか

 今後、21世紀に向けて福祉分野への資源の投入が避けられないとすれば、福祉対策や高齢化対策を効果的・効率的に進める必要がある。

 ここでは、以下で、効果的あ・効率的な福祉の推進に向けて、

(1) 社会保障を効果的に進める視点から見た福祉施策

(2) 福祉への総合的な視点の導入

(3) 予防の視点の重視

(4) 高齢者や障害者などの活躍が可能な環境づくり

(5) 高齢社会を前提とした効率的な社会・経済システムの形成

の諸視点から検討を行った。



1 社会保障を効果的に進める視点から見た福祉施策

「『構造改革のための経済社会計画−活力ある経済・安心できるくらし−』の推進状況と今後の課題」(経済審議会(平成8年12月)では、「社会的入院」についてつぎのようにふれている。

「II.医療
1.問題の所在

日本では、寝たきり老人などと呼ばれている要介護の高齢者を、福祉施設(特別養護老人ホ−ムなど)ばかりでなく、医療施設(老人病院など)でもお世話している。前者には30万人が生活し、後者には倍以上の70万人の高齢者が生活している。入院治療の不要な高齢者が、福祉施設や在宅での生活を支えるホームヘルパーなどの不足によって、病院で暮らしていることを、「社会的入院」と呼ぶ。

本来、福祉施設で行われるべき介護が、日本では大規模に医療機関で行われているが、その歪みは、医療施設の方が倍近いコストがかかる一方、居室面積が福祉施設より狭いことに端的に現れている。平成8年の経済白書によれば、1ケ月当たりの費用は、特別養護老人ホ−ムで約26.2万円、社会的入院の代表である療養型病床群では約42.8万円であり、厚生省によれば、社会的入院は同50万円である。    」
また、これを受けて、「経済審議会建議『6分野の経済構造改革』」(平成8年12月3日)では、つぎのように、福祉サービスの充実によって、今後の高齢化に対応していくべきことを述べている。
「1.医療

我が国では、要介護の高齢者が、福祉施設(特別養護老人ホ−ムなど)ばかりでなく、医療施設(老人病院など)でも介護を受けている。入院治療の不要な高齢者が、病院で暮らしていることを、「社会的入院」と呼ぶ。この「社会的入院」の歪みは、医療施設の方が倍近いコストがかかる一方、居室面積が福祉施設より狭いことに端的に現れている。こうした医療偏重の巨額な無駄が続いていることの背景の一つに、医療施設(老人病院)は主に保険(社会保障費)で賄い、福祉施設(特別養護老人ホーム)は主に税金で賄っていることが挙げられる。今後、国民医療費の高騰を防ぐに当たっては、財源論にまで踏み込んだ議論が不可欠であり、そのためにも医療・福祉制度の情報開示、透明化が必要である。また、現行の診療報酬制度の在り方についても、それが医療偏重を可能とし、社会的入院等の背景となっているという問題点を抽出すると同時に、その見直しが必要である。   」
2 福祉への総合的な視点の導入
家族による介護から社会全体による介護への転換を、効果的、効率的に進めていくには、医療制度や年金制度などと福祉に係る制度の関係を総合的に捉えていく必要がある。同様に、(高齢者等の)雇用政策、都市づくり施策や交通施策と福祉施策との連携を総合的に捉えていく必要がある。

(1) 部門・分野間のネットワークの形成(福祉の総合化の推進)

 保健福祉に係るサービスや機能は、これまで、福祉サービスの対象者の種別などに応じた専門性、供給の効率性や歴史的な枠組みなどを要因として、対象者別や職能部門別、福祉・保健部門別に形成されてきた。

 しかし、今後は、それらの部門の枠組みを超えて、各種サービス機能間の連携を促進し、対象とする利用者個人の需要に合わせた総合的かつ効率的なサービスを提供できるようにする必要がある。

 このため、地域レベルでサービスを総合的に行う地域福祉の推進や、市町村等における保健福祉総合センター設置など保健・福祉部門間の組織や機能の複合化、サービスの統合化の推進など、福祉と保健・リハビリテーション・医療の連携などを推進していくべきである。

(2) 多様な行政サービスに福祉の視点を導入する「行政の福祉化」の推進

 県民が安心して暮らせる社会の実現には、(介護の社会化を前提として)人生と生活の継続性を担保する「在宅福祉」を推進する必要があるが、その在宅福祉サービスを効率的に推進するにあたっては、従来、福祉とは関係がないと考えられてきた、次のような多様な行政分野に福祉の視点を導入するとともに、地域における各種関連行政サービス・機能間の連携・組織化(教育、防災、自治、子供会など)を推進する必要がある。

 その連携は、県、市町村の各レベルで行うとともに、特に小学校区などを中心とした地域レベルで具体化していくべきである(地域福祉の推進)。

(3) 社会福祉法人やNPO等サービス供給主体を超えた連携の推進

 利用者の個別のニーズに合った包括的なサービスを効率的に提供するためには、適切なケアマネジメントに加えて、多様なサービス供給主体間の連携を図る必要がある。その連携は、主に地域レベルで行われるべきである。

(4) 施設の複合機能化や既存施設の活用の推進

 地域における統合的サービスの実現や、福祉サービスの効率的・効果的な充実に向けて、補助制度などの制度や部門間の垣根を乗り越えて、地域に存在する既存資源の活用や、地域に係わる多様な機能を複合した施設の建設を促進すべきである。

 ア 余裕教室、公民館などの福祉サービス活動への活用

 イ 複合機能施設の建設の推進




3 多様な供給主体の参入の促進と競争の実現

 効率的なサービスを実現するとともに、サービスの質を維持、向上させていくためには、適切な競争条件を整備することを前提に、多様な供給主体の参入を促進し、供給主体間の競争を担保する仕組みを導入していく必要がある。

ア 多様な供給主体の参入の促進

 従来の地方公共団体、社会福祉法人のほか、福祉に関するボランティア団体、地域活動団体や、それを核とするNPOを振興するとともに民間企業の参入を促していく必要がある。

イ 競争を担保する仕組みの導入

 多様な供給主体が参入しても、それらが福祉サービスの対象者を囲い込んでしまったり、不適正な勧誘など競争を阻害する条件があれば、適正な競争は実現しない。このため

が重要であると考えられる。

 

4 予防の視点の重視

 治療や介護には、経済的なコストばかりでなく、本人や家族などの負担や機会損失などがあること等を考えれば、社会全体としてのトータルコストは、予防の方がはるかに低いと考えられる。このため、高齢化と長寿化の進行に伴う医療、福祉充実のコストを抑制していくためには、今後、社会全体として予防の視点を一層重視していく必要がある。

 例えば、家庭での閉じこもりが、使わない身体機能等を衰えさせ、寝たきりや痴呆につながる傾向があるとされている。このため、健康な高齢者を対象に、高齢者が介護を必要とする状態とならないように、保健予防活動や、高齢者などが生き生きと生活したり活動できる環境づくりなど、各分野の広い意味の予防対策を推進する必要がある。

(1) 保健予防対策・リハビリテーションの推進

 高齢者などが健康を維持できるよう、さらに保健予防対策を充実していく必要がある。

(2) 生涯スポーツ、地域活動、生涯学習の推進、買い物、就労環境づくりや出歩ける環境づくり

 高齢者の就業率の高さと老人医療費の高さには統計的に負の相関があるとも言われており、就労をはじめとする活動が、高齢者などの精神的、肉体的な活力の維持に重要な役割を果たしていると考えられる。このことから、高齢者などがスポーツや、地域活動、生涯学習活動、就労や買い物などの活動を通じて適度の運動・活動を継続していくことは、体力や精神的な活力の維持を通じて、精神的・肉体的な健康に関する(介護が必要とならないための)予防効果を持つと考えられる。

