労 働 協 約 と は

■労働協約とは

 労働協約とは、労使が団体交渉によって取り決めた労働条件やその他の事項を書面に作成し、両当事者が署名又は記名押印したものをいう。(労組法第14条)

■労働協約の内容

 労働協約の内容は、労働関係法などの法令や公序良俗に反しない限り、労使が自由に取り決めることができる。
 一般的には、@賃金、労働時間、休日、休暇などの労働条件、A昇進、解雇などの人事の基準、B安全衛生、災害補償、福利厚生など、C組合活動、ショップ制、団体交渉などがある。

■労働協約の効力

●平和義務
  労働協約の有効期間中に、その協約に定められた事項の変更を要求して、争議行為を行うことは許されない。

●規範的効力
  労働協約で定められた労働条件やその他労働者の待遇に関する基準に違反する労働契約や就業規則は、違反する事項は無効となり、労働協約が優先する。(労基法第92条、労組法第16条)

●債務的効力
  労働協約のうち団体交渉のルールなど使用者と労働組合との関係を規律した債務的部分(ユニオン・ショップ約款(定められた一つ一つの条項)、組合活動条項、唯一交渉約款、争議予告条項、平和条項)については、一般の契約と同様に当事者間に債権債務の関係が発生する。労使間の約束事を定めた部分)がこれにあたる。

 

■労働協約の期間

 労働協約の有効期間の定めは3年をこえることはできず、3年をこえる定めをしたものについても3年とみなされる。ただし、有効期間が定めにより更新された場合は、その都度締結されたものとみなされる。また、期間の定めのないものを解約する場合は、少なくとも90日前に文書による解約の予告が必要である。(労組法第15条)

■労働協約の拡張適用

 労働協約の拡張適用として、一つの工場や事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上が、一つの労働協約の適用を受けるときは、残りの同種の労働者にもその協約が適用される。(労組法第17条)
 また、一つの地域の同種の労働者の大部分が一つの労働協約の適用を受けている場合には、当事者の申立て等によって、労働大臣又は知事は、労働委員会の議決を経て、その地域の他の同種の労働者及び使用者にもその協約の適用を受けることを決定できる。(労組法第18条)

■労働協約成立のための3つの要件

労働協約成立のためには、@当事者、A内容、B形式の3つの要件は必ず備えていなければならない。

@当事者とは

労働組合と使用者(その団体)との間で結ばれた約束であること。

 A内容とは

  労働条件その他労使関係に関することを内容とするものであること

*どのように規定するかは当事者の自由である。労使が当面必要と思われる事項を協定すればよい。

B形式とは

  書面に作成し、両当事者が書名又は記名押印したものであること

*労組法第14条:労働協約の効力の発生

以上、3つのうちどれを欠いても労働協約の効力をもちえない。3つの要件を備えておれば、名称(協定、覚書等)は何であっても、労働協約の効力をもつことになる。

 

■締結の留意事項

@    労働協約の意義をよく理解すること

A    労使の最大の関心事から規定化すること

*実態にそぐわないものは、十分検討して実情に沿うようなものにする。

B    互譲の精神を忘れないこと

C    規定は明確にすること

 

■規範的効力と債務的効力

@    規範的部分とは

一般に、賃金や労働時間その他労働者の待遇についての基準を定めて部分をいう。

A    債務的部分とは

労働協約の規範的部分以外の部分をいい、労働組合と使用者との間に権利義務を設定した部分

*これら債務部分についてもその有効有効期間中は誠実に順守しなければならない。

 

■その他

@    労働者個人は労働協約の当事者にはなれない。労働協約は労働組合という団体が使用者と結ぶものである。

A    単一の労働組合の支部・分会が独立して、労働協約を結ぶ資格があるか。

一支部・分科会が独自の組合規約を有し、組合活動も独自性をもっているときは、独立の協約締結能力がある、と解される。労働組合の単なる職場組織などは独立性が認められない。




戻る