「空白のララバイ」電子書籍版の解説

空白のララバイ 　本編「空白のララバイ」(The Blank Lullaby) は石川県の地方紙《北國新聞》が発行する地域雑誌《月刊北國アクタス》の1991年１月号から12月号まで木村仁良名義で連載された中編小説です。一回につき、400字詰め原稿用紙に17枚という長さの制限があったので、雑誌掲載時には、かなり削りました。もちろん、連載小説らしく、最後に「ヒキ」を持ってくるように、構成を考えました。

　著者が居を東京から金沢に移したのは1989年12月のことで、その約１年後に《北國アクタス》の編集者から連載小説の依頼がありました。制約は舞台の大部分を金沢市か石川県に設定してくれというものでした。

　著者は《ミステリマガジン》1990年２月号からジェイスン・ウッド名義（“木村仁良訳”）でニューヨークの私立探偵ジョー・ヴェニスものを書き始めていて、ヴェニスものとは異なるシリーズにしようと考えました。もちろん、舞台はニューヨークではなく、石川県の金沢市。主人公はヴェニスのような個人経営の探偵ではなく、探偵事務所に勤める雇われ探偵（本来の“オペラティヴ”、縮めて“オプ”）にしよう。主人公の名前は本当に夢の中で出てきたものです。

　金沢の雰囲気を出すために、いろいろと取材もしました。金沢西警察署の（“取調室”ではなく）“調べ室”を見せてもらったり、レストランへ行ったり、名物和菓子を食べたり、金沢市のガイドブックを読んだりしました。

　時代設定は1990年です。この25年のあいだに、新しい駅舎はできるし、北陸新幹線は通るし、観光客は多くなるし、いくつかのレストランは閉店するし、金沢大学は移転するし、金沢はずいぶん変わりました。電子書籍版を刊行するに当たり、編集面では、句読点を変えたり、明らかな間違いを訂正したりしたぐらいで、ほとんど変えていません。1990年代の金沢を懐かしく思いながら、電子書籍版を編集しました。（著者）

(c) 1991, 2017 by Jiro Kimura
http://www.amazon.co.jp/dp/B072JRZ8Z6
価格は500円です。
（２０１７年６月５日）


日本版ホームページへ

国際版ホームページへ