ア 生涯学習の高度化

 長寿時代、高学歴時代に対応した生涯学習メニューの提供などのため、県内外の優れた講師の発掘活用や大学等の教育機関と連携した生涯学習環境等をさらに強化していく必要がある。また、同様の趣旨から各種の文化的な催し物などを地域に密着した市町村レベルで開催していく必要がある。

イ 地域総合スポーツクラブの振興

 活動拠点の提供や組織作りの支援などによる地域総合スポーツクラブなどの振興により、高齢者などが生涯を通じてスポーツに親しめる環境を作っていく必要がある。

ウ 地域活動の環境づくり

 高齢者などが、地域活動に参加できるような環境づくりを進める必要がある。

エ 高齢者雇用の環境づくり

 能力と意欲のある高齢者などに適した雇用の開拓や(在宅勤務や短時間労働などの)就業環境づくりを積極的に行っていく必要がある。

オ 活動拠点のバリアフリー化

 高齢者などが、以上のような活動に参加できるような生活環境のバリアフリー化を促進する必要がある。特に、スポーツ活動の拠点となるスポーツ施設、生涯学習の拠点となる社会教育施設、地域活動の拠点となる地区公民館・集会施設などのバリアフリー化を促進すべきである。

カ 商店街のバリアフリー化

 また、高齢者などが買い物などに出歩けるようにしていくことは、肉体的、精神的な活力の維持に効果があり、健康上の予防効果もあると考えられる。このため、地域の商店街などで高齢者などに対応した品揃えやバリアフリー化を促進していく必要がある。

(3) 居住環境のバリアフリー化の推進

 家庭内の転倒等の事故による死亡者に占める高齢者の割合は極めて高い。我が国では、年間約8万人が大腿の付け根を骨折し、その9割以上は高齢者と言われており、事故を契機に、高齢者が寝たきりになるケースも多いと言われている。富山県では、高齢者の寝たきりの原因の第3位は事故・骨折(12.2%)である(高齢者実態調査報告書(平成2年.富山県高齢福祉課)。

 このようなことから、転倒など寝たきりの原因となる事故を未然に防ぐよう、住宅や街のバリアフリー化を推進する必要がある。特に、予防の視点からは、一般の高齢者の住宅のバリアフリー化も促進していく必要がある。
(参考)住宅のバリアフリー化の経済的効果

ア マクロの経済効果

 建設省建設政策研究センターで行われた試算によれば、1990年から2025年までに1990年価格で総額 8.2兆円の投資を高齢者住宅の整備に投入した場合,2倍強の19.7兆円の経済効果が現われ,純便益として10.5兆円が見込まれる。(「高齢者住宅整備による介護費用軽減効果」平成5年)

イ 介護費用の低減

 住宅のバリアフリー化は、工事費用を上回る介護費用低減効果がある。

 建設省建設政策研究センターの試算では、高齢者仕様にするためにかかる工費対軽減される介護費用(費用対効果)は、たとえば廊下や居室の段差の解消、手すりの設置、間口の拡幅・建具の配慮を行った場合は工事費に対して5.2倍の介護費用軽減効果があり、金額では、住宅を高齢者仕様にすることにより軽減される介護費用は370〜600万円程度である。

ウ 予防による医療費・介護費用の低減

 予防のためのバリアフリー化は、次表(建設政策研究センター資料)の「高齢者住宅1」程度でよいと考えられる。

(参考)


5 高齢者や障害者などの活躍が可能な環境づくり

 高齢者、障害者、子どもや妊産婦、あるいはけがなどのために一時的に行動が不自由になっている人々の活動を活発にし、それらの人々の能力を社会の中で発揮させる環境を作ることができれば、障害のある人もない人も同じように自立的に生きがいを持って生き生きと暮らせるようにするばかりでなく、介助を要する場面を減らし、そのための社会的なコストを引き下げる可能性がある。

 このため、誰もが、必要な都市機能や生活関連機能に容易にアクセスできるようなソフト・ハードの生活環境を整備する必要がある。

(1) 生活環境のバリアフリー化

 車いすなどを必要としない高齢者も、歩行や階段の昇降などは若年世代に比べて負担もあるとされている。このように広い意味で移動に何らかの配慮を要する人々は、21世紀には、次のように県の中で大きな割合を占めるようになると考えられる。

(2010年人口の推計は、国立社会保障・人口問題研究所の平成9年推計。また、要介護高齢者・虚弱高齢者数は、平成7年版厚生白書掲載の年齢階層別の出現率に年齢階層別の人口推計値を乗じて算出)

 これらのなかで、例えば、就学前の児童のうち3歳以下の幼児、児童などは、ベビーカーなどが使えれば外出時の親の負担は減ると考えられるが、公共交通機関の対応やまちのバリアフリー化が進んでいないため、利用が制約されている。この結果、幼児などを伴う場合には、いわゆる、おんぶかだっこを強いられ、そのことが子どもを持つ親の外出の制約にもなっていると考えられる。

 なお、障害者のすべてが移動に制約のある人々ではないが、下肢に障害のある人や視覚障害者以外でも、聴覚障害者は警笛や案内放送が聞こえず、上肢障害者の中にも車の運転や駅の券売機の利用等に不便を感ずる人々が多い。

 以上のようなことから、地域環境のバリアフリー化が進めば、高齢者、障害者の地域活動や能力のある高齢者の就労などが進み、また高齢者などが容易に出歩けるようになり消費の活発化にも大きな効果があると考えられる。それにより地域活動や商店街などの地域経済等も活性化する。

 また、道路の段差の解消等は、自転車の利用環境の向上にもつながり、自転車の利用が増えれば環境にも好ましい影響を与えると考えられる。

 なお、バリアフリー化のための建設投資も、地域経済の活性化に効果がある。

(2) 心のバリアフリー化

 障害者や高齢者に対する誤解や偏見を解くことは、個人の尊厳を守るために当然に必要なことである。同時に、雇用者などの誤解や偏見が取り除かれることは、障害者等の地域での自立や就労の促進にも寄与し、福祉サービスに係る社会的負担の軽減にも資するものである。

 また、障害者や高齢者への理解に基づくボランティア活動やちょっとした配慮・親切は、ハードのバリアフリーや専門的な福祉サービスに係る社会的な負担を大きく軽減することになる。

 これらの視点から、障害及び障害者や高齢者についての県民の理解を深めるため、障害者と障害のない人々との交流体験や交流教育、統合教育を推進することや、高齢者と子どもたちの交流体験の機会を充実することなどにより、障害者等に対する差別や偏見のない地域社会づくりを進める必要がある。

(3) 情報のバリアフリー化

 高齢者や障害者が、障害のない人々と同じように必要な情報を取得したり、発言したり、コミュニケーションを図ることができるようにすることは、障害者などが、障害のない人々と同じように生活していくための基本的条件である。特に障害者や高齢者(加齢障害により)は、コミュニケーションの障壁のために、能力の発現を妨げられているケースも多い。

 コミュニケーション上の障壁を解消し、情報のバリアフリー化が可能になれば、高齢者や障害者が障害のない人々と同じように、働き、生活することが可能になり、社会で福祉を支える力が強くなるとともに、社会の負担も小さくなり、また、障害者や高齢者などの地域参加により、地域社会も活性化していくと考えられる。

 このための方策は、基本的に既存の情報提供やコミュニケーションのバリアフリー化であり、従来から行われてきた情報提供やコミュニケーションを、障害に応じた多様な方式で提供していくことである。これを障害種別にみると、視覚障害者には点字化と音声化・電子化であり、聴覚障害者には文字化や手話化などである。また、障害などのために外出などの負担が大きく、窓口や図書館などに出向くのが困難な人々にとっては、電話、インターネットなどによる情報提供も重要である。

 以上のことから、特に、行政における情報提供等については、今後次の点に配慮して行くべきである。

ア 行政提供情報の電子化(インターネットによる情報提供など)

 特に、視覚障害者については、従来から、点字やテープへの録音入力が行われてきたが、中途障害者にとっては点字の習得に困難が大きいとされてきた。これについて、近年、パソコンで利用可能な安価な文字情報の音声読み上げソフトが実用レベルに達しつつあることから、電子化された文字情報は、視覚障害者にとっても重要な情報源となりつつある。

 このようなことも踏まえて、行政の情報提供においては、移動に制約のある人々への配慮も含めて、自宅で情報が得られるインターネットによる情報提供や情報の(文字)電子化を進めるべきである。

 なお、それらの活用を促進するため、障害者や高齢者などへのパソコンやインターネットの普及を促進・支援して行くべきである。

イ 会議やイベント等における手話通訳者等の活用(会議等のユニバーサル化)

 福祉関係の会議やイベント等のほか、それ以外の一般向けの公開の会議やイベントなどにおいても、出来る限り手話通訳者や要約筆記者などを活用していくべきである。

(4) 制度のバリアフリー化

 障害者が障害のない人々と可能な限り同じように働き、社会に貢献できる環境を作るためには、国の問題であるところが大きいが、資格制度においても、障害者に対する受験資格などの制限を可能な限りなくすように努めていく必要がある。

 また、障害児や障害のある生徒が、その希望に応じて、障害のない児童、生徒と同じような教育が受けられ、職業能力などが伸ばせるように、統合教育に向けた学校などの環境づくりを進めていく必要がある。



 
6 高齢化社会に応じた効率的な社会・経済システムの形成

 昭和45年の県内の高齢者数は、約8万3千人で高齢化率は8.1%に過ぎなかった。それが、平成7年には、約20万2千人(高齢化率18.0%)へと大幅に増加し、平成22年(2010年)には約27万4千人(高齢化率24.8%)へ、また、その一方で平成22年には65歳未満の人口は平成7年に比べて約10%減少すると推計されている(国立社会保障・人口問題研究所)。

 また、高齢者単身世帯又は高齢者夫婦のみの世帯で生活する高齢者は、平成7年時点で約5万6千人に達しており、その割合はさらに伸びている。

 現在の社会・経済システムは、未だ、かっての[_高齢者や障害者が少なく、_介護については家族介護を、前また保育については家族による保育を前提とする]社会を反映したものになっている。

 高齢社会においては、この社会・経済システムを、[_今後進んでいく核家族化や高齢化を反映した新しい人口や家族構造、_あるいは共働きや価値観の多様化を前提とした新しいライフスタイル]に効率的に対応する社会・経済システムに変革していく必要がある。








第3章 「福祉の視点を核に高齢社会に対応した社会・経済システムの形成を進めるべきである」

 次の図のように、富山県では、今後、人口にしめる高齢者の割合が著しく高まることから、高齢者が社会に占める地位もより積極的な方向へ変化していくと考えられる。同時に、経済環境の変化に対応するとともに、高齢化や核家族化に伴う福祉サービスニーズの増大に対応して、経済の活性化と福祉サービスの向上を同時に実現するため、県は、高齢化社会への対応と福祉の視点を核に、少子高齢社会に対応した新しい社会・経済システムの形成に積極的に取り組むべきである。

(平成22年の数値は、国立社会保障・人口問題研究所推計による。)
 高齢化への対応と福祉の充実は、県民福祉の向上をもたらし、県民が安心して暮らせる福祉社会を作るだけでなく、次表のように経済的にも、また、文化面や地域活性化面でも、多くの副次的な効果があることを踏まえて総合的に検討しつつ積極的に進めていく必要がある。
21世紀の福祉社会関連 課題と対策の意義(代表例の例示)
対策 産業・技術 土木・建築・交通 狭義の福祉 雇用 生涯学習 余暇 ボランティア
課題 高度情報化 障害をカバーする機器の開発・普及 福祉のまちづくり 福祉サービスの提供に競争原理を導入 介護の社会化 保育の社会化 高齢者の雇用対策 生涯学習の振興 余暇活動の振興 ボランティア活動の支援
2010年の状況 具体的課題
高齢化 高齢化率1995年17.9%マ24.8% 介護負担の増大 徘徊老人の探索 介護負担の軽減 移動の障壁の除去に伴う介護負担の軽減・事故の減少に伴う要介護者発生減 介護の効率化 介護の効率化(家族介護マ専門的介護) 社会の介護負担力の増加 介護労働力の確保
長寿化 平均余命の伸長 ライフサイクルの変化マ生きがい 生きがいを得る手段の多様化 高齢者の活動の活発化 生活の充実・生きがい・自己実現
人口学的変動への対応 少子化 年少人口割合1995年15.1%マ13.8% 社会の将来的な活力の減少 ベビーカーの利用など子育て環境の向上 出生率の向上
生産年齢人口の減少 1995年66.9%マ61.4% 労働力の不足 在宅勤務による高齢者・障害者・主婦の能力活用 障害者・加齢障害者の能力活用 移動の障壁の除去による高齢者・障害者の能力活用 女性の能力活用 高齢者の能力活用
福祉社会の実現 福祉の充実・ノーマライゼーションの実現 生きがいを得る手段の多様化 障害者の活動の活発化・QOLの向上 高齢者や障害者等の活動の活発化 選択性の向上マ利用者本位のサービスの実現 介護の質の向上(家族介護マ専門的介護) 生活の充実・生きがい きめ細かな福祉サービスの提供
低成長時代・地球時代への対応 国際競争の激化 経済的余力の低下マ効率化の要請 狭義の福祉サービスを必要とする人の低減 福祉サービスの効率化 介護の効率化(家族介護マ専門的介護) 狭義の福祉サービスを必要とする人の低減 福祉サービスコストの低減
介護機器産業の振興 建設市場の活性化 民間企業に新たな市場を提供 介護関係産業の振興・雇用の増加 労働力率の向上による経済の活力の維持 文化振興 余暇産業の振興 青少年の健全育成
対策の副次的効果 雇用の増加 中心商店街の活性化 女性の労働力率の上昇に伴う経済活力の維持 地域社会の活性化
一般の人々にとっても便利な機器の普及 一般の人々にとっても快適な環境の形成 男女共同参画社会の実現
注)福祉社会の形成は、上記のほか、医療・保健をはじめとする多様な分野と密接な関連がある。 (富山県社会福祉課)

 

第1節 介護・保育の社会化と福祉の量的拡大

 世界に例のない速さで進む高齢化等によって要介護や要支援の高齢者が増加する一方で、高齢者世帯と若年世帯への分裂によって核家族化が進行し、家庭の介護力や保育力が低下している。また、一方で、経済のグローバル化に伴う新興工業経済地域(NIES)諸国等との国際競争の激化によって、県経済の高付加価値化、ソフト化が求められているが、このような産業構造の転換を進めるには、家庭内で介護や保育に縛られている有能な労働力を社会に開放していく必要がある。

注)平成8年の「国民生活選好度調査」(経済企画庁)によれば、女性が働き続けるのを困難にする(障害となる)原因(20〜59歳女性の回答比率で)は、1位の育児(76.3%)、と2位の老人や病人の世話(53.8%)が圧倒的に高い割合となっている(3位は職場での結婚・出産退職の慣行(35.0%)、以下、家事(33.2%)、家族の反対や無理解(28.6%)、自分の健康(28.2%)の順。なお子供の教育は(21.2%))。

1 保育の社会化の推進

 子どもの保育は、_核家族化の進行などを背景とした福祉の充実面から、また、_少子化対策や、_女性の職業能力の発揮や優れた労働力の確保といった3つの面から、社会全体によって支える必要性が強まりつつある。

ア 核家族化に伴う家庭の保育力の低下対策として

 従来の多世代世帯が、高齢者世帯と若年世代に分離しつつあることから、家庭の保育力が低下している。また、一方で、女性の就業率が上昇している。このため、福祉施策としての保育対策をさらに充実して行く必要がある。

イ 少子化対策として

 就業と少子化の関係について、平成9年実施の第11回出生動向基本調査では、妻が(出産子育てにかかわらず)一貫して就業を継続している場合は、妻が専業主婦である場合や(出産・育児期に退職し)再就職した場合よりも、常に出生児数が低いという結果が出ている。また、その傾向は、農村部よりも人口集中地区(核家族化が進行している)でよりはっきりしているとされている。

 これは、適切な対策がとられない限り、今後、核家族化の一方で、女性の就業率が高まっていくことにより、さらに出生率が低下していくという可能性を示していると考えられる。

 また、子育てに関する機会費用などについて、平成9年版国民生活白書では、出産・子育てによって就業を中断し、その後同様の職種に再就職した場合の賃金格差による生涯の損失は、生涯賃金で約63百万円(生涯賃金の26.8%にあたる)に達すると試算している。また、(決して少なくない割合で存在している)再就職がパートタイマーとしての就労の場合は、約1億85百万円の損失となり、これは、得べかりし生涯賃金の78.4%を失うことに相当すると試算されている。

 出産と育児は、このような金銭的な機会費用の発生を意味するだけでなく、女性がその能力を発揮できる機会をせばめるという意味で、結婚しない女性、子どもを生まない女性を増やし、それが少子化の原因となっていると考えられる。実際に、上場企業の女性管理職には未婚の女性が多いこと、女性の賃金の高い地域では初婚年齢が高い傾向があるともされている(いずれも、平成9年版国民生活白書から)。

 以上のように、核家族化などの家族構成の変化、共働きなどによる家族経済の変化や、価値観の多様化、女性の自己実現の要求の重みの変化などを背景に、結婚、出産、保育に直接かかる費用の負担ばかりでなく、女性が出産や子育てのための退職などでキャリアの中断を余儀なくされるケースが多いことなどが、少子化の重要な原因となっていると考えられる。したがって、保育の社会化が必要であると考えられる。

ウ 女性の職業能力発揮の条件として

 今後の高齢化と少子化の進行に伴って、社会を支える労働力の減少に対応するために、また、経済のグローバル化に伴う産業の高付加価値化の要請に伴って必要とされる高い能力を持った労働者を社会に供給するためには、家庭の中で眠っている女性の能力を生かす社会システムを構築していく必要がある。それは具体的には、保育を社会全体で支えることにより、女性のキャリアの中断(経験と専門能力維持の中断を意味することが多い)を防ぐシステムを作ることであると考えられる。

 保育の社会化は、特別保育などの保育対策、育児休業制度の普及、その際の所得保障の問題や、休業の結果が職業上の地位、給与などにマイナスの影響を与えないような仕組みづくりなどが重要と考えられるが、それには国全体の取り組みが必要なものが多い。地方公共団体レベルで対応できる施策としては、特別保育の充実などがあると考えられる。

 具体的には、職業を持つ女性が必要とする夕方から夜間にかけての保育や低年齢児の保育の支援を進めていく必要がある。すなわち、少子化対策、女性の職業能力発揮の支援や自己実現を支える視点から、十分な延長保育や休日保育、3歳未満児の保育などの特別保育の充実や、企業内保育所の支援などを積極的に進めるべきである。これらの対策は、経済の高付加価値化への対応や、労働力の創出を通じて、経済の活性化に資するとともに、男女共同参画社会の実現に寄与する。

 なお、このような保育対策は、福祉の向上や産業経済面などの効果が大きいというだけでなく、母親が働くことによって負担する税などの社会的負担の直接の増加額だけでも国・地方公共団体が保育対策に支出する額を上回るという試算もある。

注)満1歳から就学前までの期間、親のうちの一人が子育てに専念した場合に比較して、子供を保育所に預けて両親共に働いた場合に両親が負担する税等(所得税、住民税、厚生年金・健康保険料など)の増加額は、保育にかかる公的費用を上回る(特に、大卒の女性の場合に、その額は200万円近くも上回ると)という研究結果がある。(前田正子「育児支援策充実の意義」1995 LDIレポート95年11月・ライフデザイン研究所)
このように専門的な保育対策が、家庭での保育の社会的なコストの効率を上回るということは、同様に介護においてもあると考えられる。


2 介護の社会化を前提とした在宅介護の推進

 高齢化によって、要介護の高齢者が増加していく中で、すべての県民が老後の不安なく、安心して暮らせる社会を作るには、人生と生活の継続性を維持する在宅福祉の充実が不可欠である。特に富山県は、持ち家率日本一であることから、在宅福祉の推進に適した条件を有している。

 しかし、家庭内における家族介護は、家族に負担と人間関係の緊張をもたらすケースが多いとされている。このため、要介護者とその家族を適切かつ十分に支援する社会全体による在宅福祉サービスの充実が必要である。このため、新ゴールドプランや介護保険制度の導入に向けた基盤の整備にあたっては、次のような点に配慮していくべきである。

ア 地域福祉の推進

 在宅福祉の充実を図るため、部門別の福祉サービスを地域において統合的、効果的に提供していくため、地域福祉体制の整備を図るべきである。

イ 地域福祉の拠点の整備促進

 地域福祉を効果的に推進するため、おおむね小学校区を単位に、学校の空教室や公民館などの既存施設を活用して、地域福祉を推進するための拠点(地域福祉支援センター(仮称))の設置を推進すべきである。

ウ ワンドアシステム

 在宅介護の推進に当たっては、地域における相談窓口を一元化し、その窓口に相談すれば、必要に応じてすべての福祉サービスの選択の道が開かれるようなシステム(ワンドアシステム)を上記の拠点などに作るべきである。


第2節 高齢社会に対応するまちづくり

 高齢社会において大きな割合を占めるようになる高齢者や障害者など移動に配慮を要する人々が、日常生活、就労、社会活動などにいきいきと参加できるような福祉のまちづくりを積極的に進めていくべきである。このことは、福祉の向上ばかりでなく、地域経済の活性化にも寄与するものである。また、高齢社会への対応は一面で地域間競争の側面を持つと考えられる。対応を積極的に進める市町村・地域・商店街などは、他地域に比べて地域や経済の活性化面で優位を占める可能性がある。

1 生活関連施設のバリアフリー化

 県人口の中で大きな割合を占めるようになる高齢者や障害者など移動に配慮が必要な人々が、就労、社会活動への参加や自ら買い物などの日常の活動ができる基盤として、道路、公園や建築物などのバリアフリー化が極めて重要である。

 このため、環境、道路、建築、都市計画、商店街活性化などの各分野の施策と連携を図りながら、生活関連施設のバリアフリー化を促進すべきである。このため、既存県有施設のバリアフリー化を先導的に進めるとともに、市町村や民間施設のバリアフリー化の支援や、バリアフリーに関する顕彰制度などにより、県民福祉条例の基準を踏まえた福祉のまちづくりの推進を図っていくべきである。


2 都市整備関連の各種計画への福祉・高齢化対応の視点の導入

 都市のバリアフリー化は、高齢者、障害者、妊産婦、幼児を抱える夫婦やけがをしている人々などの移動に制約のある人々を町に引き戻す効果がある。

 このような福祉と経済を併せた視点から、中心商店街の活性化のため、都市や商店街の構造等の再編成を支援していくべきである。

 そのため、都市の計画づくりにあたって、都市機能の配置や、都市の各機能間を結ぶ動線・交通計画などの都市整備に関する計画や、商店街活性化計画などの都市の総合的な整備計画にバリアフリーなど福祉の視点を導入していくべきである。

 また、その視点の導入に当たっては、パークアンドライドやショップモビリティ(タウンモビリティ)などのソフト施策との連携を図るよう努めていくべきである。


3 公共施設等の集合立地の推進(公共施設等の集合立地の原則)

 各種の活動の拠点となる公共施設等は、地域ごとになるべく歩いて動ける範囲に集中して立地させるよう努力していくべきである。


4 中心市街地・商店街のバリアフリー化等の推進

 高齢者、障害者や幼い子どもを抱えた親など移動に何らかの配慮を要する人々が自由にショッピングなどを楽しめる商店街をつくることは、高齢者や障害者などが生き生きと生活していく条件を整備することにとどまらず、そのような人々が県や地域の人口の3分の1から4分の1を占めるようになることから、商店街自体の売り上げの増加など商店街の活性化にも資する。このような視点から、商業振興施策と福祉施策の連携を進め、福祉の向上と地域経済の活性化の両立を図るべきである。

 このため、つぎのような取り組みを支援して行くべきである。

ア 段差の解消、ベンチの設置や点字ブロックの整備などのハードの福祉のまちづくりの推進

イ タウンモビリティ(ショップモビリティ)や歩行者天国等のソフト環境の整備など総合的・複合的な対策の促進

ウ 買い物代行・配達サービスなどの取り組みの促進
(参考)タウンモビリティ(ショップモビリティ)について

 タウンモビリティは、高齢者や障害者などが商店街などで買い物をしやすくするため、無料又は低額で電動スクーターや電動車いす、車いすなどを貸し出すしくみである。

(1) 効果

ア 高齢者や障害者などにとって生き生きとした生活
 買い物などで買い回りをしても疲れず、外出の際の行動半径が広がり、外出の意欲も出て、いきいきと生活できるようになる。

イ 商店街にとって商店街活性化

 こういう人々に楽しく買い物をしてもらうことは、商店の売り上げの増加に結びつくと考えられる。重い商品を買ってもある程度は持ち運びが出来ることから、買い物の量も増える傾向があるとされている。また、高齢者などがいきいきと出ることが可能になれば、まちが活性化していくと考えられる。

(2) しくみ(イギリスの例などから)

ア 施設、設備

・ 貸し出しのオフィス・・・商店街の空店舗などを活用している例が多い。

・ 電動スクーターなど・・・1台30万円前後のものを数台置く例が多いが、企業・商店街からの寄付や行政の補助により購入している例が多い。

イ 運営

 運営に必要な費用は、補助や企業の寄付、商店街からの拠出によりまかなっているケースが多い。
 ・ 人・・・・・・・・・・・電動スクーターなどの管理、貸し出しには、職員を雇用しているケースが多い。また、これらの仕事や、付き添いなどにボランティアも積極的にかかわっている。

(3) 普及状況

ア イギリスで1981年にはじめられ、ショップモビリティと呼ばれている。

イ 現在、イギリスでは二百数十箇所の商店街で実施されている。特に最近、道路や店舗のバリアフリー化が進んだこと、商店街活性化の効果が知られるようになったことから、急速に普及している。

ウ 日本では、建設省がタウンモビリティという名称で、実験を行っているが、まだ、継続的に実施されているところはない。



5 交通機関のバリアフリー化の推進

 高齢者、障害者、妊婦や幼い子どもを抱えた親等が、就業、買い物やその他の社会的活動を、障害のない人々と同じように行えるようにすること、_また、人口の3分の1から4分の1を占めるこれらの移動に配慮を要する人々の公共交通機関の利用を促進し、環境にやさしい公共交通システムの維持にも好ましい影響を与えること、_さらに、より多くの人々がまちに出ることにより消費の拡大にも寄与すると考えられることから、交通システムのバリアフリー化を積極的に促進して行くべきである。

 特に本県は民間交通機関に依存していることから、民間公共交通機関の車輌等のバリアフリー化が一層促進されるよう配慮していくべきである。

 


第3節 高齢社会に対応した産業振興政策

 県人口に占める60歳以上人口の割合は、昭和45年の12%から、平成22年(2010年)には34%に増加する(35ページ図参照)。高齢者人口の増大は、高齢者に係わる(特有の)大きな需要を生み出すことから、地域経済の活性化のため、その対応を積極的に進めていくべきである。その対応を、他に先んじて進める地域は、地域間競争において優位を占めるようになっていくと考えられる。

 長寿時代の新しいライフスタイルに対応した関連産業の振興

 福祉の充実によって安心できる福祉社会の実現し老後の生活不安が解消されれば、高齢化の進行を受けて、長い余暇時間と十分な購買力を持つ大きな消費層が出現する。また、高齢者や障害者などが障害のない人々と同じように生活できることは福祉の目標である。さらに、高齢者や障害者等が生き生きと元気に生活できるようになれば、社会の介護負担なども減少すると考えられる。

 このような県、地域経済の活性化と福祉の向上の両面から、本県は、地域の特性を活かして、余暇関連産業やその他のライフスタイルに関連する産業の高齢者や障害者等への対応を積極的に促進していくべきである。

ア 高齢者や障害者に対応した宿泊・観光施設の整備など余暇産業の振興

イ 高齢者や障害者に対応した大学・大学院の整備など生涯学習事業の育成

ウ 高齢者や障害者に対応したスポーツ・健康産業の育成

エ 高齢者や障害者に対応した住宅建設の推進


2 高齢化時代の介護福祉産業の育成

 高齢化時代を迎えて介護サービスの拡充が不可欠となっているが、これに対応する公的介護保険制度や現在中央社会福祉審議会で検討が進められている「社会福祉基礎構造改革」では、サービスの質の向上とサービスコストの低減の両面から、民間企業やNPOなどを含めた多様なサービス供給主体の介護サービスへの参入を促進していく方向にある。

 福祉サービスには、大きな経済波及効果、若者や女性の雇用創出効果、地域間所得移転効果などがあることから、福祉の向上に加えて、本県の地域経済の活性化の視点からも、介護福祉産業の育成を積極的に推進して行くべきである。

ア 民間福祉サービス産業の育成

 福祉サービス産業は、サービス業の特色でもある地域密着型の雇用を生む産業として、若者の地域への定着などに重要な役割を果たしていくと考えられる。

イ 福祉サービスに係るNPOの育成

 NPOは、福祉サービスの供給とそれに係る雇用の拡大に関して、将来的には重要な位置を占めると考えられる。

ウ 福祉施設立地(工場立地に対して)の推進
 福祉施設の立地は、工場の立地と同じような経済効果がある。その推進は、地域間競争の性格を持つと考えられる。


3 高齢化時代の福祉用具・福祉機器産業の育成

 本県の産業は、戦後のアルミ加工産業の発展以後、それに代わる新たな産業の興隆がない。一方、通産省の福祉用具産業懇談会の推計によれば、次の表のように福祉用具・福祉機器に係る産業規模は今後急速に増大していく。

 ついては、本県の新たな中核的産業として、福祉用具・福祉機器関連の産業の育成を図って行くべきである。

福祉機器・福祉用具、介護用品産業分野の市場規模拡大
 
平成7年度
平成17年度
平成22年度
福祉用具産業
8040億円
(出荷ベース)
6兆円
 
福祉用具産業に高齢者用衣食住を加えたもの  
40兆円
90兆円

通産省福祉用具産業懇談会推計(平成8年度)
(1) 福祉機器関連産業の育成

 創業・起業支援の一環として、ベンチャー企業による福祉機器・用具の製造や販売を誘導・支援していくべきである。また、本県には、ロボットをはじめ優れた技術を持つ機械工業などの産業基盤があることから、既存企業の福祉機器・用具の製造や取り扱いを誘導・支援して行くべきである。

(2) 福祉機器・福祉用具の開発・デザイン開発の支援

ア 県内大学等の研究機関との連携の促進

 産学官連携のため、大学や公的試験研究機関の福祉工学やユニバーサルデザインに係る研究などの機能の強化に配慮していくべきである。このために、県内の大学などに福祉工学に関する講座や学科の設置を検討して行くべきである。

イ 県内企業が製造する各種製品へのユニバーサルデザインの導入推進

 テレビのリモコン、靴などのマジックテープ、ウォシュレットなどは元々、障害者・高齢者向けの製品が一般向けとなったものであり、障害のある人にもない人にも使いやすいデザインは、製品の競争力を高めると考えられる。このようなことを踏まえ、県内企業が製造する各種の製品へのユニバーサルデザインの導入を促進すべきである。

ウ 製品改良のための情報提供

 福祉機器の製造に取り組む企業に利用者の声を伝える場を作ることにより製品の改良を促進していくなど、福祉機器関連産業を育成して行くべきである。

(参考資料の(5)  福祉・介護機器用具製品関連県内企業の例示)
4 高齢化時代の商店街活性化

 地域人口の高齢化が進み、高齢者にかかわる消費需要が増大するととともに、高齢化に伴って地域住民の日常活動の地域性も高まると考えられる。

 先に(第2節の4等)述べたように、中心市街地など地域の商店街の活性化を図るには、このように増加する高齢層(消費層)に対応していくことが不可欠であり、そのためには、品揃えなどの商品政策における高齢化対応や、店舗、街路などのバリアフリー化などを積極的に促進して行くべきである。





第4節 高齢社会に対応した雇用政策

 高齢化によって生産年齢人口の割合が低下するとともに、要介護者が増えていくと予想されるが、その一方で、経済のソフト化が進むとともに、高度情報化などの技術的な環境が整備され、高齢者、障害者や介護者も働ける可能性のある多様な就労の形態が可能な環境が整いつつある。

 県は、このような環境変化の方向性を意識し、それを積極的に活かして、高齢社会・福祉社会にふさわしい雇用や就労環境の整備を全国に先駆けて積極的に進めて行くべきである。



1 介護の社会化、保育の社会化の推進と女性の能力の活用

 従来、家庭において行われてきた家族による介護や保育は、経済的には無償の家庭内労働として経済計算に現れなかった。しかし、介護や保育は、介護される本人、介護する家族にとって大きな負担であり、直接介護しない家族の心にも大きな問題を投げかけているだけでなく、決して効率の高いものではない。むしろ、本来、優れた能力を持つ介護者(現状では主として女性)を、より能力を発揮できる就労の場へ引き出すことが重要である。

 このような視点から、介護や保育を社会全体で支える必要がある。それは、見かけ上、経済的なコストの上昇を招くが、それにより、より能力の高い労働者が労働市場に登場することによって、社会経済全体の活力を向上させると考える。

 特に、本県の産業は、経済のグローバル化の中で高付加価値分野やサービス分野への産業構造の転換が必要となっている。そのためには、女性の能力の活用が不可欠であるが、介護や保育の社会化は、その女性の職業能力の発揮に寄与するものである。

 このため、介護や保育にあたる家族が、介護や子育てをしながら、働き続けられるような介護・保育環境の形成を促進すべきである。



2 多様な人々の多様な働き方が可能な就労環境形成

 意欲のある高齢者や障害者などが働ける環境を作ることは、高齢者や障害者などが誇りと生きがいをもって生き生きと生活できるだけでなく、生き生きとした生活を通じて健康が維持され、社会の介護負担を軽減する効果も大きい。このことは、高齢化時代において不足する働き手の確保のためにも重要な意義があり、社会・経済の活力の維持に寄与するものである。また、働き手の確保に関しては、女性の職業能力の発揮への期待も大きい。

 このため、高齢者、障害者や女性などの就労機会の確保を積極的に支援すべきである。

 高齢者については、身体等の老化には個人差が大きいため、高齢者を必ずしも65歳以上として捉えるのではなく、意欲と能力のある高齢者が、生きがいを持って働ける環境の形成を促進していくべきである。

 また、障害に対する根拠のない誤解や偏見を取り除くことは、高齢者や障害者の就労機会の確保に重要な意義を持つことから、障害者や高齢者に対する偏見の除去に一層努めていく必要がある。

(1) 多様な就業形態を可能にする就労システムの形成

 現在の年功序列制度をはじめとする雇用慣行や、それを前提とした年金などの社会的制度等は、核家族化、女性の社会進出、高齢化・長寿化などが進む中で、保育や介護などにより一時的に就業の継続が困難になる人々や定年後の人々の就労を十分想定したものとはなっていない。

 富山県が高齢化・少子化の進行と核家族化の進行に対応していくには、高齢者、障害者や、保育や介護に係わる家族のライフサイクル、生活環境の変化に対応した就業形態の選択を可能にする就労システムの形成を積極的に促進していく必要がある。

ア キャリアコースの多様化等

 子育てや介護に伴う就業の一時的な中断が、キャリアや生涯賃金に大きなマイナスとならないよう、キャリアコースの多様化や専門職の位置づけの向上を促進する必要がある。このことは、子育てなどに関する機会費用を低減させ、少子化対策にもつながると考えられる。

イ 就業形態の多様化

 次のような多様な就業形態(勤務形態)の普及を促進すべきである。

 なお、このような就業形態は、同時に、余暇生活と就業生活の関係の変化を通じて新しい21世紀のライフスタイルを生み出すものである。

参考)都道府県では、高知県及び三重県が高齢者や身体障害者などの在宅勤務を支援する施策に取り組んでいる。また、郵政省の「情報バリアフリーテレワークセンター施設整備事業」により、金沢市が全国で初めて高齢者や障害者のためのテレワークセンターを開設する(平成11年2月予定。小学校の空教室を改修して使用)。また、国や県では、高齢者や障害者に限定しない在宅勤務の実験を郵政省や三重県などが職員を対象に行っている。

ウ 雇用形態の多様化

 派遣労働やパートタイム労働者の処遇面の位置づけの向上を促進すべきである。



(2) 高齢者や障害者の就業の支援

ア 高齢者・障害者に適した就業の場の創出支援

イ 職業能力の開発・訓練
ウ 多様な就業スタイル等の確立

 短時間の労働や自宅での労働など、高齢者に適合した就業スタイルの普及を図るべきである。

エ 就労に係るハード環境の整備

 就労の場のバリアフリー化や通勤環境の整備を図るべきである。




(3) 女性雇用支援−少子高齢社会に対応した男女共同参画社会に向けて−

 少子化の原因として、結婚・出産に係わる退職など職業生活上のキャリア中断による機会損失が大きな重みを占めるようになりつつある。

 また、新興工業経済地域(NIES)諸国の発展などにより、我が国産業の高付加価値化が要請されているが、これに必要な労働力の確保には、専門的な教育を受けた女性が能力を発揮できる環境づくり、あるいは結婚・出産によるキャリアの断絶を解消する施策が必要である。

 また、一方で、例えば、経済のソフト化に伴って、今後、自宅で、設計、翻訳やイラスト制作などの仕事を行う女性が増加していくと考えられるが、このような自宅で仕事をする母親が、仕事のための外出などで、一時的に子どもを預ける必要が生ずることも多い。しかし、従来の保育制度は、必ずしも、これらのニーズに応えられる制度になっていない。

 これらのことから、現状として子育てや介護の負担が女性に重いことを前提として、次の施策などを進めるべきである。

ア 保育の社会化の推進

イ 介護の社会化の推進


3  福祉の充実(福祉には大きな雇用吸収力がある)

 第2章の第1節の1「福祉サービスの経済的波及効果」で述べたように、福祉には、大きな雇用吸収力がある。このため、福祉の充実を進めるべきである。


第5節 地域コミュニティの再構築

 企業等の定年退職後に地域で日常を過ごす高齢者が増加しているが、そのような人々は今後の高齢化と長寿化の進行に伴ってさらに増加していくと考えられる。この結果、生活と就労の場の分離によって戦後一貫して弱体化の進んできた地域共同体が、これらの高齢者たちを核に復活していく可能性が生じている。

 これらのことを受け、高齢者などを重要な核とする地域福祉コミュニティの形成や地域スポーツの振興などを核として、地域コミュニティの再構築を目指していくべきである。

1 地域福祉コミュニティの形成

 定年退職後に地域で日常を過ごす高齢者が、今後地域の福祉活動の中で重要な役割を果たせるように支援していくべきである。

 一方、従来の多世代世帯が高齢世帯と若年世帯に分離し、家庭の介護力や保育・養育力などが低下している。この結果、社会や地域単位で、介護や保育を支えていく必要性が高まっている。

 このようなことから、高齢者などを含めた地域の人々のボランティア活動、NPO活動や地域福祉活動を中心に、保育や介護の社会化を地域でも支える「地域福祉コミュニティ」の形成を支援していくべきである。

 このことは、地域における生涯学習、スポーツ、文化、福祉分野の活性化など、文化的に豊かな地域社会の形成に寄与するとともに、高齢者や障害者などが生き生きと生きがいのある生活ができるようになることによって、結果的に福祉サービスの負担を軽減させることにもつながると考えられる。

ア 地域におけるボランティア活動等の振興

 社会的に有益な活動を行うNPOやボランティア団体は、地域の構成要素・活動主体の多様化をもたらし、それらの活動の連携などを通じて地域の活性化に意義が大きい。このため、それらの活動を支援して行くべきである。

 また、このような地域福祉コミュニティの形成は、それを核とする新たな地域コミュニティの再構築をもたらす可能性がある。

イ 地域福祉コミュニティの拠点の形成

 地域福祉コミュニティの活動の拠点として、旧町村・中学校区、小学校区などの小さな圏域を単位に、既存施設や地区社協・総合地域福祉活動グループ等の組織等を活用した場づくりを促進すべきである。



2 地域の重要な構成主体、県民の自己実現の場としてのNPO等の振興

 NPOやボランティア団体の福祉に関する活動は、今後の福祉サービスの向上に重要な役割を果たすだけでなく、人づくりや自己実現の場として県民の新しいライフスタイルづくりに資するものと考える。

(1) 人づくりや自己実現の場としてのNPO等の支援

 経済的な豊かさや高学歴化などによって、人々の価値観が多様化し、仕事の場だけでは自己実現が達成されないと感じる人々が増加している。また、いわゆる人づくりは、優れた潜在的な能力を持つ人々に活躍の場を与え、経験を積み重ねる機会を提供することによって実現されるものであるとも考えられる。

 NPOやボランティア活動の場は、参加者自らの発意による創造的な活動が必要となる場であり、優れた潜在的な能力を持ちながら、能力を発揮する場のない人々に活躍の機会を与え、それらの人々の自己実現に資する環境を提供し、豊かな人材が輩出される地域を形成する可能性がある。

 また、ボランティア活動やNPO活動は、(長寿化と高学歴化や価値観の多様化などが進むなかで)労働時間の短縮に伴って自由な時間を持ち、新しい価値観と活動範囲を持った高齢者、障害者、女性や若者をはじめとするすべての県民に新しいライフスタイルをもたらす可能性がある。

 これらのことから、今後、積極的にNPOなどの活動を支援していく必要がある。

(2) 地域福祉活動の重要な主体としてのNPOの支援

 福祉サービスの供給主体として、NPOやボランティア団体は、地方公共団体に比較して、より自由度の高い活動が可能であり、福祉に関する先導的・試行的な活動ができると考えられる。

 一方、農村部などでは、民間企業などの福祉サービスへの参入の少ない地域が出る可能性もある。このような地域では、NPOやボランティア団体あるいは地域福祉コミュニティにおける共助の活動などが重要な役割を果たしていくと考えられる。

 このようなことから、福祉に関するNPO、ボランティア団体の活動などを地域の中で重要な役割を果たす主体として、積極的に育成、支援して行くべきである。



3 地域における生涯学習・生涯スポーツ環境の形成

 定年退職などの後、地域で日常を過ごすようになる高齢者が今後増加していくが、そのような高齢者などの価値観の多様化を背景とした新たなニーズに対応する生涯学習、文化、スポーツ活動環境を、高齢者などの生活圏に応じて県レベルから市町村あるいは小中学校区などの大きさの地域レベルまでにおいて整備して行くべきである。それにより、高齢者や障害者が生き生きと元気で充実した生活ができるようにする必要がある。



おわりに

 我が国の福祉は、国民所得に占める福祉関係費用の割合で見れば、北欧諸国のような高福祉国はもとより、イギリス、フランス、ドイツのような中福祉国にもはるかに及ばず、高齢化率が我が国よりも低いアメリカにすら及ばないレベルにある(13p参照。ただし若干の国情の違いはある)。このような中で、進行する高齢化に対応し、県民が安心できる福祉社会を形成していくには、21世紀に向けた広い意味の福祉の充実が不可欠である。

 そして、その福祉の充実や高齢化への対応は、必ずしも本県の地域や経済の活力を削ぐものではないと考える。むしろ、福祉社会への対応は、高齢化の進行を踏まえれば、地域や地域経済の活性化にも効果がある(少なくとも下支えする効果がある)と考えられる。

 一方で、当研究会が主として研究課題とした経済的な側面は、福祉の一つの側面に過ぎない。福祉社会を考える基本は、福祉に関する理解に裏付けられた住民間の支え合いなどの心の側面にあると考える。

 これらの視点をあわせて、県は、新たな人口構成、変化する価値観、労働環境や高度情報化などの技術環境などに対応した広い意味の福祉対策・高齢社会対策を、21世紀に向けて積極的に取っていくべきではないかと考える。それにより、高齢者や障害者を含むすべての富山県民が、元気に生き生きと活躍できる富山県を創って行くべきである。

 そして、国の制度の枠組みのなかにあっても、そのような対策のための独自の工夫の余地はあるのではないかと考える。その具体的な方策については、今後策定される福祉基本計画(仮称)や次期総合計画の中での検討を期待するものとしたい。

参考資料

(1) 参考文献

1 福祉と経済関連
「スウェーデン発 高齢社会と地方分権」斎藤弥生・山井和則(平成元年8月 ミネルヴァ書房)

「医療と福祉の新時代」岡本祐三(平成5年12月 日本評論社)

「福祉は経済を活かす−超高齢社会への展望−」滝上宗次郎(平成7年6月 勁草書房)

「育児支援策充実の意義」前田正子(「LDI report」平成7年11月号 ライフデザイン研究所)

「価値を創る福祉」慶應義塾大学・ライフデザイン研究所(平成8年3月)

「福祉は投資である」岡本祐三ほか(平成8年5月 日本評論社)

「介護の社会化による経済成長」宇野裕(「LDI report」平成8年12月号 ライフデザイン研究所)

「市町村からの緊急提言−介護保険と自治体負担−」高齢者介護制度研究会(平成9年1月 (財)東京市町村自治調査会)

「高齢者福祉の充実がもたらす経済的効果に関する調査研究」茨城県高齢福祉課、未来計画研究所(平成9年3月)

「高齢社会と経済活力に関する調査研究」野村総合研究所(平成9年3月)

「少子化時代の日本経済」大淵寛(平成9年6月 日本放送出版協会)

「医療と福祉の経済システム」西村周三(平成9年6月 筑摩書房)

「75歳現役社会論」和田秀樹(平成9年10月 日本放送出版協会)

「超高齢化社会の経済学」石山嘉英(平成10年1月 日本評論社)

「財政構造改革」小此木潔(平成10年1月 岩波書店)(平成10年1月 日本評論社)

「福祉で町がよみがえる」岡本祐三・鈴木祐司・NHK取材班(平成10年3月 日本評論社 )

「『高齢者福祉の充実がもたらす経済的効果に関する調査研究』の概要」下林宏吉(「地方財政」平成10年5月号)

「介護保険、老年医療の進歩がもたらす経済効果」東海総合研究所(平成10年10月)

2 高齢者等の雇用関連

「高齢期における独立・自営支援に関する調査研究報告書」(財)高年齢者雇用開発協会(平成8年度)

「平成9年版 国民生活白書」経済企画庁編(平成9年11月)

「高齢化社会の労働市場における高齢者の能力活用に関する研究」(「経済分析第155号) 経済企画庁経済研究所編(平成9年12月)

3 住宅改造関連

「高齢者住宅整備による介護費用軽減効果」(平成5年5月 建設省建設政策研究センター)

「高齢者の住まいと交通」秋山哲男ほか(日本評論社)

「在宅ケア対応住宅融資実施による需要効果及び高齢者生計への影響に関する調査委員会報告書」(年金福祉事業団 平成7年11月)

「高齢化社会の経済政策」(第4章 高齢者住宅の費用効果分析)京極高宣(東京大学出版会)

「高齢者のための住宅改善助成制度に関する研究」箕輪裕子、林玉子ほか(日本建築学会計画系論文集 平成9年3月)

4 福祉機器関連

「高齢社会対応型産業の研究」通商産業省生活産業局監修(平成6年7月 (株)通算資料調査会)

「福祉用具の明日を拓く〜新規参入ハンドブック〜」斎藤正男監修(平成7年7月 環境新聞社)

「福祉用具産業政策の基本的方向−福祉用具産業懇談会第2次中間報告−」通商産業省機械情報産業局医療・福祉機器産業室編(平成9年6月 (財)通商産業調査会)

5 その他

「21世紀福祉ビジョン」高齢社会福祉ビジョン懇談会(平成6年3月)

「平成10年版 厚生白書−少子社会を考える−」 厚生省監修(平成10年6月)

「平成10年版 高齢社会白書」総務庁編(平成10年6月)

「平成10年版 ポイント解説 財政と社会保障の諸問題」社会補償制度研究会編(年金研究所)
「社会福祉基礎構造改革の実現に向けて−中央社会福祉審議会社会福祉基礎構造改革分科会中間まとめ・資料集−」厚生省社会援護局企画課監修(平成10年9月)

「都道府県別将来推計人口 平成9年5月推計」国立社会保障・人口問題研究所(平成9年8月)

「福祉情報化入門」岡本民夫ほか編(平成9年11月 有斐閣)

  (2) 検討経過

(3) 研究会設置要綱

21世紀の活力ある福祉社会研究会設置要綱

(設置目的)

第1条 21世紀の富山県における効果的な福祉政策及び地域政策の政策の形成に資するため、高齢化が富山県の社会経済に与える影響を研究する「21世紀の活力ある福祉社会研究会」(以下「研究会」という。)を設置する。

(所掌事務)

第2条 研究会は、次に掲げる事務を所掌する。

(1)高齢化が本県の社会経済に与える影響の研究に関すること。

(2)高齢化が本県の社会経済に与える影響の効果的な活用に関すること。

(3)前2号に掲げるもののほか、研究に関し必要な事項に関すること。

(顧問)

第3条 顧問は、厚生部長の職にある者をもって充て、研究会の所掌事務に対し、必要に応じ指導助言を行う。

(委員)

第4条 委員は、福祉の社会、経済に対する影響の研究に関し意欲と知識のある職員のうちから、厚生部社会福祉課長が顧問の意見を聞いて指名する。

2 委員の任期は1年とする。

(座長)

第5条 研究会に座長を置く。

2 座長は、厚生部社会福祉課長が顧問の意見を聞いて指名する。

3 座長は、研究会を主宰する。

(招集)

第6条 研究会は、必要に応じ座長が招集する。

(庶務)

第7条 研究会の庶務は、厚生部社会福祉課において処理する。

(細則)

第8条 この要綱に定めるもののほか、必要な事項は別に定める。

   附 則

 この要綱は、平成10年2月3日から施行する。

(4) 研究会の構成
21世紀の活力ある福祉社会研究会委員等名簿

顧問

 厚 生 部 長       原  徳 壽 (押 田  博)

委員

 総務部   財政課                 岡 本 達 也

 企画部   計画課                 杉 田 和 樹(4月から)

      (前計画課)               島 田 勘 資(3月まで)

       計画課                 坂 口 麻 美

       情報企画課               中 川 正 次

 生活環境部 女性青少年課(3月まで商工企画課)   山 崎 長 壽

 厚生部   社会福祉課               向 井 文 雄(座長)

       高齢福祉課               鈴 木 義 紀

       国際健康プラザ建設室(3月まで地方課) 白 又 康 宏

 商工労働部 職業安定課               太 田 勝 久

      (前商工企画課)             下 村 直 樹(4月〜9月)

 農林水産部 農業経済課(3月まで女性青少年課)   上 田 順 子

       普及技術課               鷹 西 睦 子

 土木部   企画用地課               水 口 功(4月から)

      (前企画用地課)             成 瀬 龍 也(3月まで)

 出納事務局会計課(3月まで統計課)         大 木 信 作

事務局

 厚生部社会福祉課(福祉のまちづくり担当(10年3月まで)、福祉の人・まちづくり係(10年4月から))

 

 

(5) 福祉・介護機器用具製品関連県内企業(例示)

(1) 県内の福祉関連企業(すべてを網羅していない)

タケオカ自動車工芸 富山市 電動車椅子

大澤工業      婦中町 階段昇降機、リフト

でんそく      富山市 家庭用エレベーター

ウィル       小杉町 補装具等

三協アルミ、YKKなど   段差のないサッシ、障害者に配慮した水回り製品(台所のシンク等)

オークス          福祉機器の販売

オフィスオオイ   富山市 住宅のバリアフリー化

オダケホーム        バリアフリー住宅

オスカーホーム       バリアフリー住宅

クスリのホクリク      介護用品販売

イナバ           介護用品販売

(2) 県ライフサポート技術研究会会員企業

 県ライフサポート技術研究会は、平成5年頃に工技センターを事務局として設置された勉強会で、現在は解散して存在しない。

和泉電気富山事業所     婦中町

不二越           富山市

三協アルミ         高岡市

スギノマシン        魚津市

セト電子工業        富山市

タカギセイコー       高岡市

タケオカ自動車工芸     富山市

でんそく          富山市

日平トヤマエンジニアリング 砺波市

富士薬品工業        高岡市

マルマス機械        上市町

リッチェル         富山市

ロゼフテクノロジー     福野町

(3) 富山ウェルフェアテクノハウス研究委員会委員の民間所属企業

(有)富山県義肢製作所

(株)森田製作所

(株)つくし工房

北陸電力(株) 富山支店

日本ゼオン(株) 高岡工場

(株)マンテン 高岡営業所

(株)開進堂

立山アルミニウム工業(株)

(株)北陸菱和エンジニアリング

菱越電機(株)

(株)ピコイ 富山支店

(株)トミキライフケア

(株)不二越

(株)スギノマシン

大同北酸(株)

アイホン(株)

立山科学工業(株)

泉産業

(株)土屋ホーム 富山支店

塩谷建設(株)

(株)青葉建設

折本工務店

ナベタ建築設計事務所

新建築設計事務所

ライフデザイン総合研究所
(4) 富山県補装具協会会員(9年度)

(有)富山県義肢製作所

(株)ワタ機械店

(株)つくり工房

(株)スズキ自販富山

めがねのシオタニ

(株)カジヤマプロテーゼ

(株)ウォーカー北陸

(有)さかえ補聴器

(株)日本義眼研究所

(有)リーフレットライフ

理研産業(株)

(株)ウィル

小野医療器(株)

日本海医科機械(株)

(株)富山視覚センター ウスイ

(株)タカバメガネ

ウィズヤマイチ

富木医療器(株)富山支店

シオタニ時計店

北陸補聴器(株)

オークスライフケア(株)

(株)越屋富山営業所

津田医療器械店

(株)ハイメック
ニック(株)金沢営業所

 

(6) 北経研報告書 ・・・・・・・・・略